第26話 王都に帰ってきました。
「さて、じゃあ帰りましょうかね」
御影は転移魔法を展開しようとしていた。
「おっと。その前に、また、困った事が有れば王都に居る俺の所に来い」
御影はレイシャに一つの魔石を手渡した。
「これは?」
「俺の魔力を最大限にぶち込んだ魔石だ。これに王都の景色を思い浮かべながら少し魔力を込めると一度だけ転移魔法が使える」
「え!? そんな高価なものを頂いていいのですか?」
「まぁ、王都にしか転移出来ないし、また、何かあった時にすぐ来れた方がいいだろう」
「はい、では、ありがたく頂きます」
そう言って魔石を大事そうに懐へとしまった。
「それじゃあ、俺たちは帰るよ」
「本当にありがとうございました」
レイシャとエマが頭を下げた。
「今度は普通にメイド喫茶にもおいでよ」
クラリスが微笑む。
「「はい、是非!!」」
「またな」
『転移』
御影とクラリスは一瞬にして王都まで転移し、屋敷の中へと入る。
「ただいまー!」
「おかえりなさいませ旦那様」
「おかえり。意外と早かったわね」
ロイクと杏が出迎えてくれた。
御影としては一週間ほどで帰れたらいいと踏んでいたが、実際は一日くらいで片付いた。
「お食事の準備ができております」
御影は食事しながら、事の顛末を皆に話した。
「という訳で、もう、ふざけた儀式は行われないと思う。もし、行われそうになっても対抗策は打っておいた」
「さすがですわね。わずか一日足らずでそこまでの事をしてくるとは」
杏が驚きながら言った。
「うん、まあ、今回はちょっとだけ卑怯な手を使ったかもだけどね」
解析の魔法は本来、物体の構造などを把握するために使う魔法だが、御影は魔法式を組み替えて、相手の魔法式を読み取り、その効果を妨害する仕様になっている。
これは我ながらチートだと感じる。
「とりあえず、俺はこれから王様の所に行って、報告してくる。夕方には戻ると思うけど」
「かしこまりました」
御影は昼食を食べ終わると、すぐに屋敷を出て、王宮に向かった。
王宮の前には門番が立っていたが、御影は顔パスである。
いつものように応接間に通され、数分待っていると、王様、公爵様、宰相さんが入ってきた。
「おう、もう戻ってきたのか。いやあ、いつもながらお前さんが本気になると怖いな」
陛下は笑っている。
「とりあえず、儀式はもうしないように脅し……頼んできました」
「今、脅したと言わなかったか?」
「いや、そりゃまあ、半分くらいは脅したかもしれませんが」
半分どころではない。あれは完全なる脅しだ。
「それで、どうだったのだ?」
「金輪際、儀式は行わないように言い聞かせてきました。もし、何かあった時の対抗策も準備済みです」
「相変わらず根回しが早いことで」
公爵様も苦笑いだった。
「これで、私と陛下の懸念も消えたわけです。これで、メイドカフェ経営に戻れますわ」
「それなんだがな、明日、お前さん所のメイドカフェ、貸し切りにしてくれんか?」
「それは構いませんが、どうしてです?」
「ワシらが行く」
「え、」
御影は一瞬驚いたが、王様たちが前々から来たそうにしていたのは何となく知っていた。
「ちゃんと料金もらいますからね?」
「もちろんだとも」
こうして王様たちによるメイドカフェの貸し切りが決まった。
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