【序章】第二話:召喚
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◆◆◆◆……何だ…これ…◆◆◆◆
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光の全く無い世界、見渡す限り黒、黒、黒、
それ以外に何も見えない世界…
前後左右、上を見ても下を見ても
自分の身体さえも知覚できない、
只々黒い世界で目を覚ました
「俺は……ゲームをしてた筈だ……もしかして…………死んだ?」
背筋にゾワっと寒気が走り思わず自分の身体を抱きしめると、見えないが其処に身体が有ると自覚する、身体が有る、そう意識できた後、今度は常闇の恐怖が襲ってくる
心臓が早鐘のように鳴り響き
バクンバクンと酸素を過度に求め始め
肺が必要以上の酸素を求めて、過呼吸のようになり胸が苦しくなっていく
息苦しく、身体が硬直し、手足が痺れ始め、
目眩を起こしてるような気もするが、視界全てが暗闇で分かりにくい
「……落ち着け……落ち着け……別の事を考えろ……」
考える事を止め、目を閉じ、暗闇と対峙する事を停止させていく、仕事の事、田舎の家族の事、昔好きだった同級生、頭の中で何度も思い浮かべてるが、その全てが暗闇に飲み込まれていく
ゲーム……仲間の事………アイツらはどうしてる?
もしかして……俺と……同じ目に?
「ミーコ……」
デカイ声で叫んだつもりだったが
囁くような声しか出なかった
(アイツらが…此処に居るなら…何とか合流したい)
スーーーーーー
ハーーーーーー
見えない両手を自分の口に合わせて何度もゆっくり呼吸を整える
酸素を求める心臓が苦しくて堪らないが次第に行く落ち着いていくのが分かる
「…………」
身体の強張りが取れていく、手足の痺れが抜けていく
どれくらいの時間が経ったのか分からないが……
何も見えない暗闇を視る事が出来るようになって行く
スーーーーーーーーーー
『ミーーコ!!モモレン!!ビリケン!!居たら返事しろーー!!!」
声の反響は無く
ただ、暗闇に吸い込まれて消えて行った
木渡は黙って待った
自分と同じ状況なら大きい声は出せないかも知れない
小さな声で叫んでいるかも知れない
自分の心臓の音さえ邪魔な気がする程…ただ待った
「・・・・・」
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◆◆◆……何か聞こえた?◆◆◆◆
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何も無い世界、何も見えない世界、真闇の世界で初めて感じた何かの気配
絶対に見失いたく無い…すがるような気持ちでそちらを必死に見つめる
何も見えない暗闇にナニカ気配が有る事にに気が付いた
それは何よりも黒く…
それは常闇も濃い…真っ黒いナニカ
完全に周囲とどうかしているのか全く距離感が掴めない…
(………何か居る……ヤバ…イ?……)
距離感は分からない、だけど見える距離に居る、仲間なら絶対声を出すはずだ
それをしないで忍び寄るのは、少なくとも味方じゃない……
ゆっくりと振り返り…布が擦れる音も抑えるように、気付かれないように
ナニカから離れようと進み始めた…が、
気配はドンドン近づいてくる
一歩離れると三歩近寄るような気配に堪らず走り出すが
気配はあっという間に直ぐ其処まで来て
「やっやめえええ!!………………え?」
何かが木渡を貫き通って行った
すり抜けた真っ黒な何かを目で追うが暗闇に溶けて消えて無くなる
「………なっ何だったんだ?」
ナニカが自分を擦り抜けたのは間違いないが
考えても分からない
知らないんだから、分かる筈も無い
害が無いなら、それが何かの手掛かりなら
追いかけるしか無い
暗闇が消えた方向に向かって走り出す
仲間以外にナニかが居る可能性が出た為、声を出すのを止め
暗闇が消えた方向に向かって音を立てないように歩き始める事にした
◇
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◆◆…どれくらい歩いたんだ?◆◆
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ただただ真っ暗な景色の中、真っ黒なナニカを追って、
方向がズレないように必死に集中しながら真っ直ぐに歩き続けた
◇
どれくらい歩いたのか?
何も見えない世界で
自分以外何の音も出さない世界で
誰もいない世界で
ただ歩き続ける疲労感に疲れ果てていた
ナニカの気配は完全に消えていた
今はあのナニカでさえ恋しい気分になる
「なんて…居たら絶対言わないよな…はぁ…はぁ…………何なんだここは………はぁ………」
膝をついてそのまま後ろに倒れた木度はウンザリしていた
もう一歩も動きたく無い
そんなに努力が出来るならフリーター何てやってない
「一晩寝たら…起きたらいつも通り……なんて無いよなぁ」
身体の疲労感、見えないが着てる服の感覚
見えない以外は全てがリアルだ
現実的じゃ無いのは、今の状況に冷静で居られる自分の方だ
横になって回復した身体を起こす
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◆◆◆◆◆◆……ん?◆◆◆◆◆◆
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疲れ切った身体では見えなかった物が見えた
見据える先に有るのは………小さな小さな白
暗闇の向こうにほんの小さな一点の白
思わず膝立ちのまま近く
「で…ぐち?……」
自然に膝から足が伸び、
二度と見失いたく無い木度は瞬きもせずに全力で走りだす
白い点は徐々に大きくなり、自分と同じくらいの高さの球体だと気がついた
熱いのか冷たいのか、見た目ではどちらもあり得そうだが、何にも分からない
ただただ白、それ以外何も無い暗闇の中で凄い白い
光が無いのに白だと認識出来るという事は、それ自体が光ってるって事何だろう
思わず手が伸びる
(……触って大丈夫か?……分からない…でも……)
ただ、暗闇以外の何かに触れたい欲求を抑えられ無かった
白い球体に触れた瞬間
「……へ?」
木渡は球体に吸い込まれ…消え
常闇の空間には誰も居なくなった
【奴隷ダンジョン 20階層】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
真っ暗な世界から真っ白な世界へと移動した木渡はただ白い世界にいた、文字通り頭が真っ白になりフワフワと漂うような気分
「なんだ…これ……なんか落ち着く……」
妙に落ち着いて惰眠を貪るような感覚に抵抗出来ずにいた木渡だったが、それは不意に終わりを告げられた
目の前の真っ白ながパラパラと砕けて落ちていく
その先にあったのは………まるで映画やゲームの世界のような……
土色の全方位を包む壁と天井
床はまるで某アニメの武闘会のような石造り
そして崩れて落ちる白い世界の向こうに見えたのは
「にっ日本人?」
目の前のガタイの良い男に思わずそう呟くと、
その後ろに居た紫色の髪をした男が慣れた決まり文句のようにセリフを吐く
「ようこそ、異世界へ、残念ながらお前はたった今から……【奴隷】になった」
「……奴隷?」
決め台詞を吐いた男が目の前にやって来て、背中に持ったライフル銃のような取り出し……視界から消え
ヒュンッ
一瞬耳元で空気が切れたと思った時……また真っ暗な世界に包まれた
………あーあっ、……これは戦闘持ちじゃ無いな、まぁ何か持ってるのは間違い無い、今日はこれで帰るとしようか?ナルミ、そいつを背負って来い
………はい
(……よかった…あの世界に逆戻りだけは……もう嫌だ…………)
ガタイの良い男に背負われて、紐で括られながら遠のく意識の中で木渡はそれだけで安堵していた
◇
……………ゴツゴツした筋骨隆々の背中の寝心地の悪さにボンヤリと意識が回復していく
………コイツのスキル戦闘系じゃ無かったら何ですかねぇ?
媚びるような男の声が聞こえて来る
………さぁなぁ、まぁ戦闘系じゃないならウチのパーティには関係無え
それに答える声は木渡をブン殴った男の声だ
(スキル?……何の事だ?………………)
会話の続きが気になったがこれ以上目を開け続ける事が出来ずに瞳を閉じていった
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