第52話

「リリアン。

 嫌な感じです。

 私への敵意だと思うのですが、銀狼が警戒しています」


 左後方を警戒してくれていた銀狼が何かを感じ、それをムクを通して私に伝えてくれています。

 単に誰かがいるというのではなく、明確な敵意を持っているというのです。

 銀狼達がムクの眷属になって慣れてきたからというよりも、銀狼達が魔獣化するにつれて能力が高まっている感じです。


「どの銀狼が警戒しているか分かりますか?

 ムクを通して包囲網を作れますか?」


「やってみます」


 リリアンの言う通りにできたら、私の安全は飛躍的に高まるでしょう。

 実際にお城でも魔境でも、狩りと警備の布陣は完璧でした。

 襲撃者への反撃もできれば、戦闘侍女達が楽になるでしょう。

 その分銀狼達は危険ですが、コックスの話が真実ならば、少なくとも銀狼達が死ぬことはないでしょう。


「やれますね。

 狩りの時と同じように、銀狼達が追いこんで、ムク達が止めを刺す方法でいいですか?」


「いえ、ムク達には御嬢様の警備をさせてください。

 襲撃者は捕らえて背後関係を吐かせます。

 戦闘侍女隊!

 襲撃者を生きて捕らえて御嬢様を狙わせた奴を吐かせるぞ!」


「「「「「はい!」」」」」


「第二騎士団!

 警戒しろ!」


「「「「「はい!」」」」」


 銀狼達が厳重な包囲網を狭めています。

 襲撃者を此方に追い込んでくれています。

 戦闘侍女隊が襲撃者を生け捕りにすべく、解毒薬を麻痺薬を準備しつつ、臨戦態勢を整えています。

 メイソンが第二騎士団に指示して、戦闘侍女隊の移動で空いたところを埋めてくれたいます。


 銀狼達が知覚した範囲では、敵は四人一組のようです。

 やっと一人が銀狼達に気がついたようですが、もう二〇頭によって五重の包囲網が構築されていますから、それを破って逃げるのは不可能です。

 他の二〇頭は、別の襲撃者に備えて警戒網を維持してくれていますから、最初の襲撃者が囮だったとしても問題ありません。


 襲撃者が二人二組に別れました!

 その場にとどまって、私への襲撃を諦めない組と、逃げて状況を報告するための組でしょう。

 これは中途半端な悪手なのでしょうか?

 それとも最善手なのでしょうか?


「リリアン。

 敵が二人二組に別れました。

 一組はその場に留まっています。

 もう一組は逃亡を図っています。

 どうすればいいですか?」


「足を傷つけて逃げられなくしてください。

 こちらの情報を敵に渡す訳には参りません。

 戦闘侍女隊!

 敵が逃げるぞ!」


 敵が剣を抜いて銀狼達を斬り付けます。

 毒です!

 銀狼達が剣に毒が塗られているのを知覚しました。

 銀狼達から僅かな脅えと大きな怒りが感じられます。

 かなり強力な即死毒のようです。


「敵は剣に毒を塗っています!」


「戦闘侍女隊。

 毒だ!

 麻痺薬を塗った矢を使え!」

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