第62話
村長さんのところにまずは挨拶に向かった。村長さんの家にはハルジオンさんとユキさんが仲良く庭の手入れをしているところだった。
「マリアを迎えにいきます。」
と、村長さんとユキさんに告げると、
「気をつけてね」
という言葉と供に
「マーニャたちに・・・」
と猫様用のミルクを手渡された。
しかもこのミルク、私がいつも買っている猫様用ミルクではなく、それよりワンランク上の乳酸菌入りの猫様用ミルクだった。
得てしてクーニャの所望するミルクを手に入れたのだった。って、ユキさん見てたわけじゃないよね?
次に向かったのはケララのところだった。もちろん、留守中の畑の世話と鶏の世話をお願いするためだ。
まあ、鶏に関しては庭にはまだまだ草があるのでご飯には困らないだろう。
ただ、もしなんらかの病気になってしまったらすぐに診てもらわなければいけないので、主に鶏が元気かどうかを確認してもらうためだ。
畑に関してはどの作物も根が張っているので、毎日水をやる必要はないだろう。
ただ、何日も雨が降らないと水をあげないと作物が弱ってしまう。
今まではプーちゃんが定期的に畑に雨を降らせていたからよかったんだけど、今回プーちゃんも私たちと同行するから雨を降らせることができない。
だから、ケララにお願いしたのだ。
ケララは化粧水を両手で握りしめると、「わかった」と二つ返事で頷いてくれた。
これで、畑は安心だ。
ただ、お礼が化粧水だけというのは少ない気がしたので、私たちがいない間にできた作物は食べていいと伝えてある。
ただ、他の誰かには分け与えないように厳重にお願いした。
不特定多数に、畑の作物の効果が広がってしまったら大変なことになるからね。
ケララの家の隣がローズさんの家なので、ローズさんにも挨拶をした。
そして、鳥のささみと豚の挽き肉を購入した。
ささみはボーニャにお願いされたものだ。挽き肉は今日の晩餐にハンバーグでも作ろうと思って購入してみた。
「これ、あげるよ。茹で玉子にでもして旅の道中で食べたらどうだい?」
そう言ってローズさんは卵をたくさんわけてくれた。
これで、たくさん茹で玉子が作れそうだ。ローズさんに「ありがとうございます。」と、お礼を言う。続いて、サラさんとダンさんのところに向かう。
マーニャにお願いされた煮干しと、夕飯に食べるためのサラダをテイクアウトするためだ。
「こんにちはー。」
「あら。マユさんいらっしゃい。ごめんなさいねぇ。今日は貸し切りなのよ。」
お店のドアを開けて挨拶をすると、出来立ての料理を持ったサラさんが出迎えてくれた。
ただ、今日は貸し切りのため食べていくことができないらしい。
もとより、今日はテイクアウトをお願いするだけだから問題ないけれども。
「そうなんですね。あの、煮干しとサラダがほしいんですが、お願いできますか?」
「あら。いいわよ。ちょっと待っててね。」
貸し切りといっても人数が少ないのか、サラさんは料理を貸し切りのお客様がいるだろうテーブル持っていったあとに、すぐに厨房にはいりサラダと煮干しを持ってきてくれた。
「はい。マユさん。これどうぞ。」
「ありがとうございます。忙しいのに急がせちゃったみたいですみません。」
「いいのよ。お客様は一人と猫様だけだから。」
そう言ってサラさんはにっこりと笑った。
一人で来て貸し切りってすごいなぁ。どんな人なんだろう。
気になるがお店を貸し切りにするような人だから一人で食事をしたいのだろうと中を覗き込まないようにする。
「あの、女王様に連れていかれてしまったマリアを探してきます。まずは、王都の方に向かいますので、しばらく家を開けますね。」
「えっ!?」
私がサラさんにしばらく家を開けると告げると、サラさんは驚いたように目を見開いた。
・・・ん?
どうして、そんなに驚いているのだろうか。
今まで挨拶した人はそんなに驚いてはいなかったのに。
プーちゃんたちも一緒だから安心だしね。
サラさんは店の奥を何度もチラチラと見る。そして、「ちょっと待っててね。」と言って店の奥に消えていった。
それから待つこと数分。
「マユさん。どうぞ、こっちに来てちょうだい。お客様が一緒に食事をしましょうって言ってくれたわ。」
「え?いや、あの。マーニャたちが待っているので帰ります。あの子達もご飯食べるの楽しみにしているから。」
「そう?じゃあ、お茶だけでもどう?」
サラさんったら、必死になって私を引き留める。どうしても、お店の中にいるお客様と私を引き合わせたいようだ。
いったい何故だろう・・・?
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