コンビニ
朝早くの散歩を日課にしている、それは……
そう、その全て甘味の為。
ワシはテレビや雑誌で毎日の様に紹介されている、甘味男爵こと、毒蝮丸飲みしちゃう優(どくまむしまるのみしちゃうゆう)だ。
甘味を沢山食すワシには運動と健康管理が必要、こうして散歩するのも早十数年、毎日見てる景色もワシには戦友なのだ。
おや?あんな住宅街の中にコンビニがあるではないか。
この前も、コンビニスイーツ決定戦に呼ばれ、ワシは3天晴れを出したところだった、コンビニスイーツとバカにしていたが、侮るなかれ中々の甘味だった。
「どれ、よってみるかな。」
コンビニスイーツは24時間いつでも買える所に利点がある、健康管理を気にするワシにとって凄い誘惑となる。
コンビニの看板を見てワシは絶句した。
そこには、スイーツコンビニ、総甘党と掲げてあった。
「なんだ??これは。」
走り出すかの様に自動ドアへせまり、中に入った。
レジの場所がガラスケースになっていて、沢山の甘味が置いてあった。
「いっらっしゃいませ。」
コンビニの中には、雑誌や雑貨も置いてはあったが、ワシはガラスケースに釘つけになった。
この前見たコンビニスイーツが並んでいる、新しいのは無いようだ、少し残念ではあったが今日は休みの日ここで一日分の甘味を買って帰ろうと注文をした。
「はい、お客様そちらの商品ですね?」
少しの沈黙の後店員が叫んだ。
「残念、スイーーーーツ??
そちらの商品は売り切れです。」
「なんだと?あるじゃないか。」
「はい、お客様そちらはホログラムにございます。」
「それなら、こっちは?」
「はい、お客様そちらの商品ですね?
残念、スイーーーーツ??売り切れにご、ざ、い、ま、す。」
「なんだとーーーーーー貴様さては、このワシが甘味男爵こと、毒蝮丸飲みしちゃう優とっしてからかっておるのか。」
「そんなことはございません。」
「ワシの座右の銘は、甘味を食べて死ねるなら本望、甘味を食べれないなら絶望なのだ、これだけの甘味を並べて置きながら売り切れとは何事だ。」
「誤解です。お客様、たまたま、そちらの商品が売り切れだっただけなのです。」
これ以上指を指し、売り切れと言われるのは腹立たしいので、ワシはイートインに座り店員に告げた。
「金に糸目はつけん、この店の最高のスイーツを持って来なさい。」
「お、お客様…本当によろしいのですか?」
「ああ、この甘味男爵にスイーツ対しての二言はない、早く持って来なさい。」
「かしこまりました。」
ふふふ、どんなコンビニスイーツが来るか楽しみだ、え?ぼったくられはしないかだと、ははは、ワシは甘味男爵だぞ、スイーツの適性値段など簡単に分かる、ワシはこの辺りの権力者とも知り合いだ、つまり、どうとでもなるのだ。
「お客様、お待たせしましスイーーーーツ。」
冷たく冷えた皿に、そびえ立つケーキがのっていた。
「これは、洋菓子店マウンテンパンプンキンのモンモンモンブランではないか。」
バカな?コンビニでこの甘味が食べれるだと?
な、何が起きているんだ、その店主は二年前に店をたたみスイーツの山を探しに行く旅に出たはず、ここで働いているのか?
「いや、真似して作っただけの、偽甘味かもしれない。」
ワシは一口食べた。
「あ、あ、あーーーー天晴れ、最高の5天晴れだーーー。」
本物だ、まさかこんなところで。
「お待たせしまスイーーーーツ。」
店員がテーブルに皿を置いた。
「こ、れ、は、のきさかの老舗、甘味処、虹の河の七色おはぎ。」
またか、百年前から営業していた甘味処で和菓子を中心とした品揃えで有名だった、その先代が亡くなるまで作っていた、伝説の七色おはぎ、ワシが甘味男爵を名乗り始めた頃に食べて、初めて5天晴れを与えた甘味。
見て直ぐにわかる、本物だ。
何故?コンビニでこれ程の甘味が。
その後も店員が持ってくる甘味はかつてワシが5天晴れを出した品ばかりで、ワシの頭の中は美味しさと思い出でいっぱいになった。
スイーツコンビニ、総甘党、正に甘味の走馬灯。
全てが天晴れだーーー。
「ありがとうございまスイーーーーツ。」
………
……
ピコン、ピコン。
「あなた、死なないで。」
「おじいちゃん、起きて。」
病院の一室で、ベッドに横たわる毒蝮丸飲みしちゃう優を囲む家族と医者がいた。
「残念ですが……」
今朝家の前で倒れていたところを家族に発見され、毒蝮丸飲みしちゃう優は今正に息を引き取ろうとしていた、死に際の顔は笑顔に溢れていたという。
終
PS.甘味好きのあなたもいつか、スイーツコンビニ総甘党にたどり着けるといいですね。
「いらしゃいませスイーーーーツ。」
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