評価の身勝手

姫が、翡翠石を砕き始めた当初 ――


城の者達は、

「大切な石を」

「わざわざ砕いてまで」

「絵にするなんて、勿体ない」

「宝石ぞ」

「正気の沙汰とは思えない」

「狂気めいた」

「気が触れた」


などと騒いだ。


が、翡翠を用いて絵を描いている事実コトが、

城内から、城外。


やがて、藩内から、藩外へと、伝え広まり。


翡翠絵の評価と、姫への評価が高まり始める、

と。あれほど確かに、姫を批判していた者達は、

急に、言った事が反転し、姫を褒め出した。

中には、

「初めっから、風情があると、感じ入っておりました」

などと、冗談か本気か分からない事を、平然と断言する者も現れた。


手のひらを返す。

とは、このことか……、

姫は身に沁みて学んだ。

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