第195話 火炎vs雷

「どいつも、こいつも、私をバカにしおって」


 しめた! エラの手が離れた。今のうちに懐の拳銃を……


 ジャリ!


 え? 両腕とも手首の辺りを鎖で繋がれていた。


 その鎖は、地面に撃ちこまれたペグのようなものに繋がれている。


 今まで、エラに押さえつけられているだけかと思ったら、こんな物まで……


 エラはこっちをギロっと睨んだ。


「私が手を離せば、逃げられるとでも思ったのか? いや、違うな。手の届くところに武器を隠しているな」


 ギク!


 エラは僕の防弾服のジッパーを下げた。


「こんな玩具を持っていたか」


 拳銃を取り上げられる。


「まだ隠していないか」


 ジッパーを全部降ろされて、アンダーシャツをナイフで切り裂かれた。


「もう武器はないか?」

「ない」

「本当かな?」


 エラは僕の胸に掌を当てた。


「嘘だったら、最大級の電撃をお見舞いするぞ。死なない程度にな」

「ないものはない」

「そうか」


 エラはニヤリと笑みを浮かべると、僕のズボンのベルトに手をかけた。


「よせ! そんなところに武器はない」

「いや、武器を探しているのではない」

「では何を?」

「今から、君をレイプする」


 は? なに言ってるんだ? この人……


「あの……レイプって?」

「知らないのか? 初心うぶな奴だな。嫌がる異性に無理やり性行を強いる事だ」

「いや……それは知っているけど……」

「なら、話は早い」

「ちょっ……それ……おかしくない。レイプって男が女にするものだろう」

「男女差別はよくないな。女だって、男をレイプしたくなるときはあるさ」

「だいだいなんで、いきなりそんな事を……」

「君に一目ぼれしたからだ」

「は?」

「私は君に、恋をしてしまったのだ」

「そ……そうなの……気持ちは嬉しくない……いや、嬉しいけど……僕には好きな人が……」

「だが、私は好きになった男に媚びたりはしない。力ずくでものにする。私に優しくしてもらえるなどと、期待はしない方がいい」


「やめろぉぉ!」


 あ! 足は縛られてなかった。


 チャンス!


「うわ!」


 エラを蹴り飛ばすことに成功。なんとかR18指定は回避した。


「貴様!」


 電撃が来る! と思って歯を食いしばったが、何も来ない。


「おまえは!?」


 エラの声? 誰に向かって言っているのだ?


「久しぶりだな。エラ・アレンスキー」


 この声は? ダモンさん。


「久しぶりだと? 私はお前など……いや、そうか。ナンバー8を倒した炎の魔神カ・ル・ダモンだな」


 ナンバー8? 何者だ?


「いかにも……」

「言っておくが、以前のようにはいかないぞ。あの時は、回復薬がなかったために魔力切れでやられたが……」

「あの時と今と、どう違うというのだ? 帝国軍も回復薬を開発したようだが、おまえの持ってきた薬のほとんどは我々の手中にあるぞ」

「う」

「肌身離さず持っていた薬も、そろそろ尽きるころではないのか? ミールの分身相手に、かなり無駄撃ちしたからな」

「お前一人葬るぐらいならあるさ」


 エラの掌が輝く。


 プラズマボールが飛び出す。


 だが、ダモンさんそれをあっさり躱すと、ファイヤーボールを撃ち返してきた。


「その若者は返してもらうぞ。私の命に代えても」

「そうはいくか! この男は私がもらう」


 プラズマボールとファイヤーボールの応酬となった。

 

 空中で光る玉同士がぶつかり爆発する。


 互いに決め手を欠いていた。


 途中、エラがポケットからガラス瓶を出して、薬を取り出す。


 瓶の中の残りは……


「ダモンさん! 奴の薬は、後四つだ!」

「心得た」


 さらに大量のファイヤーボールが飛んでくる。一気に攻めて、エラの魔力切れを狙う気だ。


「く!」


 エラもプラズマの壁を作って防御するが、顔に段々余裕がなくなってきている。


 不意にエラが地面にしゃがみ込んだ。


 何をする気だ? 


「ダモンさん! 伏せて!」


 エラが手にしているのは、さっき僕から奪った拳銃。


 銃声の直後、ファイヤーボール攻撃が止んだ。


 ダモンさんが横腹から血を流している。


「おのれ!」

「どうした? 魔法使い同士の戦いだから、魔力だけで戦うとでも思ったか? 戦いなんてな、勝てばいいのだよ。バーカ! バーカ!」


 エラはとどめを刺そうと、ダモンさんに銃を向ける。


 銃声が轟く。


 だが、一瞬早くダモンさんの前に立ちふさがり、銃撃を受け止めた者がいた。


 エラは、その者に向かって叫ぶ。


「何のつもりだ! キラ・ガルキナ!」

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