Ⅶ
家に帰り、一人夜ご飯を食べていると携帯の通知音が鳴る。画面に写し出されたメッセージの相手の名前は、佐竹八生だった。
今日何度目かのドクンと鼓動が鳴る。
内容が気になって、無意識に指でメッセージをすぐ開く。
『小野井さん、お疲れ様です。今日は一から何までありがとうございます。また明日からもよろしくお願いします。おやすみなさい』
「こんな、わざわざ…」
いいのに。って思う反面、すごく嬉しい。
今日会ったばかりなのにここまで心躍らされるなんて、やばい。
気づきたくない。これが恋だって。
気づかれたくない。相手が貴方だって。
『お疲れ様。いえいえ、こちらこそよろしく。おやすみなさい』
(淡白すぎたかな…)
不安を抱きつつ、送信ボタンを押す。
「って、メールの一つでこんな喜んだり考えたり、俺は中学生かよ…」
携帯をベッドに投げて、再び夜ご飯を食べ始める。頭の中で考えるのは佐竹君の事ばかりだった。
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「おはようございまーす」
翌朝、いつも通り出社時間の30分前に会社へ到着する。今日もこの時間は少ないな…。とデスクに向かおうとすると後ろから声を掛けられた。
「あ!小野井さん、おはようございます!」
振り返って顔を見上げると佐竹君だった。居ないはずの彼が現れて驚いた。
今日一番に挨拶を交わす。
「佐竹君…ずいぶん早いね…」
彼の顔をじっと見て思う。
(今日も決まってるなぁ…)
背が高くルックスも良いからか新入社員特有の着させられている感がなく、スーツに飲み込まれず着こなしている。スラッとしたズボンが長い足をより長く見せる。
「小野井さん、朝早いんですね?」
「何時も朝はこの時間に来てるよ」
荷物を置いてパソコンの電源をつける。
立ち上げている間に珈琲を淹れようと休憩室へ移動する。
佐竹君は俺の後ろを追ってきていた。
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