第53話

 


『にゃんにゃにゃ、にゃにゃにゃにゃ、にゃ、にゃ、にゃ~♪』


『にゃんにゃにゃにゃにゃ~♪』


『にゃんにゃにゃにゃ、にゃん、にゃん♪』


ご機嫌そうな猫が3匹、窓枠に並んで座ってお外を見ながら尻尾を軽く揺らしている。


ゆら~ゆら~と動く尻尾は3匹とも気があっているのか、同じスピードで同じ方向に揺れていた。


まるで歌でも歌っているかのような楽しそうな鳴き声が聞こえてくる。


その後ろをオロオロと左右にいったり来たりしている猫と同じサイズの蛇・・・もとい青竜がいるが、3匹の猫たちは青竜の存在に気付いているのか気付いていて無視しているのか、まったく相手にされていなかった。


「ごきげんだね、マーニャ、クーニャ、ボーニャ。」


私はごきげんそうな3匹の猫に近づき声をかける。


すると、鳴き声がぴたりと止み、3匹の猫がこちらをくるりと振り向いた。


尻尾のゆらゆらは止まってはいないけれど。


『すごい風なのー。』


『雨もすごいのー。』


『葉っぱとかが飛んでて楽しいのー。』


いつもとは違う外の様子が楽しいようです。


でも、お外に出たいと言わないあたり安心している。


この状態で、外にでたらマーニャたちなんて軽いんだから飛ばされてしまってもおかしくない。


それに、雨もどしゃぶりなのでビタビタに濡れてしまうだろう。


今、家の外は猛烈な風が吹いており、バケツをひっくり返したような土砂降りとなっている。


 


・・・私の家の周囲だけ。


 


というのも、スーちゃんとグリードが喧嘩をしているのが原因だ。


スーちゃんが水を呼び、グリードが風を呼んでいるのだ。


どうして、この二体の大精霊が喧嘩をしているかというと、実はとても些細なことが原因なのである。


なにが原因かというと私がしかけておいた化粧水にどちらが魔力を込めるかで揉めているのである。


なぜだか、もとからある錬金釜では主にプーちゃんが魔力を込め、時々気が向いたらマーニャたちが魔力をこめているのだが、新しく購入した錬金釜は大精霊たちが魔力を込めているのだ。基本的には早い者勝ちで。


で、スーちゃんが一番早かったんだけれども後から来たグリードがスーちゃんに代わるように言ってきたのだ。


しかし、スーちゃんも化粧水に魔力を込めてみたくて誰よりも早く飛んできたのだからグリードに譲りたくないと喧嘩に発展してしまったのだ。


古い錬金釜と違って新しい錬金釜は3時間程度待てば新しい化粧水が出来上がるんだけどね。


どうもその3時間が二体の大精霊には待てなかったようだ。


そして、大喧嘩に発展したのだ。


はた迷惑な話である。


ピーちゃんとブーちゃんについては、もう既に化粧水に魔力をこめたことがあるので、今回の争いには加わっていない。というか、ブーちゃんは『もっと派手にやるのだっ!』と、二体を煽っていたが。


植えたばかりのひまわりが倒れてしまわないか心配。


プーちゃんもさっきから窓の前をうろうろとしているので、トマトが心配なのだろう。それにしてはピーちゃんが落ち着いているのが気になるところだ。


さてはて、二体の喧嘩が収まるまでは錬金釜の蓋を開けることができないなぁとじぃっと錬金釜を見つめる。


すると、『飽きたのだ・・・。』と言ってブーちゃんが錬金釜のそばまでやってきた。


さっきまでスーちゃんとグリードを煽っていたが、どうやら煽ることにも飽きたし見ていることにも飽きたらしい。


「早く仲直りしてくれるといいね。」


『早く仲直りするのだっ。』


ブーちゃんも二体の喧嘩に嫌気がさしてきたようで、不貞腐れたように呟いた。


次の瞬間、ぺカーッという光が錬金釜から放たれた。


「え?」と思って錬金釜を見ると、ブーちゃんが錬金釜に触っている。


どうやら連金釜にブーちゃんの魔力が込められてしまったらしい。


スーちゃんとグリードがこの魔力を込める順番で喧嘩しているのに、ブーちゃんと来たら・・・。


『・・・ブーちゃん。』


『ブー!!何してくれてんだよ!!』


案の定、喧嘩していた二人が錬金釜に魔力が込められたことを察知して家の中に飛び込んできた。


あああ、更なる嵐の予感がする。


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