対の灯り

目を細めると灯りの筋がくっきりと


目を広げると灯りの筋はぼやけてしまう


そんなものをわたしは見ようとしていました



所々にある影は、わたしの人生の


前半にあった陰なのでしょう


まるでそう思えなくもない


しかし、今もまだ影はその陰を伸ばして


わたしを捕まえようとしているのです


最良の伴侶と最良の同志を得たわたしに


すがりついてくる陰なのです。



幾多の陰は、わたしを作り上げ、


今を導いたのだから


捨てるのは偲びない


忘れるのは、もっと切ないようで


あの頃のわたしの何かを捨ててしまうようなのです


それらの陰はわたしの純粋さから滲み出たものでした


そう、今ならばわかるのです


しかしながら、


純粋さを持ってこの世を渡っていくのは


あの頃の私にはひどく難しかった


捨てて忘れて、唾棄したいような過去も


確かにある


しかししかしながら、


その陰さえもひっくるめて愛してくれる人が


今いるのです


こう言うのです


「あの子はあなたのきれいなところしか知らないから。あなたは複雑で面倒でそれでいて純粋さを持ち合わせた人よ。」


私は知るのです


はっと悟るのです


陰ゆえに私有り


この世の理


影あるが故に光あり。


あらゆるものがそれそのものだけでは成立しないこと


まばゆいほどのひかりのみなら、


それはもう、光ではないのです。


そこしれぬようなやみのみならば、


それはもう、闇ではないのです。


あなたという灯りあるがゆえに


わたしという陰が


あるのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る