第21話 本ヒロインの化けの皮

「まぁ…ドラグーやホワコンを倒せば一気にレベルが上がるというのですか?」

 クラウディアがベッドの隅に落ちていたという水色の髪の毛を凝視しながら言った。


「そう言ってたね。でも神獣なんだろ?そんなの無理だからやっぱり当分は湖で祈りを捧げようぜ」

 と俺はクラウディアやヘンリック、フェリクスに言う。


「しかし…戦力を整えて尚且つ交渉でいけるのだとしたら楽かもしれませんわ」


「いやいや神獣だよ?んなあっさり交渉で宝珠ポーンとくれるわけないじゃん!どんな親切な神獣だよ!あれだよ…この手の輩は小難しーんだよ?(人間よ、我の宝珠が欲しいとな?ならば試練に打ち勝ってみよー!)とか言ってくるに決まってんぜ!」

 と俺が言うと


「でも女神ザスキア様は何かお土産を用意しろとおっしゃられたはずですわ…それが何か判れば…」


「ホワコンは白狐…みたいだし油揚げとかあればなぁ…でもあるわけないだろうなぁ油揚げとか稲荷寿司とか」


「なんですか?殿下それは?」


「え?いやなんでもない…」

 しかしホワコンて言うくらいだし白狐と言っても和風狐じゃなかったら油揚げ作戦もダメだろう。この世界西洋だし。


 ちょっと待て?…俺はレーナ嬢を思い出した。

 あいつなら何か判るんじゃないか?同じ転生者だとしても俺よりこの世界のことや俺を攻略しようとしてることとかあるし。


「うーん…フェリクス…レーナ嬢を呼べるか?」

 それにクラウディアが反応した。


「なっ!ジークヴァルト様!?あの女に何の御用が?私の戦力だけでは不安だからですか??」


「いや、そうじゃない。確かに戦力は欲しいがそれ以外にちょっと確かめたいことがあってさ…。できればレーナ嬢と二人で話したい…もちろんクラウディアしか俺は好きじゃない。そこは信じて。本当に個人的に少し疑問を聞きたいだけで…それはちょっと二人でないと無理なんだよ…。ごめんなクラウディア…今はちょっとクラウディアに言えないこともあるんだよ」

 と言うとクラウディアは


「何を隠しているのかは知りませんが…ジークヴァルト様がそう言うなら信じますわ…。いつか話してくれます?」

 不安そうな顔でクラウディアが聞く。可愛い!


「…そりゃクラウディアが…俺を信じてくれるなら!でも本当にそうなのか確証が持てるまでは待ってて?」


「解りました…ヘンリック…トラウトナー伯爵令嬢を登城させなさい」


「はいお嬢様!すぐ手配を!」


 その次の日…あの巨乳ヒロインが胸の空いたドレスを振りかざしやってきた。

 見せてんのよ!があざとい。


「お招きいただきありがとうございますぅ!ジークヴァルト王子様ぁ」とペコリとお辞儀するとめっちゃ谷間見えるから慌てて目を逸らす。


「よくそんな下品なドレスを…」

 クラウディアが睨むとレーナ嬢は


「あらあっ!ごめんなさあい!サイズが合うドレスが見つからなくてぇー!何しろ急に呼ばれましたからぁ!」

 おーほほほほほ!

 とヒロインは笑った。

 おい、クラウディアはお前みたいに巨乳じゃないけど普通にあるからね?むしろ俺別に巨乳好きじゃないしね?全体的に均整の取れたクラウディアの方がいいからね?


「レーナ嬢…ちょっと二人で話したいんだが…」

 すると勘違いしたレーナ嬢は赤くなり


「ようやくですわねっ!ごめんなさい鮮血姫様!王子は私と二人で話したいようですからっ!!」


「………」

 クラウディアは無言で睨んだ。


「あら怖い!!行きましょう!王子!二人きりの世界へ!!あ、優しくなさってね?」


「何の話だ!!いいか、俺に近寄るなよ?触れるなよ?話をするだけだからな!!」

 ととりあえず庭の東屋に座る。


「まぁこんなところで…大胆な!」


「だからそう言うのじゃねぇ!!…お前さあ、確認するけど…転生者か?」

 俺はいきなり確信をつく。

 すると今まで猫撫で声だったレーナ嬢はガラリと変わった。


「んだよ…やっぱりか!王子…あんたも転生者かよ?だりーなおい」

 誰っこの子!!


「折角この巨乳ヒロインの座にいるのによ…お前何悪役令嬢とくっついてんだよ!ふざけんな!…あたしはなぁ!玉の輿に乗りてえんだよ!!シナリオとかどうでもいいんだよ!?金が全てだ!そうだろ!?判るだろ?金なんだよおおお!!」

 ぎゃあああ!何だこのクソヒロインは!守銭奴すぎんだろうが!!


「金持ちなら別に王子とじゃなくていいだろ?他にイケメンの金持ち探せよ」


「うるせえな!この国に生まれたんだから仕方ねえだろ?この国で一番金持ちなのは王子だろうがよ!そりゃ近隣のヤンデレ王子とかもいるけどよ!?隣の国まで行く遠征資金が足りねーんだよっ!!金がねーんだよっ!!この貧乏国があああ!!」


「こっわ!!何だよお前は!!ちゃんとヒロインしろよ!大体王妃とかはな、ちゃんと王妃教育とかしなきゃいけないんだぞ!?お前今からそれできんのか?めっちゃ厳しいんだろあれ」


「……そんなん別にお前が一声かけろよ!?恋愛ノベルなんだからよぉ!私はヒロインだぞ!?勉強なんかいいんだよ!それにお前転生者とは言え王子だし顔いいだろ?問題無し!」

 と親指を立てるレーナ。いや問題あるわ!クラウディアがどんだけ努力したと思ってんだ!王妃教育舐めんな!つかこんなヒロインが王妃になんかなったら国が滅ぶだろうが!


「いやいや俺はクラウディアが好きだからな!お前とは悪いけど結婚しねえわ!!」


「じゃあ側室にしろや!!旨い飯食わせろ!!」


「嫌だよ!どんだけ図々しいんだよお前は!人が国豊かにしようと頑張っていろいろ考えてるのに!」


「あっそう…じゃあ何で呼んだわけ?私に興味あるからと思ってのこのこ来てやったのに!…お前の奇跡の力のレベル上げの援護でもしろってか?」


「違う!この世界のことに詳しいんだろ?お前は?ドラグーやホワコンの好物とか知らないのか?宝珠を譲ってもらいたいんだ」


「ほう…一気にレベル上げする気だね…。まぁ最終的にあたしが協力してお前と結ばれるってのもありかもな」


「いやねぇよ…1ミリもねぇ。知らないならもういいよ…あざとヒロインさん」


「待て待て。仕方ねえから協力してやるしお前のことも諦めてやるわ。ただし条件がある!」


「何だ?」


「ヤンデレ王子とお前が友達になってあたしに紹介しろ!まだ金持ちの座は諦めんぞ!」

 この本ヒロイン…とんでもない銭ゲバ女だな!シナリオ無視で顔と金持ちなら何でもいいのかよ。貴族でもそれなりに地位ある奴は金持ってそうなのに。

 しかしヤンデレとやらに紹介しないとこの女はテコでも動かないだろう。本ヒロインの化けの皮が剥がれて俺は溜息をついた。


 そんでまだ見ぬヤンデレ王子とやらに同情した。

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