第55話 お急ぎですわ
兄上がブッシュバウムに帰ってから国内は目まぐるしく変わった。
兄上は逃亡したクラウディアお姉様を何故か牢屋に入れようと国中を探させているし、アスカ、アスカとヘルマ帝国の聖女に夢中になっている。
また元の豚王子だった頃の兄上に戻られたのかな?と思ったけどどうもそれも違うようだ。一体兄上はどうしてしまわれたのか…。
僕はローマン兄様を問いただすことにした。
「どう言うことです!?ローマン兄様!あれは何なのです?それにさっきからいるその綺麗な方は誰でしょうか?」
とローマン兄様にべったりの美人をチラリと見る。
「我はドラグーのハクリュウなり!ハクちゃんで良いぞ?あのとち狂った王子の弟王子か。我とローマンは伴侶となるので婚姻しにきたぞ」
と言った!
んん?ドラグー!?こっ!この方が!?
「しっ!失礼を!まさか神獣ドラグー様とは!ですが、何故ローマン兄様と婚姻を?いや、そもそも神獣と人間が結婚など前代未聞なのですが!!」
するとローマン兄様は
「ふはーん!ユリウスううう!よくぞまともな反応してくれたーー!!」
と泣いた。
「ともかく我はローマンの子を産む。だから公爵夫人とやらになるのじゃ!この国に我が来たからにはブッシュバウムは富に溢れて繁栄するであろう!子を成せばもっと豊かになろう!」
「なんですって!?それは本当ですか!?…だからアルデン国は豊かだったのか!!それは是非ローマン兄様と結婚なさってください!!」
「あ…やっぱり…俺の意思無視だった…いやもういいけどね?」
ローマン兄様は少し赤くなりつつも状況を説明した。
「何と…そんなことが!?」
ローマン兄様から話を聞き事態を把握した。
「そうなんだよ…流石に俺もああなったジークを止めることは出来なかった…クラウディアちゃんはヘンリックと逃げちゃって行方不明。んで報告に寄るとトラウトナー伯爵邸が丸ごと消えたそうだ…ハクによるとコンチャーン様の力で隠されたらしいよ…」
とコソっとローマン兄様が言う。
「ハクチャーン様…貴方のお力でクラウディアお姉様のところに行けますか?」
「ローマンとイチャイチャして我の力が高まったらあの空間にも入れようぞ」
「なるほど!ではローマン兄様イチャイチャしてきてください!ほら早く!!」
「ぶっほ!!おいユリウスくぅーん!!今真っ昼間なんだけど!?」
「急いでいるので兄上にバレないよう30分程度でお願いします!!」
「そうなのです!ジークお兄様は私が引き留めておきますのでユリウス兄様とローマン兄様にハクチャーン様はコンチャーン様の元へ!」
とエリーゼが言った。
「エリーゼ…お前っ!」
「私もこの一大事に黙っておれません!クラウディアお姉様じゃないと嫌です!見たこともないヘルマの聖女なんてお断りですわ!クラウディアお姉様があまりにも可哀想なのです!」
ふにゃりと泣き出しそうなのを堪えてエリーゼが言う。
「ローマン兄様!とにかく急いで!!」
「うむ!ローマン行くぞ!お前の部屋へ!!」
と引きづらていく。
「あああ…いやあああああ!!せめて夜がよかった!!」
と嘆きつつ30分で戻り、ハクチャーン様はツヤツヤし、ローマン兄様は…赤くなり白目だった。
その時廊下からジーク兄上が駆けてきた!
「おまえら!何してんだ!?おいっ!」
「待ってお兄様!私とお人形遊びを!」
「ちっ!早く!ハクチャーン様!!」
「うむ!我に掴まるのだ!」
手を伸ばしてローマン兄様と僕と側にいたローゼの手を取り僕達は消えた!
「畜生!!ハクちゃんめ!クラウディアはきっとコンちゃんのところか!?一体どこに隠れやがった!!卑怯者たちめっ!!」
「…ジークお兄様…」
エリーゼは兄の様変わりに震えた。
*
目が覚めるとコンチャーン様の屋敷にハクチャーン様とローマン様にユリウス王子にローゼちゃんが来ていた!
「邪魔をするぞ、ビャッコ!」
「ハクリュウか!まぁ緊急事態だし訪問を許そう!そっちはどうなって…ふむ…なるほど…な」
「え?もう何があったのかわかるのですか?」
「まぁ心が読めるからな…我等神獣は」
私はジークヴァルト様のことを聞こうとした…。
「あの…」
「ジークヴァルトなら王宮だ。明日香とやらの部屋を用意してもてなす準備中じゃな!お前を探すのにもイライラしておった。…明日香は今日の夕方には着こうぞ!今日は新月だ!」
「!!そんなに時間が!急がねば!」
「そうじゃ!奴等は魔法とやらが使える!空から移動してくるぞ!」
それにユリウス王子とローマン様は
「「ひっ!」」
と怯えた!
「時間がない!ハクリュウよ!クラウディアを乗せ王宮まで行け!…あっ…でも宝珠作って認識阻害を組み込まないと…」
とコンチャーン様が言う。
「もう我が宝珠を用意しといた!お前の汚い宝珠など使うか!ビャッコ!お前はそこの怪力娘と聖女の元へ行き時間稼ぎをしろ!」
「我に命令するな!ハクリュウ!まぁ良い!同じ神獣同士で揉めても仕方ない!クラウディアは任せた!王子に気をつけよ!あれは我等の気配を察知できる!」
そして私達が空間から出ると
ハクチャーン様は服を脱ぎ出した。
「おおい!ハク!何やってんだ!つか見てんじゃないよ!特にコンチャーン様あ!」
「良いではないか減るものでもなし」
「くっ!減るわ!!」
「ローマン時間がない!とにかく掴まれ!クラウディアも!」
とハクチャーン様がドラグー化しその背にポイっとローマン様と私を乗せた。
「クラウディアお姉様!トラウトナー伯爵邸にもいずれ兵士が来ますから僕が何とか引き留めます!こちらのことは心配しないで!ジーク兄上をよろしくお願いします!」
ユリウス王子がそう叫んだ。
「判りましたわ!必ず正気に戻します!」
ハクチャーン様にしがみつきながら言うとレーナ嬢が
「クラウディア様!こっちは私が引き受けます!しかし相手はチート持ち!ザスキアの加護国のブッシュバウムに足を踏み入れたら聖女は恐らくすぐに転移魔法で王子の元に行くはず!あいつのチートはズルイからね!」
「解りましたわ!レーナ嬢もコンチャーン様もお気を付けて!!」
と私はジークヴァルト様のいる王宮へと急いだ!!
しばらく飛びようやく王都につくと兵士や騎士団があちらこちらに配備されていたが認識阻害のおかげで私達に気付かない!良かった!
*
クラウディア様たちを見送った後…
「さて!行くよ!エロ狐!ユリウス王子!申し訳ありません!私のトラウトナー伯爵邸を任せていただきまして!」
「レーナ嬢!礼はいいから早く!」
とユリウス王子は言う。
「はっ!」
私とコンは消えて向かっている聖女の空の軍団の前に出た!コンが私に一時的だが力を貸して拳から炎を放てる能力を貸してくれた。
空にいた聖女はチラリと地面の私達を見て軍団と共に降りてきた。
「迎えってわけじゃなさそうね…」
本で見たその無表情の女…転移者明日香が興味無さそうに喋る。後ろの魔法兵士軍団が構えた。
「たった二人で何ができるんだ?」
「しかも女となんか耳と尻尾生えてる奴いる!」
と兵士が笑っていた。
舐められたものだよ!
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