第411話 空飛ぶ円盤?

 予定通り十時には、六機のジェットドローンすべてが《アクラ》を戦闘行動半径の内側に捕らえた。


 これに対して《アクラ》からは、なんの反応もなし。《アクラ》は探知される事を警戒してレーダーを止めているが、こっちのドローン部隊はレーダーを使いまくっている。


 こっちのレーダー波を逆探知していないはずがない。


 それなのに、発令所のメインモニターに表示されているドローンから送られてきたレーダー画像には《アクロ》から飛び立つ飛行体は現れない。


 向こうも様子を見ようという意図か?


 ならば……


 左を向くと、Pちゃんがシートに腰掛け、頭のアンテナをピコピコと動かしている。


 今、すべてのドローンは彼女が動かしているのだ。


「Pちゃん。菊花一号から六号の中で、損傷がもっとも大きいのはどれ?」

「ご主人様。しばしお待ちを……」


 Pちゃんの目で光が点滅する。


「六号機の損傷がもっとも大きいです。正直、なんとか飛べる状態で、今回の作戦が終わったら廃棄するしかないでしょう」


 六号機の記録を見ると、シーバ城でカルル・エステスと戦った時から使っている機体だ。


 その後、砂漠で矢納課長と戦った時も生き残っている。


 歴戦の勇者だな。


 できれば記念に取っておきたいところだが……最後の任務についてもらおう。 


「六号機だけを発進させてくれ。他の機体は待機」

「了解しました」


 一機だけ先行させて、敵の出方を見よう。


 敵が何もして来なければ《アクラ》の状況を偵察してくればいい。


 シャ! 

 

 背後で扉の開く音。


「プリンをお持ちしました」


 ミーチャの声だな。十時のおやつを持ってきてくれたのか。


「ワーイ! プリン! プリン!」


 ミクが席を立って後ろへ向かう。


 何気なく、その動きを目で追って振り向いた。


 ……!?


「プリン! プリン!」


 プリンを持って自席に引き返してくるミクが僕のそばを通った時、むんずとミクの襟首を掴む。


「なあに、お兄ちゃん? お兄ちゃんのプリンもちゃんとあるよ」

「ミク。怒らないから言ってごらん」

「お兄ちゃん。その顔は怒っている」

「ミーチャは、なぜあんな格好をしているのかな?」


 あんな格好……黒いワンピースの上にフリルのいっぱいついた白いエプロン姿。ようするに、メイド服をミーチャは着ていたのだ。


「あたしが着せたんじゃないよ。ミーチャが自分から着たんだよ」


 では、なぜ僕から視線をそらす。


 とりあえず、ミクの襟首を手放してから、ミーチャの方を向いた。


「ミーチャ。ミクの言っている事は本当か?」


 ミーチャは困ったような顔をした。


「ええっと……カイトさんに恩返ししたいと思って……ミクさんに聞いたら『メイド服を着たら喜ぶ』と……」


 忖度させたのか。ミク、三時のオヤツは抜きだな。


「ご主人様」


 Pちゃんの声に振り向く。


「《アクラ》から飛行体が飛び出しました」


 やっと出て来たか。


「飛行物体の数は一。速度は現在時速二百キロ。なおも加速中です」


 レーダー画面を見ると、飛行物体はまっすぐ菊花六号を目指している。


「Pちゃん。映像を出して」

「はい。ご主人様」


 メインモニターに菊花六号から送られてきた映像が現れた。


 これは!


空飛ぶ円盤フライングソーサー?」

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