第40話 子孫~芽生え5

 何事もなく、2週間ほどの未来の滞在期間が過ぎ、未来は本国へ帰った。夏休みももうすぐ終わる。9月から、遥貴は小学生最後の学年になる。

 8月下旬のある日、未来のスマートフォンに健斗から電話がかかってきた。電話が来るのは珍しい。明け方の5時だった。時差があるので、健斗のいるイギリスでは夜の8時だ。まだ寝ていた未来が何とか電話に出ると、切羽詰まった健斗の声が耳を貫いた。

「未来、大変だ!遥貴がいなくなった!どうしよう、誘拐されたのだろうか?ああ、一人にしなけりゃよかった。家から近い友達の所に行くからと、自転車で出かけたんだよ。」

「健斗、落ち着け。いなくなったって、どういうことだ?友達の家には確認したのか?」

未来が問うと、健斗は泣きそうな声で説明した。

「友達の家からは夕方5時過ぎに出たそうなんだ。6時になっても帰ってこないから連絡した。それから探しに出かけたが、道の途中に遥貴の自転車が止めてあったんだ。そこで連れ去られたとしか考えられない!」

「それで、警察には連絡したのか?」

「したよ。今も探してくれている。だが、もしかしたら、もうそっちに向かっているんじゃないかと思って。」

未来は、やっと状況が飲み込めて来た。きっとそうだ。遥貴は我が国の誰かに連れ去られ、おそらく飛行機で我が国に向かっているに違いない。まだしばらくは到着しないだろうから、これから着陸する飛行機を当たれば、あるいは探し当てることができるかもしれない。

「分かった。俺がこっちで探してみる。連絡を待っていろ!」

そう言って、未来は電話を切った。こうしちゃいられない。未来はすぐに飛び起きて支度をし、家を飛び出した。

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