第122話 「恥を知れ! 卑怯者!」

 現場が見えてきた。


 まだ功夫カンフー少女と馬賊の戦いは続いている。


「Pちゃん。女の子から離れている奴から狙ってくれ」


 ショットガンでは、女の子も巻き込む恐れがあるからだ。


「了解です」


 Pちゃんはサイドカーから、AA12コンバットショットガンを構えた。


 射程距離に入ると同時に銃撃。


 二人の馬賊が、血まみれになって馬ごと倒れる。


 ううむ……馬は助けてやりたいが、ショットガンだと、どうしても巻き込んでしまうな。


「あたしも」


 ミールが、拳銃を構えた。


「おい! ミール」


 戦闘モードではない分身体では、拳銃の反動に耐えられないのでは……


「大丈夫です。見ていて下さい」


 抜刀して、功夫少女に切りかかろうとした馬賊が、突然目を押さえて落馬した。


 上手い! レーザーサイトで目を狙ったな。


「戦いは、頭でするのですよ」


 そう言って、ミールは次の馬賊に狙いを定める。


 十人ほどの馬賊が、僕らに気が付いて向かってくる。


 僕もフルスロットルで、奴らに向かっていった。


 馬賊が銃撃してきた。


 しかし、僕もPちゃんも防弾服で身を固めている。


 フリントロック銃ぐらいなんともない。


 ミールは分身体なので、憑代に当たらなければ大丈夫。


 バイクも軍用。この程度の銃撃は何ともない。


 逆に馬賊たちは、Pちゃんの銃撃で次々と血しぶきをまき散らして倒れていく。

 

 すれ違う時、僕はスロットルを手放して拳銃を抜いた。


 Pちゃんが撃ち漏らした三騎の馬賊に銃撃。


 すれ違った後、バックミラーで見ていると、三人の馬賊は次々と馬から落ちていった。


 自由になった馬は、そのままどこかへ逃げていく。


 僕は再びバイクを走らせ、功夫少女の方へ向かった。


 僕らに気が付いた馬賊の頭目らしき男が、僕らに向かって何かを叫ぶ。


 翻訳ディバイスが翻訳するのに少し時間がかかった。


 帝国語のようだが、少し訛りがあるらしい。


「なんだてめえらは!? 関係ない奴は、引っ込んでろ!!」


 翻訳するまでもなかったか。


 なんとなく、こんな事を言ってるような気がしていた。


 僕はバイクから降りて、ショットガンを構えながら言いかえす。


「大の男が、寄ってたかって女の子を苛めているところを見て、引っ込んでいるわけにはいかないな」

「うるせぇ! かっこつけやがって! おまえら! こいつらを挽肉ミンチにしてやれ!」


 頭目の号令と同時に、十騎の馬賊が僕らを挽肉ミンチにすべく刀を手にして向かってくる。


 そして……


 AA12の一連射で、馬賊たちは挽肉ミンチと化した。


 頭目の顔が蒼白になる。


 それでも、まだ懲りないようだ。


「怯むな! 今ので、弾は撃ち尽くしたはずだ」


 残念。おまえらの銃と違って、これはマガジンを交換するだけでいいんだな。


 次にかかってきた馬賊の群れも、瞬く間に挽肉ミンチと化した。


「こ……この卑怯者! 男らしく刀で勝負しろ!」


 卑怯な事をする奴ほど、自分が不利になる度に『卑怯』という言葉を使いたがるらしい。


 もちろん、そんな戯言に付き合う義理は無い。


 男らしく、刀を抜いてかかってくる馬賊たちを、僕は男らしく銃で迎え撃った。


「やい! こっちを見ろ」


 声は、後ろからだった。


 振り向くと、馬賊の一人がミールを捕まえて刀を突き付けている。


「このガキの命が惜しかったら、銃を捨てろ」


 ううむ……どうせ分身なのだから、見捨ててもいいのだが、ここで見捨てるのもなんか気分が悪い。


「カイトさん! 構いません。あたしごと撃って下さい。ここまでくれば、もう道案内はいりません」

「黙ってろ! くそガキ!」

「恥を知れ! この卑怯者!」


 突然そう叫んだのは、僕ではなかった。

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