第50話


「「「みゃあ♪」」」


王都まで行くとなると、マーニャたちを置いて行った方がいいのか、それとも連れて行った方がいいのか悩むところである。

でも、一般的に猫って旅行に連れていかないよねぇ。

マーニャたちの顔を見るとキラキラと輝く瞳と目があった。

どうやら、一緒に王都に行きたいらしい。


「マーニャ、クーニャ、ボーニャ。一緒に王都に行く?」


「「「にゃっ!!」」」


返事が綺麗にハモっている。

マリアじゃなくてもわかる。

この子たち、王都に行く気だ。

王都で迷子にならなきゃいいけど。

王都って言うくらいだから人が多いと思うし、知らないところで迷子になったらと思うと少し心配ではある。

でも、きっとこの子たちは何が何でも王都まで着いてくるだろう。

一緒に過ごした短い間でも、なぜかそう思った。


「猫様がいれば心強いわね。マユ、王都で迷子にならないように、ザックの言うことは聞くのよ。」


「もちろん。わかっているわ。」


私だってもう三十路も過ぎたいい大人である。マリアに言われなくたって………。


「行ってらっしゃい。気を付けてね。マユ。」


私はこうしてキャティーナ村から王都を目指すことになった。

王都までは片道3日かかるらしい。

日本では車や電車、飛行機があったから日本国内など1日もかからないで行けたが、この世界にはそんな便利な乗り物はないらしい。

移動手段は、徒歩か馬車もしくは、転送魔法だって。

転送魔法は行きたいところに瞬時に行けるらしい。

ただ、使用できる人には制限があり国の重要人物しか使用出来ないらしい。

個別スキルを持っていれば使用できるらしいけど、そんな人は国に数人しかいないらしく、基本的には歩きか馬車を移動手段としているようだ。

そんなんだから、王都までの行くのは時間がかかるらしい。


マリアがザックさんに話をつけてくれ、ザックさんと一緒に王都に行くことになった。

って、私まだザックさんに会っていないんだけど。

王都まで行くために、色々と旅の準備をしていたらあっという間に王都に出発する日になってしまった。

ちなみにまだザックさんには会ったことがない。





コンコンコンッ。

朝も早くから、家のドアを叩く音がする。ザックさんだろうか?


「はい。どちら様ですか?」


「ザックだ。」


「あ、今行きます。」


「「「にゃあ♪」」」


私はバスケットにマーニャたちを押し込め、家を出た。

家の前には金ぴかに輝く王子様がいた。もといザックさんと思わしき人が立っていた。

アンナちゃんも可愛いけど、ザックさんはとてつもない美人さんである。


「はじめまして。王都までの行き帰りお世話になります。」


「ああ。」


見た目が派手なザックさんだが、口数は少ないらしい。

一言しか喋らない。

いけない。会話が続かないんだけど。


「乗れ。」


そう言ってザックさんは、馬車を指差した。


「あ、はい。」


私はマーニャたちを入れたバスケットを馬車に持ち込む。

馬車の中は意外と広かった。しかも、ドアもしっかりとしているので、馬車の中ではマーニャたちをバスケットから出しても馬車から落ちるなんてことはなさそうだ。

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