魔法の森のオリ 〜消えた妖精を探して〜

瀬道 一加

第1話 ハチドリ



 オリは8年間生きてきて、一度もハチドリを見たことは有りませんでした。


 だから、おばさんの家の裏庭で、初めてハチドリを見たときはとても驚きました。


 虹色に光る綺麗なハチドリは、花から花へと飛び回ります。


 そして、本当に蜂のように、空中で止まって蜜を吸うのです。


 オリはもっと近くで見たくて、そっとハチドリに近づきました。




 ところがハチドリは、藪の中に飛んで行ってしまいました。


 オリは、細い木の枝と葉っぱを掻き分けて、夢中でハチドリの後を追いかけます。


 木の枝はどんどん増えてきて、オリは地面ににしゃがまないと、前に進めませんでした。


 オリは四つん這いになって、暗い木の根元を進みました。




 暫く行くと、白い光が見えてきました。


 オリは、光に向かって一所懸命に進みました。


 光は藪の出口でした。


 オリはやっと、藪の外に出ることができました。




 立ち上がって見渡すと、見たことの無い場所でした。


 目の前には、木で出来た小屋があります。


 小屋は木の枝のアーチに覆われていて、枝には小さな白いバラの花が、たくさん咲いていました。


 小屋の周りは芝生の庭で、その周りは森に囲まれています。




 知らない場所に来て、オリは心細くなってしまいました。


 おばさんの所に帰ろうと、オリは後ろを振り向きました。


 ところが、後ろに藪はありませんでした。


 そこには、木で出来た塀があるだけだったのです。




「あはは!やった!やった!騙された!」


 突然嬉しそうな声がして、オリは振り向きました。


 オリは、ハチドリを見た時よりも、もっと驚いてしまいました。


 そこにいたのは、透明な羽を持った、小さな女の子の妖精だったのです。




「あはは!可哀想な人間の子供!ここは魔法の森!あなたはお家に帰れない!」


 妖精は、笑いながらそう言って、どこかへ飛んで行ってしまいました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る