第46話
「こんにちはー。また来ちゃいました。」
私とマリアは村長さんの家のドアをノックして呼び掛けた。
すると、村長さんがすぐにやってきてくれた。
「おお。待っておったぞい。マーニャ様たちが来ておる。さあ、あがるとええ。」
「え?マーニャたちが来ているんですか!?」
「ああ。すぐにまた戻ってきて、今はユキの膝を3匹で奪い合うように眠っておる。可愛いのぉ。」
そう言って村長は朗らかに笑った。
マーニャたちってば、なんでまた村長さんの家に来たんだろう。
さっき、村長さんの家から帰ったばっかりなのに。
「おじゃまします。」
まあ、でも、ちょうどユキさんに聞きたいこともあったし、帰る時に連れて帰ればいいか。
村長さんに案内されて、私とマリアは昼間も来たテレビのある部屋に通された。
そこには、膝に3匹の子猫を乗せているユキさんがいた。
むぅ。
なんだか、ほんわかする光景なんだけれども、胸のあたりがモヤモヤとしてしまう。
膝の上に3匹が乗っているなんて、なんて羨ましいっ!!
「あら、マユさん、マリアさん、いらっしゃい。」
ユキさんはにっこり笑って出迎えてくれた。昼間はおどおどしていたのに、今は普通の態度だ。
どうやら容姿が年相応でないために、人に会うのは緊張するらしい。
でも、私とマリアはユキさんの容姿に驚いたが偏見をもたなかったのでユキさんも安心して出迎えられるらしい。
そうだよね、普通に考えて50年も年を取らないだなんて普通とは違うものね。
偏見があったりするのかもしれない。
「昼間もおじゃましたのにまた来ちゃってすみません。」
「いいのよ。いつでも来てちょうだい。この子たちを迎えに来たの?」
膝の上のマーニャたちを撫でながらユキさんが訪ねてきた。
それに、私もマリアも首を横に振る。
「実は、マーニャ様たちがこちらにおじゃましていることには来てから気づいたんです。今回は全くの別件です。」
「化粧水のことで聞きたいことがあって・・・。」
「化粧水?なにかしら?」
コテンッと首を傾げるユキさん。
「あのっ!醤油って知ってますかっ!?」
「醤油・・・知っているわ。」
【醤油】という言葉に目を丸くして驚いたユキさんだったが、すぐに笑顔になった。
「味噌を知っていたのだから醤油も知っているわよね。醤油がどうかしたの?」
「あの、この世界でも醤油って手に入るんですか?」
「入手は難しいけど手に入らないことはないわ。今日お出しした魚の煮付けにも実は醤油を使っていたのよ?」
おお!なんと今日食べた魚の煮付けに醤油が使われていたのか。
でも入手困難なのか・・・。
「醤油はこの世界では一般的なんですか?」
「んー。あまり一般的ではないわね。マリアさんは知らなかったでしょ?」
「はい。知りませんでした。」
「そういうこと。一部の人しか知らない調味料なのよ。」
醤油の知名度は低いのか。
そして流通もあまりないらしい。
「それで?化粧水と醤油になにか関係があるのかしら?」
ユキさんは当然と思えるような質問をしてきた。普通に考えて醤油と化粧水に関係があるとは思えない。
ユキさんが確認してくるのももっともだ。
「あのっ。醤油味の化粧水が出来上がってしまって・・・。」
「醤油味の?化粧水?」
うん。まだユキさんは不思議がっている。
これは実物を見せた方が早いかな?
私は鞄から醤油味の化粧水を取り出してユキさんに見せた。
ユキさんはそれを手にとってしばらく見つめてから、目を大きく見開いた。
「マユさん!お願い!この化粧水を全部私に売ってくれないかしら?」
「えっ?」
思いもよらない言葉がユキさんから聞こえてきて、私は思わず聞き返してしまった。
どうして、こんな醤油味の化粧水を欲しがるのだろうか。
まさか、醤油ってそんなに手に入らないもの!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます