第443話 ミクの不調2

 古淵は話を続けた。


『しかたなく、戦場を変えようと言う事になって、フライング・トラクターを浅瀬に不時着させたのです。それにしても、行方不明だったファースト・エラさんがそちらにいたとは驚きでしたね』

「ファースト・エラの動向は掴んでいなかったのか?」

『ええ。ただ、ファーストさんだけは、中の人も粛正対象から外していたので無理に探す気もなかったようです。まあ、あの場で彼女が攻撃してくれたおかげでフライング・トラクターが不時着するよう仕掛けをしておいた事を、矢納さんに疑われなくて済みましたけどね』

「じゃあ、ファースト・エラの攻撃は当たっていなかったのか?」

『ええ。あのタイミングで、僕が遠隔操作に切り替えたのです。矢納さんは制御不能になったと思っていたようですが……煙を吹いていましたが、あれは発煙筒ですよ』


 映像に目を向けると、ミクは《アクラ》の甲板上にアクロを召還していた。


 だが、アクロの動きがぎこちない。


 エラを殴りつけようしているが、パンチが当たらない。


「なんのために、こんな事をする?」

『それは僕にも分かりません。ただ、中の人はあの女の子の能力に興味を示したようです。カルカ戦での敗北は、あの女の子が原因と思っているようですね』

「とにかく、こんな事はやめさせる」

『それなら、僕との戦いを再開する事になりますが』

「聞いてくれ。ミクは病気なんだ」

『え? 病気』 

「こちらの戦力が落ちたこと知られたくなくて黙っていたが、ミクは不調なんだ。エラを倒せたとしても、このままでは式神の制御ができなくなって、下へ落ちてしまう」

『それは困りましたね。中の人も死なせたくはないようです。ただ、ここからエラさんを止める事はできません。そういう事なら急いで《アクラ》へ行きましょう』


 僕と古淵が《アクラ》へ向かった時、戦況に変化があった。

 

 キラが新たに分身体を作って、《海龍》から《アクラ》に送り込んだのだ。


 逃げ回っているエラに背後からキラが襲いかかり、羽交い締めにした。


 動きを止めたエラをアクロが殴りつける。


 勝負はついた。


 しかし、オボロの上にいたミクは、そのまま目を閉じて意識を失ったようだ。


 直後にオボロが消失。


 落下するミクを、僕は間一髪で受け止めた。

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