第68話
お米があればご飯が炊ける。
ああ、お米食べたい・・・。
ユキさんのところで炊きたてのご飯を食べたっきり食べてないし。
お米が恋しいよぉ。
「サラさん。お願いしますっ!お米を売ってくれませんか?」
バンッと両手をテーブルについて、頭を下げる。
お米欲しい。絶対欲しい。何が何でも欲しい。
「あ、頭を上げてちょうだい。マユさん。お米が欲しいのはわかったけど、マユさんはお米の調理方法を知っているの?」
慌てたようなサラさんの声がする。
「はい。お米は研いで炊けば食べられます。ほんのりと甘みがあってとても美味しいし、飽きの来ない味なんです。」
炊き立てのご飯の味を思い出して、思わず涎が出そうになる。
想像してしまったら余計に炊き立てのご飯が食べたくなってきた。
是非とも、お米を売ってもらわなければ。
「そう。お米を研いで炊くって簡単なのかしら?たまに市にお米が並べられることがあって、気になってはいたの。でもダンも私もお米の調理法方を知らなくって手が出せなかったのよ。」
どうやらサラさんはお米には興味があったけれども、調理法を知らなくて二の足を踏んでいたらしい。
ユキさんは知っているのにな。
「簡単ですっ!お米をお水で研いで、炊飯ジャーで炊くだけですから。」
水加減とかはちょっと難しいけども、お米を研いで炊飯ジャーで炊くことは私だって出来る。
卵を割るよりも簡単だ。
まあ、水加減間違えて硬く炊き上がってしまったり、柔らかくなりすぎることもあるけれども。
私の一番の得意料理だ。
って、料理って言えるかわからないけれども。
「・・・すいはんじゃー?すいはんじゃーって何かしら?」
「え?」
サラさん口元に手を当てながら首を傾げている。
もしかして、炊飯ジャーを知らない・・・?
てっきりユキさんが普通に炊き立てのご飯を食べさせてくれたから炊飯ジャーがこの世界にもあるかと思っていたんだけれども。
「ダン。すいはんじゃーって知ってる?」
サラさんが厨房に立っているダンさんに確認する。
ダンさんもサラさんと同じく口元に手を当てて首を傾げた。
おお。流石夫婦だ。仕草がまったく同じだ。
「知らん。聞いたこともない。調理器具なのか?」
「ふぁっ!?」
ダ、ダンさんも知らないだなんて。
これは、この世界には炊飯ジャーはないのだろうか。
でもでも。
ユキさんはご飯を炊いてくれたんだ。
炊飯ジャーはあるはずなんだ。
・・・あるはずなんだけど。
もしかして、炊飯ジャーってあんまりキャティーニャ村には浸透していないのかな。
「ユキさんなら知っていると思うので聞いてきます。ユキさんに炊き立てのご飯をいただいたことがあるので、知っているはずです。」
「あら。ユキさんもお米の調理法方知っていたのね。早く確認すればよかったわ。ちょっと待って、私も一緒に行くわ。ダン、ちょっと席を外すわね。」
「ああ。」
私とサラさんは、ユキさんの元に向かうことにした。
炊飯ジャーがなかったら、私、ご飯炊けないじゃん。
「あら、サラさんにマユさん。いらっしゃい。」
にっこり笑って迎えてくれたのは年相応の顔つきになったユキさんだった。
ちなみに、サラさんは最近になってユキさんの顔を始めて見たらしい。
それまでは、ユキさんは家の外に出てくることがほとんどなかったため、ユキさんの顔を知らなかったとか。
そうだよね。
ユキさんの顔、ものすっごく若作りだったからなぁ。
今では私の作った化粧水の所為で年相応の顔になっている。
「ご飯の炊き方?ああ、鍋で炊くのよ。ちょっと火加減が難しいんだけどね・・・。」
ユキさんが笑顔で教えてくれた。
鍋でご飯を炊くと。
そう言えば、土鍋でご飯を炊くと美味しいと聞いたことがあるような気がする。
ユキさんが懇切丁寧に鍋でのご飯の炊き方を教えてくれるけれども、どうにも私にはハードルが高いように思える。
【はじめちょろちょろなかぱっぱ】って何の呪文だろうか。
これは、ご飯を炊くことは諦めなければならないのか。
一緒に来たサラさんも目を丸くして困惑顔をしている。
そういえば、サラさんも料理ができなかったと気付く。
ここは、サラさんではなくてダンさんに一緒に来てもらえばよかったかも・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます