第89話
オークションかぁ~。
せっかく王都にいるんだから行って見るのもいいかなぁ~。
次の機会なんていつ訪れるかわからないし。
あ、でも今私の頭には猫耳がついてるんだった。猫耳どうしよう………。
「あの、この化粧水の効果ってどれだけ持続するかわかりますか?」
こういう時は鑑定士さんに確認するに限る。
きっと持続時間もわかるだろう。多分。
『んとぉ~残念なことにぃ~三日間になりますぅ~。一生~続けばいいのにねぇ~。』
「そうですか。三日間ですか………って三日!?」
私は猫耳を押さえて蹲る。
三日もこのままって………。
マコトさんに会うときは猫耳のままじゃん。
『短いですよねぇ~。』
「いや!長すぎるからっ!!三日間は長すぎるからっ!!」
鑑定士さんの言葉に思わず突っ込んでしまった。
『にゃっ!』
『三日で猫耳なくなっちゃうのぉ~。』
『マユの猫耳ぃ~。期限付きなんてプーちゃんのバカ。』
ありゃ。
私の足にまとわりついているマーニャたちからも残念そうな声が聞こえてくる。
って、さっきまでプーちゃん褒め称えてたのに期限付きってわかったらこの対応なんだね。
クーニャはプーちゃんのそばに移動すると猫パンチを繰り出している。
期限付きということが気に食わなかったらしい。
「オークション会場に行くの諦めます………。」
『あらぁ~。なんでぇ~?王都にぃ~いるんでしょ~?参加~しなさいよぉ~。』
あれ?
私、鑑定士さんに王都にいるっていったっけ?
「なんで私が王都にいるって知っているんですか?」
『どこのぉ~転送ボックスからぁ~転送されたかぁ~わかるようになっているのよぉ~。で、なんでぇ~?』
鑑定士さんの言葉に納得する。
そうか。どこから送られてきたのかわかるようになっているのか。
それもそうだよね。
品物を送り返す時、どこに送り返したらいいかわからなくなるしね。
普通に考えれば当たり前のことか。
「その化粧水飲んじゃったんです。」
『まぁ~~~!!!それはぁ~是非オークション会場にぃ~来てください~!!!』
「いや。恥ずかしいので無理ですっ!」
『恥ずかしくなんてぇ~ないですよぉ~。みんなのぉ~憧れのぉ~的ですぅ~。それにぃ~効果がぁ~実際にぃ~見えた方がぁ~化粧水のぉ~価格がぁ~高くなりますよぉ~。』
「ぐっ!」
確かにさ、こういう風になりますよっていうのを見せた方が化粧水の値段も高くなるだろう。
でも、でも。恥ずかしい。
この似合わない猫耳姿だし。
『『『マユ!行くの!!絶対行くの!!』』』
いつの間にかプーちゃんに猫パンチをかましていたクーニャも合流して、私の足をテシテシと前足で叩いてくる。
それから、じぃーっと私の目をそのまあるい瞳で見つめてくる。
キラキラとした瞳を見つめていると、嫌だとは言えなくなってくる。
………マーニャたちには勝てない。
「………………行きます。」
マーニャたちのおねだりに負けてしまった。
ガクッとバランスを崩し、その場に崩れ落ちる。
この格好を晒すのは嫌だけれども、それ以上にマーニャたちの期待を裏切ることができない。
そんな目で見つめられたら頷くしかないではないか。
『わかったわぁ~。明日ぁ~、宿までぇ~迎えにぃ~行きますねぇ~。もしぃ~可能であればぁ~化粧水もっとじゃんじゃん~作ってぇ~持ってきてぇ~くださいねぇ~。』
うぅ。
鑑定士さんの弾んだ声が恨めしい。
これ、きっと鑑定士さんも化粧水買おうとしているでしょ。
声がすごくウキウキしているもん。
しかも、通信いきなりぷっつり切れてるし。
でもまあ、せっかくオークション会場に行くのだし。
材料と時間があるだけ、化粧水作ろうかなぁ。
でももう17時だし。作成時間を考えると30本が限界みたい。
夜更かしはお肌に悪いしね。
「マーニャ。クーニャ。ボーニャ。化粧水いっぱい作るよ!」
『『『らじゃあ~!!!』』』
マーニャたちに声をかけると嬉しそうに返事をしてくれた。
これは、マーニャたちが手伝ってくれるのかな?
それから、私とプーちゃんは化粧水作りに明け暮れた。
と言っても材料入れて時間が経ったら取り出すだけだけれども。
あれほどはりきっていたマーニャたちは化粧水作りを結局は手伝ってくれず、プーちゃんが全て押し付けられていた。
マーニャたちは3匹で遊んでいたり寝ていたり自由気ままにすごしていた。
ちなみに、この日出来上がった化粧水は追加分が30本だった。
それぞれ効果が違うのか化粧水の味が異なっている。
コーンポタージュ味に納豆味、牛乳味だ。
コーンポタージュと牛乳はいいとして、納豆味。これ、売れるのだろうか。効果もよくわからないし。
でも、飲んでみる勇気もない。今度は猫の尻尾が生えました~なんてなったら目も当てられないし。
だから効果については明日鑑定士さんに確認してもらうことにした。
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