第12話
「魔王様は魔王様ですっ!代わりなどおりませんっ!!・・・って、え?キャッティーニャ王国の女王!?前魔王様の最初のお子様っ!?」
タイチャンは言い切ってから、今更ながらに女王様がいることに気づいたようだ。
本当にタイチャンってばホンニャンのことしか見ていないんだから。
女王様も同じ元魔王様の娘なのに。
「そうだけど。」
憮然とした表情で女王様はタイチャンと向き合う。
「こ、これは失礼いたしましたっ!貴女様を侮辱したいわけではございません。どうか、どうかお許しくださいませっ!!」
突然タイチャンがその場に跪いた。
そうして、女王様に向かって平謝りをしてる。
どうやら、タイチャンにとって元魔王の娘である女王様も敬うべき人物として認識されているようだ。
というか、元魔王様の血に逆らえないと言った方がいいのかもしれない。
「ふんっ。可愛い可愛いホンニャンの伴侶というのは貴方かしら?」
「へっ!?」
「えっ・・・。」
「なっ・・・。な、ななななななにを・・・っ。そ、そのように恐れ多いことっ・・・。」
突然の女王様の伴侶発言にタイチャンはだらだらと冷や汗を流し名から、その場に蹲る。
その顔は真っ青である。
どうやら、タイチャンはホンニャンの伴侶になる気はないらしい。むしろ恐れ多いと思っているようだ。
「違うのか?じゃあ、なぜホンニャンに近づいたっ!!」
カッと目を大きく見開いて女王様がタイチャンに問う。
いや、なぜホンニャンに近づいたって言われても、タイチャンは魔王様の側近だからなぁ。
まあ、ホンニャンの教育係も兼ねてるし、どうしてもホンニャンの側にいる必要があるよなぁ。女王様はホンニャンの教育係兼側近がタイチャンだって知らなかったんだっけ?
疑問に思い首を傾げる。
女王様に問い詰められているタイチャンは今にも意識を失ってしまうんじゃないかというほど顔を青くして、頭を地面に擦り付けている。
あまりの恐怖で震えているのか身体も小刻みに揺れ始めている。
なんだか、タイチャンが可哀想に思えてきた。
「あ、あの・・・。女王様・・・タイチャンは・・・。」
「マユさんには聞いておりません。私はそこの魔族に聞いているのです。このくらいで青くなって震えているような魔族に私の可愛いホンニャンは渡せませんっ!そのような魔族がいるところに、可愛いホンニャンを預けておくのはもう許せません。マユさんが魔王城にとどまっているからと今まで黙認してまいりましたが、可愛い可愛いホンニャンに懸想をするような輩がいるところにホンニャンは置いておけません。ホンニャンは私と一緒にキャッティーニャ王国の王宮で暮らすのですっ!!」
おおお・・・。話がもっとややこしくなってしまった。
ってか、女王様。人の話も聞いて欲しい。
違うんだよ。タイチャンはホンニャンの彼氏とかじゃなくて、教育係兼側近・・・。って、教育係兼側近が、女王様に意見できないのも問題か。
きっと女王様は側近ならなおのことしっかりしろと怒りそうだ。
これは、迂闊にしゃべることができないな。
『違うのー。タイチャンはホンニャンの伴侶じゃないのー。』
『伴侶ってなにー?』
『えー。ボーニャ知らないのー。伴侶ってのは番のことなのー。』
『・・・それって美味しいのぉ?』
『食べれないのー。でも、一緒にいるとポカポカするんだってー。』
『・・・ポカポカ?』
『じゃあ、違うのー。ホンニャンはタイチャンのことポカポカ殴ったりしないのー。』
『えー。でも、タイチャンはホンニャンをポカポカ殴ってることあるよー。』
『じゃあ、ホンニャンはタイチャンの伴侶なのー?』
今まで黙っていたマーニャたちが一斉に騒ぎ出した。
ってか、どうして途中からタイチャンがホンニャンを殴るって話になってるんだ?そして、殴っていると伴侶ってどこから来たんだ?そんなの伴侶でもなんでもないでしょ。
だって、相手を殴るんだよ・・・。
ってか、タイチャンってばホンニャンを殴ってたの・・・。知らなかったんだけど、私。
タイチャンが可愛いホンニャンに暴力をふるってたということをマーニャたちの会話から知り、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「タイチャン。なに、可愛いホンニャンに暴力を振るっているのかな?」
「ふふふっ。私の可愛いホンニャンに暴力を振るうだなんて言語道断。生かしてはおけぬわっ!!」
臨戦態勢になる女王様と私。
可愛いホンニャンに暴力を振るったとあってはいくらタイチャンだとしても生かしてはおけない。
「ちょっ・・・。猫様たち勝手なことを言わないで・・・。お、お二人とも誤解・・・誤解なんですぅ・・・。」
タイチャンは勢いよく起き上がると、私たちから距離を取ろうと後ずさりする。
起き上がっても立ち上がれずに後ずさりをするところを見ると腰でも抜けたのだろうか。
「誤解・・・?可愛いホンニャンを殴っておいてなにが、誤解?」
「そうよ。マーニャたちが嘘をつくわけないでしょ?何を言っているの?」
タイチャンを睨みつける女王様と私。
そんな私たちから距離を取ろうとするタイチャン。
だが、私たちの怒りの前ではタイチャンの抵抗は無力だ。
「ま・・・待って・・・。待って・・・ください。二人とも・・・。違う・・・違うんです・・・。お願いだから話を聞いて・・・。」
タイチャンが何か言っているけど待つ気は、ない。
「問答無用っ!!」
「覚悟っ!!」
かくして、タイチャンは私たち二人を前に気を失ったのであった。
『でもさー。なんでタイチャンがホンニャンをポカポカ殴ってただけでマユたちあんなに怒っているのかなー。』
『なんでだろうねー。』
『ホンニャンが咽てたときに背中ポカポカ軽く叩いてただけなのにねー。』
『あれって介抱だよねー?』
『タイチャン、ホンニャンが少しでも苦しさから早く解放されるようにしてただけだよねー。』
『そうだよねー。』
『なんでマユたち怒ってるのかなー?』
『なんでだろうねー。』
『ま、いっか。』
『そうだねー。ミルク貰えるんだったらなんでもいいのー。』
『えー。あたしは煮干しがいいのー。』
『あたしは鳥のささみがいいのー。』
私たちの後ろでマーニャたちが何か言っていたような気がするが、タイチャンがホンニャンに暴力を振るったということを知って怒りに震えていた私たちの耳には一切届かなかった。
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