第88話


プーちゃんが気絶してしまって、尻尾が動かないのが不満なのか、マーニャたちはそれぞれ思い思いに毛繕いを始めてしまった。


少しはプーちゃんを心配してあげたりは、しないのかしら。


そう思いながら、プーちゃんの元に近づく。ツンツンとプーちゃんの頭をつついてみる。


「プーちゃん、大丈夫?」


「・・・うぅ~ん」


お、生きているようだ。

よかった。よかった。


ひょいっと縮んだプーちゃんを抱き上げる。

このままここに置いていくわけにもいかないし。

起こして歩かせたらまた、マーニャたちの餌食になりそうだし。


「プーちゃん伸びちゃったね」


「そうね。マーニャたち、もう少し手加減してあげてね?」


「にゃあ?」


「プーちゃんも喜んでいたよ?だって」


「えっ!?」


あんなに噛みつかれてもプーちゃん喜んでいたの?

・・・マゾ?


「マーニャ様たちに構って貰えて嬉しかったようよ。最初、相手にされていなかったから余計に嬉しかったみたい」


「そ・・・そうなんだ」


思わず手の中のプーちゃんを凝視する。

どうしようもないマゾかもしれない・・・この竜。

置いていってしまおうか・・・と、頭の中で悪魔が囁く。


「置いていってもいいんじゃない?マーニャ様たちもそう言っているわ。わざわざ連れていかなくてもいいんじゃないかって」


「えっ!?」


私の思考読まれてる!?

というか、皆同じ考えとかどうなのかしら・・・。


「でも、置いていくの可愛そうかも。あんなに張り切っていたし」


「そう?私、正直爬虫類って苦手だから持てないわよ?」


「ああ、うん。私、持っていくよ」


そうか。マリアは爬虫類苦手なんだ。

そうだよね。プーちゃんは竜だけど、こうやって縮んだ姿を見ればまんま爬虫類だもんね。

苦手な人も多いかも。


「そう?じゃあ先を急ぎましょう。マーニャ様たちは疲れていない?歩いていける?」


「「「にゃあ♪」」」


「そう。じゃあ、このまま歩いていきましょうね。マユ、マーニャ様がそのバスケットにプーちゃんいれていいって言っているわよ」


「そう?じゃあ、バスケットの中にいれちゃおう」


私は、マーニャたち用のバスケットにプーちゃんを入れた。

マーニャったらバスケットをプーちゃんに貸してもいいだなんて、本当はプーちゃんのこと心配しているんだね。

可愛いなぁ。その、「心配してないんだからねっ!」とか言いつつ、実は心配しているところが、とても可愛い。


「マーニャ、バスケット貸してくれてありがとう」


未だ意識がないプーちゃんに代わりに私がお礼を言う。


「にゃあ?」


なんで、私がお礼を言うの?って顔をしているけど、すぐに前を向いて歩き始めてしまった。





しばらく歩いていると、森の入り口が見えた。森の入り口にはちゃんと立て看板があった。

なんて親切なんだろう。


「マユ、森の中は結構広いから迷わないように気を付けてね」


「うん」


私たちは森に足を踏み入れた。

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