第77話

 


「あっ・・・。」


『あっ・・・。』


『ああああああ!!!』


宝玉が金色の卵にコツンッとあたると、卵のヒビが一際大きくなった。


そして、大きく割れたヒビから真っ白い手が伸びてきて宝玉を掴むと、ひょいっと卵の中に宝玉が吸い込まれていった。


『綺麗じゃのぉ・・・。実に綺麗じゃのぉ・・・。うふふふふふ。』


金色の卵の中からうっとりとしたような声が聞こえてくる。


『返せっ!!』


プーちゃんが金色の卵を殴りかかる。


すると、パリンッと音とともに金色の卵の殻がはじけ飛んだ。


金色の卵があった場所には、ぬばたまの髪をした色白の少女が大切そうに宝玉を抱きしめながら座り込んでいた。


 


うっわ。リアル市松人形・・・。


 


『これは妾の元に来たのじゃ。妾の物じゃ。』


嫌だと少女は断り、ギュッと大切そうに宝玉を抱きしめ直す。


プーちゃんはおろおろしながら、少女を見つめている。


あまりにも華奢に見える少女に、強気に出られないようだ。


『ジーちゃん、ダメっ!プーちゃんにその宝玉を返すのっ!』


マーニャが少女に向かって叫ぶ。


・・・ん?


じーちゃん・・・?ジーちゃん?


『妾はじーちゃんではないわっ!』


おっと。


案の定、少女が怒ってしまったようだ。


そうだよね。


少女なのに、ジーちゃんはないよね。


『ジーちゃんなの!マーニャが決めたからジーちゃんはジーちゃんなの!』


『違うわっ!』


おお。ジーちゃん、マーニャにつけられた名前が気に食わなくて反論している。


「マーニャ。流石にジーちゃんという名前は可哀想だよ。どうしてジーちゃんなの?」


『可愛い名前なの。ゴールドの頭文字を取ってジーちゃんなの。』


金色の卵から孵ったからゴールドなのね。


でも、ジーちゃんは流石にないと思うんだけど・・・。


「ジーちゃんすっごく可愛いよね。お人形さんみたいだよね。でも、ジーちゃんって名前でいいの?ジーちゃんっていうとお爺さんっていう意味に聞こえてしまうよ?」


優しく諭すようにマーニャに伝えると、マーニャはう~んと考え込んでしまった。


マーニャとしてはジーちゃんという名前がいいらしい。


でも、ゴールドの頭文字でGっていうけど、私のだいっきらいな虫の頭文字もGなんだよね。


だから、ジーちゃんはできるだけ避けたいっていうか。


『妾はタマちゃんという名が良いのじゃ。』


「はあ!?」


『タマちゃん!!タマちゃん!!』


名前について、マーニャと話し合っていると、当の本人から名前の自己申告があった。


いや。でも、マーニャと同じでネーミングセンスないよね・・・。


この世界の人って皆ネーミングセンスがないのだろうか。


しかも、マーニャはタマちゃんという名前を気に入っているようで、はしゃいでいる。


これでいいのだろうか・・・。


そう思った瞬間、どこからとも無く土の大精霊ブーちゃんがやってきて、


『これで、いいのだっ!』


とのたまった。


 


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