第106話

 


「・・・猫耳っ!!」


「ふえっ!?」


ドアを開けると、マルゲリータさんにガシッと肩を掴まれた。

猫耳!?猫耳っていったいなに!?

って、ああ!!

そう言えば私まだ猫耳が生えたままだった。

いろいろありすぎて忘れてたよ、猫耳のこと。


「その猫耳どうしたのかしら!?」


うぅ。相変わらずこの人怖いよ。化粧水の時もそうだったけど迫力がすごいんだよね。


「あ、あの・・・それよりマコトさんのお返事を聞かせていただけますか?」


おずおずとマルゲリータさんに負けないように確認をするが、マルゲリータさんにはかなわなかった。


「そんなことより!この猫耳ですっ!どうしたんですか!!これ!先日お会いしたときには猫耳なんて生えていなかったと記憶しております。見たところ本物の猫耳のように見えますが、何をしたら猫耳が生えるんですか!?」


唾・・・。唾が顔にかかるくらいに興奮しているマルゲリータさんは私の肩に手を当てながらガクガクと揺すってくる。

もう何度目かなこのパターン。この国の人たちは何かあったら肩をつかんでを思いっきりガクガクと揺するのが定番なのかなってくらい肩をガクガク揺らされるのだ。

って、マコトさんからの伝言をそんなこと扱いしちゃってるよ、この人。


「お、オークション参加されなかったんですか?」


「オークション!?オークションがあったの!?私、参加資格が無いのよ・・・。」


暗にオークションで手に入れたと示せば、マルゲリータさんはがっくりとうな垂れた。

そうだった。オークションに参加するには条件があるんだった。

化粧水が原因で猫耳が生えたなんて言ったら頂戴と迫られそうだったから言わないでおく。


「オークションで入手された猫耳が生える・・・薬かしら?それってあまっていないの?」


「全部、飲んでしまいました・・・。」


「・・・そう。また手に入ったら教えてちょうだい。」


「わかりました。」


マルゲリータさんはとても落ち込んで見えた。

眉に皺を寄せているところを見ると猫耳が手に入らなかったことに相当ショックだったようだ。

目線も下がってしまっている。


「・・・そうでした。マコトさんからの伝言を伝えるのを忘れていました。」


って、忘れてたのかいっ!

思わずつっこんでしまった。


「今日はもう時間が遅いから明日お会いになるそうです。」


「ありがとうございます。何時ごろお伺いすればよろしいですか?」


「9時以降なら何時でも良いとのことでした。」


「わかりました。9時以降にお伺いいたします。」


どうやらマコトさんは明日会ってくれるそうだ。

9時以降でいいとのことだが9時に伺うことにする。あまり遅くなってしまって、また会えなくなったと言われてもいけないし。


『マユ、お客さまー?』


『だれー?』


マルゲリータさんとのお話がちょうど終わった頃に来客に気がついた好奇心旺盛なマーニャとクーニャがやってきた。

ボーニャはぜっさんベッドにて卵を温めている最中なのでこないようだ。


「んー。明日、マコトさんに会うことになったよ。」


『ほんと!嬉しいの!』


『早く行くの!』


おや?マーニャとクーニャはマコトさんに会ったことがあるのだろうか。

やけにマコトさんに会うことを喜んでいるようだが。

まあ、いっか。マーニャたちが嬉しそうなら。


「猫様っ!?」


『『にゃ?』』


マルゲリータさんがマーニャたちを見つけて目を輝かせている。

どうやらマルゲリータさんも猫好きのようである。

まあ、今まで猫嫌いな人にこの国で会ったことがないけれども。


「可愛らしくて高貴な猫様。どうか、抱っこさせていただけませんでしょうか?」


マルゲリータさんが跪いてマーニャとクーニャにお願いしている。

マーニャとクーニャはビックリしながらも褒められたことに満更でもないようで、耳がぴくぴくと小さく動いていた。


『抱っこはヤダけど頭を撫でるくらいなら別にいいよー。』


『私は顎の下がいいー。』


二匹とも抱っこは身動きが取れなくなってしまうのでイヤなようである。

ただ、もちろんマルゲリータさんにはマーニャたちが何を言っているのかわからないので、マーニャたちが嫌がっていないとみて、抱っこしようと手を伸ばした。


「あ、マーニャとクーニャ抱っこはダメって言ってます。マーニャは頭を撫でて欲しいそうで、クーニャは顎の下を撫でて欲しいと言っています。」


「まあ!そうだったの。触らせてくれてありがとう、マーニャ様、クーニャ様。ところで、どっちの猫様がマーニャ様でクーニャ様かしら?」


「キジ白の子がマーニャで、黒トラの子がクーニャですよ。」


マーニャたちの名前を教えてあげると、マルゲリータさんは満足したように笑みをみせ、マーニャの頭とクーニャの顎の下を優しく撫ではじめた。

マーニャもクーニャもマルゲリータさんの撫でる手つきが気に入ったのか、「ふにゃ・・・。」「ゴロゴロゴロ・・・。」と喉をならしたり、気持ちよさそうに鳴き声を漏らしている。

しばらく気持ちよさそうに撫でられていたが、満足したのかマーニャが頭を横にふり、すぃっと部屋の奥の方に行ってしまった。

クーニャはそれからしばらく撫でてもらっていが、もうよくなったのか右前足でパシッと顎をなでるマルゲリータさんの手を叩いていた。


「あら、もういいのね。」


クーニャに叩かれていたがマルゲリータさんは微笑んだままだった。

クーニャはマルゲリータさんの手の甲をペロっと舐めると、マーニャと同じく部屋の奥の方に行ってしまった。


「すみません、クーニャが叩いてしまって。痛かったですよね?」


「痛くはなかったわ。だって、爪を立てていなかったしとても軽く叩いてくれたから。やっぱり猫様はおりこうね。」


マルゲリータさんも満足そうに笑っているから良しとするか。


「では、明日お伺いいたしますね。」


これ以上マルゲリータさんに用はないし挨拶をする。

だが、マルゲリータさんは私を放してはくれなかった。


「ねえ、それよりマユさん、今、猫様と意思疎通ができていたわよね?なんで?教えてくださる?」


あっちゃー。

そうだった。普通の人は猫と意思疎通が取ることが難しいんだった。

それからしばらくマルゲリータさんの追及が始まった。

スキルによるものと教えたらそのスキルはどうやったら取得できるのか等々、散々根掘り葉掘り聞かれてマルゲリータさんが帰るころには疲れきってしまったのはいうこともない。


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