03

だからか、最近はもうどうでもいいやーなんて諦めの境地に至っちゃって。

背が高いことがコンプレックスだったことも、別にどうでもよくなってしまった。


克服したのかどうなのか、まあ、大概は流せるようになったかな。

私も大人になったもんだ。


でも、心のどこかでは燻ってる感じが否めないけれど。



薬の入ったトレーを持ってカウンターに立つ。


「胡桃さーん、胡桃洋平さーん、2番カウンターへどうぞー。」


名前を呼んで改めて処方箋を見る。

“胡桃”って珍しい名字。

そのまま“くるみ”って読むんだなぁなんて思っていると、カウンター毎に仕切られたパーティションからのそりと顔を出す男性。


まさかの私より背の高い男の人で、思わずまじまじと見てしまう。

スリーピースのスーツを着こなして髪型もカチッと決まっている。

まるで病人に見えないその風貌。


「胡桃洋平さんですか?」

「はい。」


名前を確認すると、かすれた声で返事があった。

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