サイコホラー
普通の、車よりも低く唸る。
キャンピングカーとはそういうものなのか?
私は運転席に手をかけて、一年先輩の木下和馬さんを覗き込み訪ねた。
「なんかエンジン音低くないですか?」
「え、そうかな?中古だからかな、あはは。」
助手席に座っている木下和馬さんの妹の琴音ちゃんもニッコリ微笑んだ。「お兄ちゃんが貯めたバイト代足りなくて、パパにほとんど出して貰ったんだよね。」
「バカ、半分ぐらいだよ、それに受験生の琴音は留守番で良かったんだぞ。」
「お兄ちゃんのバカ。」
仲の良い兄妹だ、優しく妹思いの木下先輩が私は好きだ、サークル仲間だったけど妹の気分転換にキャンプに行くからと誘われた時は、本当に天にも昇る気持ちだった…大袈裟かな。
私、佐藤明美は、一生に一度の大チャンスと二つ返事をしてしまった。
後、乗っているのは、木下先輩の同学年の友達で、陽気な原田太一さんと小山恵美さんだ。
「明美ちゃん、運転の邪魔してないで、こっちにおいでよ~~。」早速原田先輩に呼ばれた。
「いいのよ、明美ちゃん、こいつ、アホでスケベだから無視していいよ。」
恵美先輩が私を庇ってくれた。
「なんだよ、恵美は、じゃあ琴音ちゃんは?こっちにおいでよ~~。」
出発してから、こんな感じで意味の無い話を繰り返して、でも、とても楽しくあっという間に二時間が過ぎた。
キャンピングカーは森の奥へと進んで行っき、幾つもの枝分かれの道を進んだ、道の分からない、私では多分戻ってこれないだろうと思った。
「けっこう奥まで行くんですね。」
木下先輩は笑顔で答えてくれた。「凄い穴場なんだ、シーズンオフの今はもちろん人がいないけど、シーズン中も穴場なんだよ。」
「えー、何でなんだろう?」
「実はね、バブルの頃に川沿いの場所は沢山開発されたんだけど、周りにある三つの湖の内大きな二つは開発されて、小さな湖の方はバブルがはじけて開発が止まったんだ。」
「今から行く場所は…」
「そう、小屋が四つあるだけなんだ、最近の超自然派のブームで電気とか無いその小屋で過ごすのがブームになってさ、そんな状態でもかしてるんだよ。」
私はよくわからないという顔をしていると、琴音ちゃんが話かけてくれた。
「いつも家族で泊まってたの、シーズン前に掃除とかさせられてるの。」
「おい。琴音、知り合いだから安くしてくれてるんだよって、言いなさい。」
「和馬~~もうつく?」痺れを切らした原田先輩がだるそうに聞いてきた。
「もう、つくよ…ほらここだよ。」
小さな湖に五メートル程の桟橋が掛かっており周りは木に囲まれている、桟橋の手前が少し開けていて、そこにキャンピングカーは止まった。
「和馬~~小屋は?」
木々の後ろに小屋が見える。
「あそこだよ、その奥、森の方にけっこう間隔をあけて全部で四つの小屋があるよ、湖に近い方から、A館ってなってるよ。」
恵美さんが笑いながら。「さえない名前ね。」
「ほんとにさえねぇーな。」原田先輩も笑い出した。
「おいおい、バカにするなよ、案外大変で楽しいぞ。」
「なにがだよ?」原田先輩は木下先輩にじゃれついた。
「あーあ、でどうするの?」恵美さんが訪ねた。
「じゃあ、俺は部屋を見てくるから、皆はキャンピングカーとか湖で遊んでてよ。」木下先輩が小屋の鍵を持ち降りようとした。
「おい、待ってくれよせっかくだから、小屋に泊まりたいぜ。」
原田先輩は話を聞いていたのかな?電気とか通って無いのに……と、思ったが只、くついって行きたいだけのようだった。
「本当に、小屋を見てくるだけだぜ?ついて来てもつまらないし邪魔になる。」
「邪魔にするなよ~~。」と甘えながら原田先輩は木下先輩の後について行った。
「私、なんかよっちゃったみたいだから、ここで寝てるねなんかあったら起こして。」そう言うと恵美さんはソファーで横になった。
私は一人ポツンとしてしまった……あ、気が付いたら琴音ちゃんがいなかった、慣れた場所だから湖とかそこら辺を散歩に行ったんだなーっと思い私も外に出た。
「うーん。」
清々しい風と、優しい太陽が森の香りを倍増させ私に届けてくれた。
虫刺されなんて気にしないぞ、と私は湖を背にしてA館に向かった。
丸太の様なもので、凄く簡単に建てられた風に見えるけど、どんなに頑張っても私には作れません。
そんな事を考えながら、小屋を見た、先輩たちは先に行ってしまっていて居なかった。
木々が少し開けてまさに獣道と思われる舗装されてない土の道を進んだ。
「あれ?」
B館のドアが開いたままになっていた。
三段程の木の階段が有りその上にドアがあった。
何のために地面から離して作ってあるんだろう?
森の中の小屋ってだいたい高さがある、三段なら面倒くさくは無いが無くていいなら、それが良い。
色々変な事を考えたが、せっかく好きな木下先輩と来ているんだ、ちゃんとお話ししょうと中を覗きこんだ。
「先輩?」
電気等が無いだけあって、窓から入る日射しだけでは薄暗かった。
クローゼットとベッドが二つ椅子と机どちらも邪魔にならない大きさで部屋の端に置いてあった。
本当に質素だ何も無いし何も出来ない、きっと夜になったら真っ暗闇になってしまうだろう。
覗き込んだだけでも誰もいない事が分かったが、せっかくなので部屋の中心へと足を運んだ。
「あーあ、こんな何もないところでも、先輩と二人きりになれたら……きっと楽しいだろうな!
いやいや緊張して無理だな。」
「ん、何が無理なんだい?」
「わ、木下先輩、何でもないです。」
「そうなの?まあーいいや、太一がさー水着に着替えて湖に泳ぐとか言って、どっか行っちゃったんだよね?
一応小屋の鍵は全部開けといた、どうせ僕たちしかいないし、一々鍵かけるの面倒くさくない。」
「そうですか?防犯的には。」
「あー、ここに来る途中の枝分かれの道を進むと、歩いて、四、五十分で他のキャンプ場につくけど、ここまで来る物好きはいないさー。」
「そうですね。」
私はよく分からず頷いて笑った。
木下先輩と二人きりで獣道を歩いた。
「どうかな、明美ちゃん?」
「え?」なんだろう?どうかな僕と付き合わないって意味かな?
「自然って何か楽しいよね。」
「あー、ハイ。」そっちか。
A館についた時、悲鳴が聞こえた。「キャー。」
「湖の方だ。」木下先輩が走る、私も後を追い掛けた。
バシャンバシャンと水を叩く音と、悲鳴と叫び声がまざった助けての言葉が聞こえる。
「琴音ーーーーー。」木下先輩が叫び湖へ飛び込んだ。
ごぼごぼ、ごぼごぼ。
桟橋の上に琴音ちゃんを抱き抱えながら木下先輩が倒れた。
私はかけより、二人とも肺から水を出そうとゲホゲホと咳をしていた。「大丈夫ですか。」
木下先輩がジェッシャーで大丈夫の合図をしてくれた。
琴音ちゃんも咳をしながらも大丈夫の合図を出してくれた。
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