第89話 結婚式当日…主役は俺たちだよな?1

 夜が開けきらない前に俺は目を覚ました。

 と、とうとうこの日がやってきた!!

 愛するクラウディアとの結婚式が!!


「うっ!うぐっ!!ようやく!ようやくだぞ!」

 俺がベッドの中で感動してグスグス泣いてると毛布が剥ぎ取られて


「殿下ー!おっはようございまーす!!さあさあご準備をー!!」

 とフェリクスが起こしにきた。


「え…早くね?まだ暗いけど…」


「そうですよ?クラウディア様なんて2時間前から起きてますよ!結婚式を舐めてもらっちゃ困ります!これは戦場に向かうのと同じ心構えでいないと!」

 とフェリクスは言う。ええ!?何言ってんのこいつ!?

 すると使用人や男の従者がぞろぞろと入室し、俺の身支度をする為にまずは風呂やら髪やらをセットされる。


「あっ!やめろバカ!どこ触ってんだこら!お前っ!何頰染めてんだバカッ!気持ち悪いなっ!」

 数分後ぐったりして黒に青の模様のついた隊服にジャラリと奇跡の王子の勲章みたいなのも付けられた。

 髪の毛のセットも前髪をかき上げて額が見えていつもとちょっと違う感じのイケメンになる。

 鏡を覗いてみるとおおっ!俺イケメンだったな!そういや!って自分で思い出したくらいだ。


 フェリクスは軽い軽食を持ってきて


「殿下!ちょっと忙しくなるからちょこちょこ食べながら移動しますよ!さあとりあえずお腹減ってないだろうけど無理矢理食べて!」

 と言われて仕方なく全然腹減ってねぇ…こんな夜中だし、と思いつつもサンドイッチとかモグモグする。


「あ、この後国王陛下と王妃様やご家族にご挨拶なさってから大聖堂へ向かいます。大司教や招待客や国の重鎮とご挨拶。その後少し花嫁さんとちょっと対面します。ここで鼻血出さないようにご注意を!!殿下の介添え人は一応ローマン様です。待機室で最後のチェック。大聖堂で挙式。その後王都のパレード。大体正午頃。最後に王宮へ戻ってきてバルコニーで国民に手を振り花嫁ともう一回祝福のキス。その後宴会会場に移動。

 とりあえず挨拶したりされたりご飯食べれたらモソモソと隙を見て。ようやく夜になり招待客も解散しとりあえず風呂そんで初夜…新婚旅行休暇……」

 とベラベラとスケジュールを聞かされる。

 それを聞いてとりあえず


「肩凝るな…」

 って言うとフェリクスは


「あ、常に笑顔でね、今日はもう笑顔しかしちゃいけない日ですからね?絶対に嫌な顔禁止ですからね?表情筋笑顔しかしないでくださいね?」


「はい…」


「殿下…言ってる側から眉下がってます」


 それから俺は父上と母上に挨拶しに行った。ユリウスくんやエリーゼちゃんも来ていた。

 父上相変わらず美形だな…あんまり喋ったことなかったかもな。お土産とか色々くれたりするけど。俺は前世で早くに父親を亡くして弟達と女手一つで母親に育てられてきたから今一父親との距離感が未だに判らない。しかも国王陛下だしな、気軽に話しかけていいもんかと。いやでも父親なんだよな。


 アルトゥル陛下は俺に

「ジーク…ついにお前も成人し結婚か…次は国王だな。感慨深い。昔のお前は性格が悪かったが…私のせいだったかもな…。すまぬ。お前に構ってやれない日が続いてな…。あんな醜い姿や性格にしてしまって…。いやお菓子は大量に送りつけてくるバカ親父のせいだったが」


「んー…仕方ないですが俺が生まれた時は嬉しかった?」

 と聞くと


「当たり前だろう?お前が産まれた日…どんなに嬉しくて泣いたことか!可愛くて甘やかしすぎておかしくなったよ…。まさか奇跡の力に目覚めるとは思っていなかったが…。本当に立派になってくれた…」

 と陛下は俺を抱きしめた。あの豚王子もちゃんと愛されてたじゃんかよ。良かったな。性格は悪かったが。国王陛下が忙しくて構ってやれなくて拗ねた子供のまま成長していったのだろうか。豚になったのは自業自得だろうが。


「父上…キャッチボールしましょう今度…」


「何だそれは?」

 と不思議がる父親に


「バスケットボールでもいいです!」

 と笑うと


「おお!あれか!お前が考えた遊びだな?あれの試合とやらを見たが中々に楽しそうであったな!国民にも広がっているし選手とやらもできて各国にもバスケットボールが広がっていったな!よし、私のチームとお前のチームで試合しよう!」


「ふふ、負けませんよ父上!」

 と俺と父上は握手して睨み合った。


「いえ、試合する約束はいいですけど結婚式ですから今日…」

 とユリウスくんが冷静に突っ込んだ。


「ユリウスよ…お前も大人になったと言うか元々大人みたいにしっかりしていて父は嬉しいぞ」

 とユリウスくんの頭を撫でるとユリウスくんは


「はあ、どうも…戦争もありましたしいつまでも子供のままではいれないと思いまして」


「「いや子供じゃん。まだ子供じゃん」」

 と父上と被った。


「ふふふ、ジークが太って性格が悪かった時は反抗期だったのですよ…多めに見てあげましょう?今では奇跡の王子として国も潤いあの温泉とやらもできて戦争があったなんて嘘みたいだわ!」

 と母上のカタリーナ王妃が言う。

 すると父上が


「うむ!ジーク!私はあの温泉と言うのが非常に気に入った!!肩こりや腰痛にもいいし!肌艶も良くなるし!何より!あの天然の岩をあしらった設計!あれが中々いいぞ!素晴らしい!お前の発想もまさに奇跡だな!あんなのは誰も思いつかぬ!」

 と大変褒められた。前世知識でさーせん。


「そうなの!すっかりこの人は温泉の虜で忙しくとも急用以外は毎日入っているのよ?」


「ええ?そんなに!?」


「うむ!カタリーナとも何歳か若返ったようにはしゃいでしまってなぁ…もしかしたらもう1人出来たりしてなぁ!」


「えっ!!まじですか!」

 流石に高齢出産になるからー!!

 さ、流石恋愛ジャンル世界だ!!

 ラブラブな両親で嬉しいけど…サ●エさんみたいに年齢離れ過ぎる兄弟になるな。いや、結構ユリウスくん達とも離れてるけどね!


 俺が産まれてすぐ戦争あったからなぁ…。平和になった今になってイチャイャしたい気持ちも判るし、この国はコンちゃんがいるから恋愛率も高く、そっち系の恋愛アイテムみたいなのもバンバン売れてきてるから国がもはや儲かりまくりだし観光客は多いしな。


「お父様お母様!今日の主役はジークお兄様ですのよ!ご自分達のことはいいから!」

 とエリーゼちゃんが言うと母上たちは反省して


「とりあえずジークよ…クラウディア嬢を見てぶっ倒れるんじゃないよ?私も若い頃カタリーナのウェディングドレス姿を見て気絶しかけたことがあるから…気を引き締めるんだぞ?」


「は、はい!」

 おい、王家の奴等皆花嫁見てぶっ倒れる寸前かよ!花嫁の威力やっぱり凄えんだな!するとフェリクスが横から言った。


「言ったでしょ殿下…戦いはもう始まっているんですよ…どちらが倒れるか倒れないかです!」


「いや、何の戦いだよ!!結婚すんだよ!!これから!」

 と突っ込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る