第99話

 


爵位を貰っても今のところ使い道がないよなぁ。

この世界にも来たばかりで爵位を貰って貴族としての責任が発生しても面倒なだけだし。

今は領地経営に興味はないし。

かと言って、お金を貰うのも・・・。

オークションで稼いだお金があるから今は懐が暖かいし、まあ、あって困るものではないけれども。


「あの、それでしたら猫化する化粧水を作ってしまったことへのお咎めをなしってことでお願いできますでしょうか。」


女王様に褒美を強請るのも気が引けるので、化粧水の件を不問にして欲しいとお願いしてみる。


「貴女は何を言っているのでしょうか?なぜ猫化する奇跡の化粧水を作成したことを咎めなければならないのでしょう?」


女王様はなぜ?というように首を傾げている。

あれ?おかしいなぁ。猫化する化粧水は騒動の元になるから禁止されてもおかしくないかと思っていたのに。


「猫化した人が悪さをするかと思っていたので・・・。」


「ふふふっ。なぁんだ、そんなことね。大丈夫よ。猫様がそんな悪さをするわけありませんし、それにそのような猫様は猫様ではありません。効能によるとお湯をかければ元に戻るのでしょう。悪さをした猫様がいたら試してみればよいのです。」


「まあ、確かに見破る方法はありますが・・・。」


女王様はにこやかに大丈夫だと告げる。

見破る方法があれば大事ないとのことだ。

でも、被害に会う方としてはおいそれと猫様にお湯をかけるのは抵抗があると思うんだけど・・・。やけどしちゃったら・・・とか。


「もしかして、マユさんはあの化粧水の効果を試していないのかしら?私専属の近衛騎士に試してみたところ、お湯の温度は37度あれば問題ないようよ。熱湯である必要ないのよ。」


「はあ。そうなんですか。熱湯じゃなくていいのなら安心しました。」


どうやら女王様は化粧水を既に試していたようだ。

・・・ん?


「・・・って、あの化粧水もう試されたんですかっ!?人化する化粧水まだ出来上がっていないですし、出来るかもわからないんですよ?」


お湯で人間に戻れたとしても、水で猫の姿になってしまうとなれば、水の中には入れないし、そもそも雨に濡れても猫の姿になってしまうかもしれない。そんな不完全な化粧水を試してしまうとは、女王様の近衛騎士さんは承認済みなのだろうか。


「いいのよ。トンヌラなんだから。悪用するような人物ではないし。」


「承認は得られたんですか?」


「まさか。うふふ。紅茶に混ぜて飲ませたんだけどね。見ものだったわよ。まずくてねばねばしてて飲みにくいのを私の命令だからって我慢して飲んでいる姿のなんて可愛らしいこと。ふふっ。今、思い出しても可愛いわ。飲み終わったあとに、バケツで水をぶちまけたんだけど、その瞬間、猫の姿になった時のまんまるとした瞳で信じられないというようにこちらを見つめていたトンヌラの瞳。今思い出しても可愛いわぁ。」


女王様は楽しそうに笑いながら化粧水を使ったときのことを教えてくれた。って、そのトンヌラさんっていう近衛騎士さんものすごく可哀想な気がしてきたんだけれども。

というか、本当に女王様に化粧水を渡してしまってよかったのか。なんだか一番渡してはいけない相手に渡してしまったのではないかと思えてくる。

残り9本の化粧水はどうやって使われるのだろうか。気にしない方が身のためかもしれないが、気になってしまう。


「・・・そうですか。」


「それで、他になにかないのかしら?欲しいものがないのであれば、私が決めてしまってもよろしいかしら?」


「・・・はい。」


にっこり笑う女王様を見ていると頷く以外の選択肢が見当たらない。

どうか、まともなものでありますように。


「それでは、王家に伝わる卵なんてどうかしら?」


「え?卵ですか・・・?」


女王様から告げられた以外な褒美に戸惑う私。

まさか褒美が卵だなんて誰も思わないだろう。

それに、王家に伝わる卵って何それ。

どんな味なのだろうか。生卵なのだろうか。

いつから王家にあるのだろうか。

腐ってたりしないだろうか。


 


 


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