本当のところ、自分は何が好きなのか?

旅商人は、

「廻りの者からは、絵具屋だとか、

 画材屋だとか言われておりますが……、正しくは、

 岩絵具いわえのぐ屋……、といったところでしょうか」

と、微笑んだ。


「いわ、えのぐ?」

と、訊く姫に対し、

幼子にも分かりやすいよう、簡潔丁寧に説明してくれた。


元々、旅商人は。絵を描いていたようで。

絵の表現手法や画法を、アレコレ試しているうちに、

寄り道なのか、迷子になったのか。


模索する中。


様々な種類の絵具を目にし。日々、触れた。


もしかしたら自分は……

じつは、絵よりも、絵具の方が好きなのではないか?

特に、こう。

岩絵具に、惹かれているのではないか?

と、うっすら気付き始めた。のだという。

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