第145話
「それにしても、皇太子殿下ずいぶんぼったくられてましたねぇ。」
マコトさんがにこやかに微笑みながらおっとりと言った。
まるで他人事のようだ。
まあ、他人事って言えば他人事なんだけどね。
私は、不用品を売ったお金を見つめながらため息をついた。
「まさか、25600ゴーニャにしかならないだなんて・・・。」
そう、皇太子殿下から売れそうなガラクタをマコトさんの無限に物を収容できる鞄に入れてたくさん持ってきたけれども、どの品も二束三文にしかならなかったのだ。
出来の悪い粗悪品だったり、型落ち品だったり、どこでも購入できる品だったからと安く買いたたかれてしまったものがほとんどだった。
もう、どれだけぼったくられてるのかと考えると頭が痛くなる。
まあ、でもこれだけあれば豪華な宴は無理だけれどもささやかな宴くらいはできるかなぁ。
「ああ。そうそう、楽師は陛下が準備してくださるそうですよ。だからこのお金はご馳走やその準備に使うだけで済むのでなんとか足りるでしょう。」
「え?そうなんですか?いつの間にそんな話になったんですか?」
マコトさんが教えてくれたことは、寝耳に水だった。
いつ皇帝陛下とそんな話をしたのだろうか。
「事前に陛下とやりとりしていたんです。全部売っても20000ゴーニャにしかならなそうだったから。」
「そ、そうだったんですね。ということは、25600ゴーニャで売れたのはいい方ってことだったんですね。」
「そうですね。良心的なお店でしたね。」
マコトさんったら準備がいいことで。
まあ、一番お金のかかりそうな楽師を用意するということが解決したのならばあとはそれほどお金はかからないよね。まあ、豪華に飾ったりとか豪華な食事やお酒を用意しなければいけないけど、なんとか足りるだろう。たぶん。
というか、たらさなければ。
って、料理を作るのならば料理人も雇わなければならないということに気づく。
「料理人もスカウトしなければいけませんね。あんな僻地に来てくれる料理人なんているのかなぁ。」
「ああ。心配いりませんよ。ユキが対応してくれますので。」
「え?ユキさん?」
そう言えばとユキさんが振舞ってくれた手料理の数々を思い出す。
どれも豪華とは言えないけれども、とても美味しい和食だった。
でも、豪華な食事も作れるのかな?
「ええ。ああ見えてユキは料理がとっても上手なんですよ。・・・和食だけですけど。」
ユキさんはどうやら料理上手だったようだ。
「豪華な食事といっても量はそんなに必要ないでそうから、ユキと後は集落の女性陣に手伝ってもらえればなんとかなるでしょう。」
「ああ、そうですね。」
神様に振舞うための食事を作ればいいんだもんね。
そんなに多くはいらないだろう。
まあ、宴なので宴に参加する人々のものは用意するけれども。
「さて、では一度集落に戻りましょうか。食材の買い出しはユキに何を作るか決めてもらってからにしないと何を購入したらいいかわかりませんしね。」
「そうですね。皇帝陛下の言っていた水色の猫のことも気になります。」
「陛下のいうことが正しければ皇太子殿下はまともな人ですしね。以前お会いした時は皇太子殿下は聡明でまじめな国民思いの人でしたからね。まあ、もう30年くらい前にはなりますが・・・。」
「あ、マコトさん。昔の皇太子殿下に会っているんですね。」
「ええ。まあ。いろいろありましたから。」
そう言ってお茶を濁すように笑うマコトさん。
なんだか詳細は教えてくれなそうだ。
ただ、マコトさんが会ったことのある皇太子殿下はまともな人だったようだ。
これはやはり水色の猫の所為で皇太子殿下がおかしくなってしまっているのだろうか。
やはり一刻も早く帰って水色の猫を探さなくては。
まずは皇太子殿下に帰ったら確認してみようかな。
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