第37話


目の前には白く輝くご飯。

それに、玉ねぎと豆腐の味噌汁らしきものがある。【らしきもの】というのはこの世界でまだ味噌を見ていないからだ。

でも見た目は味噌汁に見える。

主食はお魚の煮付けだ。

なんの煮付けだろう?

切り身になっているので見た目からでは判断できない。

あとはサラダが用意されていた。ミニトマトがサラダには2つ添えられている。チラッとプーちゃんの方を見る。

プーちゃんの席にも私たちと同じ食事が用意されており、プーちゃんの目はミニトマトに釘付けだった。

トマト大好物だもんね、プーちゃん。


「あの、この煮付けはなんの魚ですか?」


「ほっほっ。わしが午前中に釣ってきた魚じゃ。」


「ああ、そう言えばこの村では魚が釣れるんでしたね。もらった釣竿まだ使っていませんが・・・何が釣れるんですか?」


どうやら魚は村長さんが自ら釣って来たらしい。このキャティーナ村は海に面した村であり、海で魚を釣ることができる。また、川もあるので川でも魚を釣ることができる。

私・・・川魚苦手なんだよなぁ。だから、なんの魚か知りたい。

川魚はちょっと癖があってあまり好きではないのだ。


「今日釣って来たのはサワラという魚じゃ。海で釣って来てのぉ。これは煮付けにするとうまいんじゃ。」


「サワラですか。美味しそうですね。」


サワラってどんな魚だったっけ?


「うむ。食べてみると良い。」


私は、用意されていたお箸を手に取ると、魚を一口口にいれた。


「・・・美味しい。」


ほどよい甘さに醤油の風味が絡み合っていてとても美味しい。身も柔らかく食べやすい。


「そうじゃろ。妻は料理上手なのじゃ。わしは幸せ者じゃ。ほっほっ。」


思わず箸が止まらなくなる。だから、隣にいたマリアが一口も用意された食事を食べなかったことにはしばらく気づかなかった。

ご飯も魚の煮付けも美味しい。

では、この味噌汁みたいなのはどうだろうか?

お椀を手にとって一口飲んでみる。


「これも美味しい・・・。」


こちらも優しい味がした。

そうして、やっぱり味噌汁だった。

村長さんの家では味噌も醤油も使っているようだ。朝市で仕入れたのだろうか?これは、どこで仕入れたのか後で確認しなくてはいけない。


「・・・マユ、どうやって食べるの?」


隣にいたマリアにツンツンとつつかれる。美味しい食事を食べるのに夢中でマリアのこと忘れていた。

でも、どうやって食べるの?とはどういうことだろうか。


「どうしたの?マリア?」


「これ、どうやって使っていいかわからないわ。」


そう言って、マリアはお箸を私に見せてきた。どうやらマリアはお箸の使い方がわからないらしい。

そう言えば、この世界に来てからお箸をみたことがなかったと今さら思い出す。

だって、お箸よりもお米の方が衝撃的だったから。

私はマリアにお箸の使い方を教えるが、やはり初めてお箸を使うとなってうまく物が摘まめない。

それを見ていたユキさんがそっと、フォークとナイフをマリアに差し出してきた。


「・・・すみません。うちではいつもお箸で食べていたので、この村の皆さんがお箸を使いなれていないことを失念していました。」


「いえ、ありがとうございます。」


マリアはユキさんからフォークとナイフを受けとると、ご飯を食べ始めた。

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