第91話

 


化粧水を錬金釜にセットして一息をつく。


この間、悲しいことにこの部屋には誰もやってきてはくれなかった。


うう。寂しいよぉ。


それにしても、本当に化粧水の効果でプーちゃんとトンヌラさんを治せるのだろうか。


治せるとしたらどんな効果の化粧水が必要なのだろうか。


ブツブツと小声で呟きながら、プーちゃんがのた打ち回っている部屋に向かう。


その後ろをどこからともなくやってきた茶トラの猫・・・もといトンヌラさんが着いてきていた。


「声がでないのなら、声が出る効果の化粧水・・・。」


「魔力が封じられているのなら、魔力を介抱する効果の化粧水・・・。」


「身体がぬめるのなら、身体がぬめらなくなる効果の化粧水・・・。」


呟いてみて、ハタッと思い至って立ち止まる。


後ろから小走りで着いてきていたトンヌラさんが、急に止まった私の足に頭から激突してきて蹲っている。


思いっきりぶつかって痛かったようだ。


ごめんね、急に止まったりして。


『どうしたのだ?』


プーちゃんの心配したような声が聞こえる。


「身体がぬめらなくなる効果ってどんな効果のことを言うんだろうと思って・・・。」


『ふむ。滑り止め?』


「なんか、それだと効果としておかしくない?」


『うむ。』


「ガサガサなお肌になる効果とか?」


『・・・なんだか嫌な効果だな』


プーちゃんを治す為の化粧水ってどんな効果の化粧水が出来上がればいいのだろうか。


効果が具体的に思い浮かばない。


身体のぬめりが消える効果とか?


そんな効果はあるのだろうか。


『滑った身体を元に戻す効果・・・。うぅむ。』


プーちゃんが考えすぎて低いうなり声をあげる。


「それ!!それだよ!!プーちゃん!!」


『なにがだ??』


思い至った答えに思わずはしゃいでしまった。


「全てを元に戻す効果の化粧水を作ればいっきに解決よ!」


そうよ。元に戻す効果のある化粧水ができればいいんだわ。


きっとできるはずよ!元に戻す効果のある薬が!!


あれ?そう言えば・・・魔力が封じられているのに、なぜかプーちゃんとは念話が出来る。


念話は魔力とは異なるのだろうか。


「そう言えばさ、プーちゃん魔力封じ込められているのに、なんで念話は通じるの?」


『むっ!我の魔力は封じられておるが、マユの魔力は封じられていないであろう?近くの者から魔力を拝借すれば念話くらいわけないのだっ!』


エッヘンと胸を反らせようとするプーちゃんだったが、可哀想に滑っているため上手く胸がそらせずにもがいている。


うん。ちょっと滑稽だ。


でも、魔力が封じられていてもまわりの人の魔力を借りて念話ができるのならば、もしかしてまわりの人の魔力を借りて転移や飛ぶこともできるのではないだろうか。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る