第67話 襲い来るダモン軍勢

「どういうことかしら?貴方第二公子って…」

 とカミルと母親とティモの前で言うと。


「黙っていてすみません…。僕はエルネスタ公国の第二公子カミル・リーンハルトと言います。弟は第三公子のティモ・リーンハルトに母のフロレンティーナ公妃です…。僕は父親似でこんな顔…公王エッカルトは普通の顔なので…」

 とカミルが申し訳なさそうに言う。


「エッカルト様と第一公子のベルトホルトが公都に現れたダモンの軍勢に完全に操られてしまい私共は秘密の抜け穴から公都を抜け出しました。お付きの者や街の者も次々とダモンに操られたり殺されたりして私達は命からがらこの村まで逃げてきたのです」

 と公妃様が言う。


「僕たちは村から少し離れたこちらの隠れ家で対策を練ることにしました…。食糧も森で茸などを採ってこなければならないため僕が調達していましたが魔物に襲われて…」


「そこへ私が通りかかったのね?」


「はい…」

 とカミルは言った。


「この国を捨てるわけにも行かずどうやってどこの国に助けを求めればいいのか…話し合っている最中です。うちは小国ですし、元々はシゼリア王国と言う大きな国の一部でしたが数年前内乱でシゼリア王国は滅び、残った今の公爵様がこのエルネスタ公国を作ったのです」


「……そうだったの…」


「しかし…ダモン達はエルネスタ公国全土をやがて支配するでしょう…この村もいつ見つかるか…」

 公妃様が心痛な面持ちで言う。

 今助けを求めるのならブッシュバウムだろうか。私が転移魔法で知らせに行こうか…。それとも私単体でどうにかなるだろうか?



 カミルの怪我は軽く1週間ほどで治った。

「…助けてくれた御礼にダモンを倒しましょうか?」

 と私は一応聞いてみた。


「え…?何言ってるんです?無理です!いくらアスカ様が強くても…ダモンはかなり強力な洗脳力を持っているし公都の人間…父や兄まで操られているんです!それにダモンは一匹じゃなく何体もいて…騎士団もなす術はなく死んだ者も多いんです!」

 でも私ならチートだし何とかなるかもしれない。しかし…操られた人々を浄化できるのは…ジークヴァルトしか…。


「奇跡の王子のことを知っているかしら?知り合いなのよ…もしも公国の人々が操られているなら浄化で治すことができるはずだわ…新月か満月の日にね…」


「奇跡の王子…伝承で聞いたあの?まさか…いるのですか?この時代に!?」


「ええ…エルネスタ公国までは噂は届いていないようね…」

 と言うとカミルは


「それが本当ならその王子様のお力をお借り出来れば…しかし…次の新月まで後8日もありますがエルネスタとブッシュバウムの距離は8日ではとても移動できる距離では…」


「大丈夫よ、私の転移魔法があるから一瞬で連れて来れるわ!それまでこの村をとりあえず死守した方がいいわね…」

 と私は窓を開けて飛んでくる黒い物体の群れを見つめた。


「あ…あれは!ダモンの軍勢!」

 カミルは青ざめた。


「恐らく…私の魔力を見つけたのね…迷惑なことだわ!ちょっと倒してくるわ!」


「え?ちょっと倒すって?」

 カミルが言い終わる前に私は転移魔法でダモンの軍勢の前に一瞬で浮かんだ。


「何だあ?嬢ちゃん…?この魔力はお前か?」


「そうよ」

 ダモンが喋った!

 知能があるなんて…相当な進化をしてるわ。


「人間が空飛べるなんてよぉ…まるで俺らみたいだな」

 とリーダーらしき体躯のいい薄紫色をしたダモンが喋る。

 ダモンの軍勢は30か…。これなら問題ないわね。私はスッと手をかざして一斉爆破魔法を喰らわせた!!


「ぎゃあああ!!」

 何匹かのダモンが羽を失い地面にドチャッと落ちて死ぬ。爆風に紛れてさっきのダモンともう2匹のダモンが私の前に現れる。リーダーダモンと一匹が私に襲い掛かろうとしていて私はとっさに雷撃魔法で2匹を焼く!


「ぎいいいいっ!!」

 しかしリーダーダモンはそれでも向かってきて私の腕を千切る!


「くっ!!」

 痛い…!当たり前だけど。


「ん?何だ?砂になったぞ?」

 リーダーダモンが千切った腕が砂になったのをを見て驚き私の腕がまた生えてくるのをギョッとして見た!


「何?お前なんだ?人間か?」


「ふふふ…魔女よ…」


「マジョ?知らんな…」

 私はまた手をかざすが


「おい、いいのか?お前を心配して見に来た人間が外に出てきたぞ!」


「!?」

 下を見るとさっき取り逃した1匹がカミルを捕まえて痛めつけていた!


「ひひひ!よそ見とは!な!」


 ゴッ!


 とリーダーダモンの一撃が私の腹に風穴を開けて私は一回死んで空から真っ逆さまに落ちた。

 私は地面に落ちるギリギリで目を覚ましてカミルを痛めつけているダモンの心臓を爆破する魔法を使いそいつが倒れたのを見て地面にグシャと私はまた死んだ。


「なんなんだあのマジョとか言うのは…しかし我が軍勢がやられた…これは報告にいかないとな!また準備を整えてくるか…」

 とダモンのリーダーは村と反対方向に飛び去った。


 *

「うう…そ…そんな…アスカ…様!」

 目の前でたった1人でダモンの群れと戦い、何故か自分を苦しめていたダモンまで死んだ。そして彼女は犠牲になった。


「ああ…あ…」

 涙が伝う。

 せめて埋めてあげなきゃとなんとか泣き止み痛みを堪えて立ち上がろうとして…彼女の骸がむくりと起き上がり骨や肉が再生されていくのに僕は驚きで吐きそうになった!!


 そしてようやく元の美しい美少女に戻ったところで僕は痛みと安堵で気を失ってしまった。


 *


「カミル!!」

 私は倒れたカミルに近寄る!

 酷い怪我だ!いくつか折れてるかも!よく生きてたわ!でも処置が必要だ!今すぐに転移魔法でジークヴァルトの所に行かないと!!


「お兄ちゃま!!」


「カミル!!」

 家から公妃様とティモ公子が飛び出してきた!

 そうだ!彼等をこのままにできない!またダモンが来るだろう!


「公妃様!私は奇跡の王子の元にカミルを連れて行き治療を施しに行きます!その間この村にまたダモン軍勢が押し寄せる可能性があります!」


「ええ…そうね、私達も出来るだけ遠くに逃げ延びます!」


「いえ!その必要はありません!」

 と私は手をかざして合金属魔法でこの村をドーム状に覆う魔法を使った!


「こっ…これは!?」


「とりあえず外からの侵入を防ぐ魔法です!物凄く硬い魔法で壊されても後からまたすぐに修復し直すものをかけました!とりあえずカミル公子様の治癒にブッシュバウムまで転移致します!そして治癒が完了し準備ができましたら王子達と共にこちらへまた転移致します!」


「治癒って…まさか伝承の奇跡の王子が…ブッシュバウムにいると言うの?」


「そうです!」


「判りましたアスカ様…カミルを頼みます!私は村長にこの事態を知らせましょう!」


「すぐに戻ります!!

 と私は転移魔法を使い、ジークヴァルトの場所まで転移した!


 *

 カミルを連れてジークヴァルトたちの前に転移して私は叫んだ!


「ジークヴァルト!!この人を助けて!!」

 と…。

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