53
「…いないです。」
どう答えるのが正解かわからなくて、私は一瞬の逡巡ののち正直に答えた。
ここは嘘でも“いる”と言った方がよかったのだろうか。
だけど胡桃さんはホッとした表情をする。
「そう、よかった。」
何がよかったんでしょう?
そんなことを聞いてどうするの?
何だか惨めだ…。
次の言葉が紡げない私をよそに、胡桃さんは真剣な面持ちで言った。
「俺と付き合ってください。」
本日二度目の、息が止まる事案だ。
一瞬理解ができなかった。
というか、思考が停止した。
待って待って待って!
嬉しいのに悲しいって、初めての感情だ。
素直に、嬉しい。
嬉しいのに。
でも胡桃さん、あずささんがいるじゃない?
奥さんなんでしょう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます