第138話
『うむむむっ。村人によって山に捨てられた可愛い娘たち・・・。我の愛した娘たち・・・。』
プーちゃんは低く唸りながら遠い過去の記憶を思い出そうとしているようだ。
いったいどのくらい昔の話なのだろうか。
「あの・・・呪われた大地ができたのってどのくらい前なんですか?」
呆然とプーちゃんを見つめていた皇太子殿下に確認する。
私が声をかけると、皇太子殿下はハッとした表情を浮かべて、こちらを見た。
「ええと・・・。文献によると1000年以上昔の話ですね。詳細な年数はちょっとお待ちを・・・。」
皇太子殿下がそう言って何かを探すように腰を上げかけたので、あわてて
「いや、詳細な年数はいいです。ざっくりとで構いません。」
と告げた。
いやだってさ、興味本位で聞いたんだからざっくりとわかればいいんだよね。
別にきっちりとした年数を聞きたかったわけじゃないし。
でも、1000年前と言ったら日本では平安時代かぁ。
随分遠い昔に思えるなぁ。
1000年も前の記憶をプーちゃんは覚えているのだろうか。
『はっ!思い出したぞっ!マーコ、クーコ、ボーコのことかっ!!』
プーちゃんが急に顔を上げて空に向かって叫びだした。
どうやらやっと思い出したようである。
『しかし、あの時の村か。正直マーコとクーコとボーコのことを思えば許せないのだがな・・・。』
今まで忘れてたってのに許せないってどういうことでしょう?と突っ込みをいれたい。
「そ、そんな・・・。それではこの大地は・・・。」
プーちゃんの言葉に皇太子殿下が打ちひしがれて、床にペタリと這いつくばる。
まあ、プーちゃんがかけた呪いならプーちゃんが解くしかないよね。
そのためには、プーちゃんに許してもらわなければいけないんだけど・・・。
『プーちゃん、忘れたのかえ?あの時プーちゃんからの命令で、村人たちは皆子孫を残せぬように呪いを妾がかけたのじゃが。』
「おお!そうであった。そうであった。」
「で、ではっ!!」
タマちゃんの一声にプーちゃんの声と、皇太子殿下の弾んだ声が聞こえてくる。
まあ、村人たちと血が繋がっていなければプーちゃんもこの大地のことを許さざるを得ないよね。
タマちゃんナイス!と言いたいけど、タマちゃんがそんな呪いをかけたのかと思うとぞっとしないでもない。
『あの大地を戻せばいいのだなっ。しかし、マーコとクーコとボーコは元気であろうか・・・。』
過去を思い出したプーちゃんは当時の大事な娘たちのことも思い出したらしい。
遠い昔に思いを馳せるようにプーちゃんの目が遠くを見つめる。
「ってゆうか、元気だろうかって、村人たちの犠牲になったんじゃないの?」
思わず突っ込む私。
いやだって、ほら。呪いをかけて誰も住めない大地にするとか子孫を残せない呪いをかけるとか、その娘たち死んじゃったと思うじゃん。普通。
「私の聞いた話ではその後彼女たちがどうなったのかは不明となっていますね。」
「過去の文献にも彼女たちがその後どうなったのかは記載がありませんでした。しかし、村人と大地が呪われるくらいですから・・・。」
マコトさんも皇太子殿下も私と同じ考えのようだ。
『・・・?我が保護したに決まっておろう。なあ、タマちゃん。』
『うむ。妾たちと一緒にその後過ごしたものじゃ。懐かしいのぉ。まあ、寿命で亡くなってしまったのじゃが、それでも齢100までは生きたのぉ。今、どこで何をしているのかのぉ。』
「「「「無事だったのっ!!?っていうか、今も生きてるの!!?」」」」
プーちゃんとタマちゃんの言葉に私とマコトさんと皇太子殿下とさらにはミルトレアちゃんの声がハモる。
タマちゃんが彼女たちが100歳で亡くなったと言ったが、その後に続いた言葉に驚きを隠せない。
亡くなった後は無に還るのではないのだろうか。
今どこで何をしているのかというのはどういうことなのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます