第8話 日本代表合宿

「私が日本代表監督の長嶋だ。ここには50人いるがアメリカの世界少年野球大会に行けるのは20人だけだ。今から、おまえたちを振るいにかける。」

 那覇は日本代表の合宿に来ていた。監督の長嶋が子供たちに挨拶を述べている。

「ふあ~。お家に帰りたい。」

 小学1年生の那覇はお泊りは初めてだったので慣れない生活に疲れていた。

(どいつもこいつも上級生ばかりだな。俺がねじ伏せてやる!)

 俺は日本代表の合宿に興奮して、自分をアピールすることしか考えていなかった。

「おい、見ろよ。チビがいるぞ。」

「なんで低学年がいるんだよ? 良くて小4が2、3人いるぐらいだろう。」

「まあ、お兄さんたちが可愛がってあげようぜ。へっへっへ。」

 野球が上手、というだけで、その人間が優しくて素敵な人格者とは限らない。基本的に野球が上手だと威張り散らしたり、いじめや暴力を振るったり、自分は偉いというアホが多い。プロ野球選手の顔を見るとヤンキー顔が多いのは、そのためだ。まあ、プロになって、お金持ちになれば勝ちである。

「よし、まずはピッチャーとバッターに分かれて競い合ってもらうトライアウト方式だ。」

 ピッチャーとバッターが1打席勝負をする。

「まずピッチャー、那覇。」

「え!? 僕!?」

 ピッチャーは那覇に決まった。

「バッター、おまえやってやれ。」

「はい! ラッキー!」

「お、いいな。おまえ子供とじゃん。」

「そういう俺たちも子供だろ。へっへっへ。ホームランを打ってアピールして、アメリカ行きは確実だな。」

 相手は性格の悪い野球が上手な上級生だった。

「どうして僕が最初なんだろう。嫌だな。」

 那覇は、自分がピッチャーの一番手に決まり恥ずかしさもあり嫌がっていた。

「こいよ! 坊や!」

 バッターがバッターボックスに入って構えた。

(はいはい。いきますよ。お偉い上級生さんよー!!!)

 既に那覇には俺が取り憑いて、日本代表合宿の初球を投げた。

「うわあああああー!?」

 那覇の投げた球は、キャッチャー、審判を吹き飛ばした。

「な、なんじゃ!? こりゃ!?」

 バッターは初めて見た那覇の球を理解できずに金縛りにかかり錯乱している。

「すいません。すいません。」

 マウンドで帽子を取って謝る那覇。

「すいません。すいません。悪いのは僕だけど、僕じゃないんですー!?」

 那覇は、なぜ自分がこんな剛速球を投げれるのか分からなかった。

「ビデオで見た以上の球の破壊力だな。あれならアメリカに勝てるかもしれない。」

 日本代表監督の長嶋監督は那覇をアメリカに連れていくことを決めた。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る