第15話 古文書を解き明かせ

「きみが冒険者をやっているのも、それと関係があるのかい?」


 リリアは頷いた。


「はい。古代王国の秘宝には、呪いの効果を打ち消せるものがあったと言います。私の呪いを解こうとするなら、そういった道具に頼るしか——」


 古代王国。

 それについて話を聞くと、リリアはこの世界の歴史を教えてくれた。

 この世界には昔、高度な魔法文明が栄えていたという。しかし、何かのきっかけで文明は瓦解。魔法の技術は失われ、秩序は崩壊し、暗黒時代が到来した。

 数百年もの混乱の時代が続いたが、やがて世界各地の諸勢力は、いくつかの国家へと糾合されていった。


 世界の各地には、魔法文明時代の遺跡が多数残されており、そこにはロストテクノロジーで作られた宝物が眠っているという。

 宝物の中には、神の奇跡をも凌ぐ力を持つものもある、とリリアは言った。

 目立つ遺跡は国の調査隊によって発掘されてしまったが、まだまだ手つかずのものも多いらしい。命知らずの冒険者たちは一攫千金を夢見て、日夜まだ見ぬ遺跡を探索しているのだそうだ。


「じゃあ俺はリリアを手伝って、遺跡を探したり、中の探索を手伝えばいいってことだな」


 本当は〈コピー&ペースト〉の力で特殊スキルを上書きして消してやりたいところだが、いまの俺の力では無理だ。スキルレベルを上げなくちゃいけない。

 どの方法で呪いを解くにしろ、リリアの冒険を手伝うのはアリだと思った。


 しかし、問題もある。


「遺跡を探すのが厄介そうだな。簡単に見つかるものなのか?」


 目立つ遺跡はすでにあらかた発掘されているはずだ。めぼしい宝物が眠っているとするなら、非常に危険か、もしくは未発見の遺跡だろう。

 俺の問いに、リリアは首を横に振った。


「この街の周辺には、多くの遺跡が眠っていると言われています。しかし、その入り口を探すのは大変です。手当たり次第に掘ってもらちがあかないので、古文書や伝承を調べて当たりを付けることが多いですね」


「古文書、か……」


「ただ、古文書の文字を読める人は、ものすごく少ないんです。この街でも、まともに読めるのは一人だけですね。年配の方なので、目を悪くされていて、あまり字を読めなくなっています。ほかにも読める方はわずかにいますが、部分的な解読しかできません」


 リリアが表情を曇らせたが、俺はその話を聞いて、天啓を受けた気分だった。


「リリア、そのご老人を紹介してくれ。俺に考えがある」


☆ ☆ ☆


 話に一区切りついたころには、もういい時間になっていたので、俺たちはそれぞれの部屋で休むことになった。初日から根を詰めすぎても良いことはないからな。


 寝る前に、ふと気になったとがあった。


「おい、謎の声。起きてるか」


『何かご用でしょうか』


 何もない空間に語りかけると、脳内に例の声が響いた。


『なお、私に話しかけるときは声を出す必要はありません。心の中で念じてもらえば反応します』


(こうか?)


『はい。改めておたずねします。何かご用でしょうか?』


(俺のステータスは表示できるか?)


了解コピー。張本エイジのステータスを表示します』


**************************

対象=張本エイジ


▽基礎能力値

器用度=12 敏捷度=14

知力=20 筋力=13

HP=18/18 MP=22/22


▽基本スキル

日本語=7 英語=3

中国語=3 言語学知識=2


▽特殊スキル

コピー&ペースト=2 女神の加護(アルザード)=10


▽ペースト用スロット(総スロット数=2 空きスロット=0)

ハリア王国式剣術=7 パルネリア共通語=5


※スキル【コピー&ペースト】のレベルが足りないため、補正能力値、限界能力値、中級スキル、上級スキルの表示、およびコピーはできません。


※〈コピー&ペースト〉の累積経験値は121です。次のレベルに達するまでの経験値は79です。

**************************


「お、出た出た。予想はしていたが、身体能力はリリアよりだいぶ低いな……」


 頭の中に展開されたステータス画面を見て、俺はため息をついた。

 スキルも大して役立ちそうにないが、〈女神の加護(アルザード)〉というのはちょっと気になる。効果は分からないが、明らかにレアリティが高そうだ。しかもスキルレベルが非常に高い。

 いざとなれば、このスキルをリリアに上書きコピーして〈夭折の呪い〉だけでも解除しておきたいところだな——

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