第11話

プーちゃんの転移魔法のお陰でエルフの集落までは一瞬で着きました。


転移してきたエルフの集落の様子は………あれ?


おっかしいなぁ………。


目の前の光景が信じられなくて目をこする。


しかし、目の前の光景は変わることがない。


「えっとぉ、悪いエルフに集落が襲われてるって聞いたんだけど………。」


「奇遇ね、マユ。私も確かにそう聞いた気がするわ。」


思わずマリアに確認すれば、マリアも首を傾げながら頷いた。


『ふむ。エーちゃんの勘違いだったのかもしれんな。』


『そうじゃのぉ。きっとエーちゃんの勘違いじゃ。では、帰るのじゃ。』


『うむ。では、帰ろう。』


「ちょっ、ちょっと待って!!」


エルフの集落の様子は落ちついていた。


まるで悪いエルフの襲撃なんてなかったかのように、エルフたちは集落の中を自由に行き来しているように見える。


またエルフ同士で会話をしながら、ほがらかに笑いあっている姿も見えた。


集落も襲撃をうけたにしては綺麗すぎるし。


なんの問題も、ないように見えた。


『なんだマユ?なんの問題もないのだから、さっさと帰ろうではないか。』


プーちゃんもタマちゃんも早くここから去りたいようだ。


なんかあるのだろうか?と、逆に不安になってしまう。


「でも、帰るならエルフの人たちに理由を聞いてみてからでもいいんじゃないかな?」


エーちゃんがあんなにも困っていたのだ。せっかくエルフの集落に来たのだからエルフの人たちに話を聞いてみるべきだろう。


そう思ってプーちゃんに提案したのだが………。


『帰るのだ。さっさと帰るのだ。今すぐに帰るのだ。』


『そうじゃ!そうじゃ!帰るのじゃ!さっさと帰るのじゃ!!』


なぜか、プーちゃんとタマちゃんに拒否されました。


しかもすごい剣幕で。


もう何かこの集落に長居したくない理由があるようにしか思えない。


「………この集落になにかあるの?」


思わずじとーーっとした視線でプーちゃんとタマちゃんを見つめてしまう。


すると、プーちゃんとタマちゃんのこめかみからツーーッと冷や汗が滴り落ちた。


これはもう、この集落になにかがあると言っているようなものだ。


「プーちゃん?タマちゃん?」


『な、なななななんでもないのだ。問題ないのだ。帰るのだ。』


『そ、そそそそそうなのじゃ。なんでもないのじゃ。問題なんてこれっぽっちもないのじゃ。ささ、帰るのじゃ。』


あきらかに焦り始めるプーちゃんとタマちゃん。


なんだかすっごく怪しい。


「あれれぇ?あーーーーーーっ!!!しーちゃまに、せーちゃまじゃないのぉ!!会いたかったわぁーーー!!」


プーちゃんとタマちゃんのことを怪しんでいたら急に甲高い声が聞こえてきた。


『げっ、ビーちゃん・・・。』


『わ、妾は帰るのじゃ。』


真っ黒な肌をしたエルフが来たとたん、プーちゃんとタマちゃんが焦り始めた。


タマちゃんに至っては自分の空間に逃げ隠れてしまうほどだ。


プーちゃんにビーちゃんと呼ばれた真っ黒い肌をしたエルフはにこにこと笑いながらプーちゃんを見つめていた。


真っ黒は肌に真っ黒なストレートのショートヘアー。見た目が整っているので男性だか女性だか性別不明な見た目をしている。


ただ、胸はなさそうだ。


スレンダーな体型だからなのだろうか、それとも男性だからなのだろうか。いまいち判断がつかない。


「えーーーっ。せーちゃんったらぁ~せっかく会えたのに逃げちゃやだぁ~~~。」


ビーちゃんと呼ばれたエルフはタマちゃんの消えていった空間に向かって叫び声をあげていた。


どうやらせーちゃんというのはタマちゃんのことらしい。


ということは、しーちゃんというのがプーちゃんのことだろうか。


『我も帰るぞ・・・。』


「だぁ~め。しーちゃんは僕と一緒にいるんだよぉ~~。」


『我も忙しいのだ。ビーちゃんよ、放せ。』


帰ろうとするプーちゃんの鬣をビーちゃんがぎゅっとつかんで引き留める。


「いやなのぉ~~~。せっかく会いに来てくれたと思ったのにぃ~~。僕、とぉぉぉっても寂しかったんだよぉ~~~。」


ビーちゃんは話口調からすると女性のように思えるのだが、僕と自分のことを呼んでいるところを見ると男性なのだろうか。それとも僕っ子?


「あ、あの・・・。お知り合いですか?」


「あんた、誰?しーちゃんのなに?」


「えっ・・・。」


プーちゃんが困っているようなので、ビーちゃんに話しかけたところビーちゃんからの冷たい視線が私に突き刺さった。


プーちゃんやタマちゃんに対する態度と180度違うんですけどっ!!


『マユは我の大事に人なのだ。威嚇するでない。』


「はあっ!?大事な人!!僕という存在がありながらっ!!?しーちゃんったらひどいっ!!」


『・・・相変わらずだな、ビーちゃん。エーちゃんが困っておったぞ。』


どうやらビーちゃんは嫉妬深い性質のようです。


プーちゃんも冷や汗たらたらで対応している。


と、いうかエーちゃんが困っていた・・・?


はて?


エーちゃんが困ってたのは、タマちゃんが封じた悪いエルフが呪いが解けたことによりエルフの集落を襲撃したから、だよね?


目の前にいるビーちゃんというエルフはとてもそうには思えない。


ちょっと・・・かなり嫉妬深そうだけれども集落を襲撃したようには思えないのだが・・・。


「しーちゃんはいっつもエーちゃんエーちゃんって!!エーちゃんばっかり構ってずるいっ!!僕も構ってよ!!せーちゃんだっていっつもエーちゃんばっかり構うしさ!!もう、やんなっちゃうよね!!」


おぉう。


エーちゃんの話題が出たとたんにビーちゃんが切れ始めた。


これは、ビーちゃんとエーちゃんには確執がありそうだなぁ。


『・・・ビーちゃんよ。精霊王からのお仕置きはきかなかったのか。』


「お仕置き?お仕置きって僕を閉じ込めたことぉ~?」


あ・・・。


タマちゃんビーちゃんを閉じ込めてたの・・・。ということは、ビーちゃんがエルフの集落を襲った張本人!?

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