8
それから少しして、伽藍堂の空間の真ん中あたりのところで、なんの前触れもなく突然、モノはその場にしゃがみ込んだ。なんだかこちら側の世界に足を踏み入れてから、ずっと『頭の中に靄(もや)』がかかったような感覚があった。思考がはっきりとしない。うまく世界を認識できない。モノはなんだか自分の心と体が離れ離れになってしまったような気がした。まるで自分の影を失ってしまったみたいに、うまく自分のバランスを保つことができないのだ。
しばらく休むと、気分が回復した。その場に立ち上がったモノは反省する。目的の場所までたどり着いたことで少し気が緩んでいたのかもしれない。それとも、もしかしたら自分の存在する世界が変わったことにまだ僕の心と体が慣れていないのかもしれない。僕の心と体は世界が変わることを拒絶しているのかもしれない、とそんなことをモノは考えた。モノは神殿の奥に向かって歩き始めた。この神殿の中にいるはずの彼女の姿は、まだ見えない。
しばらく歩くと、モノは伽藍堂の空間の終わりの場所までたどり着いた。そこには再び上に上がるための立派な登り階段があった。モノはその階段を上がって高台の上に移動した。するとその高台の先の壁には一つの小さな扉があった。その扉の前までモノはゆっくりと歩いて移動した。今度の扉は開いてはいなかった。しっかりと閉じていた。でも、この大きさの扉なら、自分の力でも開けられるとモノは思った。そして実際に試してみると、すごく大変ではあったけど、予想通りに扉は開いた。モノは扉の奥に移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます