※番外編 技術検証をしちゃうぞ!

誠「はい! 皆さんこんにちは!」

美奈「こんにちはぁ」

誠「これは本編とは関係ないので読み飛ばしても大丈夫です!」

美奈「技術に興味ある人だけどうぞ!」



          ◇



誠「何とついに地球の謎、クリスの謎が暴露されてしまいましたね~」

美奈「あーあ」

誠「美奈ちゃん、この現実世界はただの仮想現実だったって、どう思う?」

美奈「ん? 別になんだっていいんじゃない? 仮想現実だと何か困るの?」

誠「え? い、いや……直接すぐに何か困るという事は無い……かな?」

美奈「ならいいじゃない」

誠「いや、でも、地球がハリボテだったって、ちょっとショックじゃない?」

美奈「全然? 知ってたし」

誠「え!? なんで知ってたの!?」

美奈「だって、私女神だし~。なんだって知ってるわよ。えへん!」

誠「あ、そうだったね……」

美奈「信じてないわね!」

誠「で、このシミュレーション仮説って現実にできるかどうか、ちょっと考えてみよう」

美奈「信じてないわね……」

誠「いや、信じてるよ。例えば、俺の身体、これ、本当にシミュレートできるのかな?」

美奈「……。できるんじゃない?」

誠「人体には細胞は37兆個もある。そして分子数で行くと水換算で2x10の27乗個の分子で構成されている。これを全部シミュレートしたら確かにできるね」

美奈「ほら、できるじゃない」

誠「ただ、古典力学で計算しても正確じゃないので、量子力学的に計算しないとならない。そうなると、ただのコンピュータじゃダメで、量子コンピューターが必要になる。」

美奈「面倒くさそうね……」

誠「で、1量子ビットの素子を1ミクロンの立方体で構成したとすると、人体のシミュレーションは1辺100mの巨大なビル群サイズの量子コンピューターがあればできない事もない。」

美奈「一人分でビル群サイズ!?」

誠「全人口は70億人だから70億個の巨大ビル群サイズ量子コンピューターがいるね! なおかつ使うエネルギーも膨大でとても現実的じゃないね」

美奈「ダメじゃん! 無理じゃん!」

誠「そう、だから俺も無理だって思ってた」

美奈「で、手抜きを考えるって訳ね」

誠「そうそう、シアンも言ってたけど、見てないところは無視! この精神でガンガン計算量を削るぞ!」

美奈「削るぞ!」

誠「例えば、そもそも筋肉はこう動く物だという風に筋肉の細胞全体を一つの筋肉としてシミュレーションしちゃえば計算量は殆ど無視できるくらいに減る」

美奈「うぉぉ」

誠「そうやって人体を部位ごとに簡略化してやれば、人体のシミュレーションは冷蔵庫サイズの量子コンピューターでできそうだ」

美奈「お、冷蔵庫サイズならなんとか行けそうね」

誠「さらに、時間の精度を端折る。時間は厳密にはプランク時間(5.39×10のマイナス44乗秒)毎に考えなきゃいけないが、こんな精度、人間の感覚では全く捕捉できない。一般の状況では1万分の1秒単位で処理したら誰もわからないだろう。これで10の40乗分楽になる。」

美奈「うぉぉ!!」

誠「ただ、ここで量子コンピューターの現実的な効率を考えないとならない。」

美奈「効率?」

誠「さっきは理想的な量子コンピューターで考えていたんだけど、実際に作れるのは相当ショボいものだから、メモリとの間のデータセット処理時間などを考慮すると効率は相当落ちるはず。」

美奈「ふむふむ」

誠「素子サイズ1ミクロンの間を光が移動するのにかかる時間が3×10のマイナス15乗秒、これだけで10の29乗分のロスがある。これに条件のセット時間やらまで考慮すると多分10の34乗分くらいは見ておかないと構築は難しそうだ」

美奈「あらら」

誠「それでも10の6乗分くらい残るから、計算量としては冷蔵庫サイズ1万個の量子コンピューターがあれば、全人類のシミュレートは可能なレベルになる。」

美奈「冷蔵庫1万個かぁ……」

誠「後は山とか海とか建物とかの無機物と他の生物だけど、それらが人間の1万倍程度の規模だとすると冷蔵庫サイズ1億個で地球は全部シミュレートできる計算になる」

美奈「1億個……どんくらいになるの?」

誠「冷蔵庫を1000個四方に敷き詰めて、それを100個重ねたくらい。これは600m四方の正方形が200mの高さあるくらい。技術的には不可能な話じゃない」

美奈「シアンが見せてくれたジグラート一つ分のサイズって事ね」

誠「そうだね、そのくらいで出来ないこともなさそうなんだよね」

美奈「で、誠さんはこれ作れるの?」

誠「俺じゃ無理……シアンが10万年くらい必死に頑張ったらできるんじゃないかなぁ?」

美奈「ふぅん、でもまぁ時間の問題なのね」

誠「それから、簡略化ばかりしてると穴ができちゃう。例えば顕微鏡で体組織を覗いたりする事もあるので、その時は厳密なシミュレーターを動かさないとならない。」

美奈「顕微鏡や望遠鏡などの観測機器はヤバいわね」

誠「そう、観測装置が観測を始めたらシミュレーター設定を変えないとならないって事だね」

美奈「そんなの間に合うの?」

誠「それは地球時間止めちゃえば幾らでも対処できるし、計算パワー足りなきゃ時間の進みを遅く設定するだけでいい。なんたってただのシミュレーターだもん」

美奈「結論としては何でもできちゃうし、ただの時間の問題って話になっちゃうのね」

誠「そう、この宇宙ができてから138億年も経った今、海王星ネプチューンに地球シミュレーターがある事は実に自然なんだね。」

美奈「ある方が当たり前なのね」

誠「いや、当たり前って事は無いよ、作るのは大変だもの。どういうモチベーションで海王星人ネプチューニアンはこんな壮大なシステム開発をやり遂げたのかなぁ?」

美奈「きっと私に会いたかったのよ」

誠「あはは、美奈ちゃんは詩人だなぁ。確かに地球作らなかったらクリスは美奈ちゃんに会えなかったしね」

美奈「そうよ!」


誠「結論としては、地球を丸っとシミュレートすることは技術的には可能、ただし、時間は数十万年程度かかる。その目的は、美奈ちゃんに会うため(笑)って感じかな?」

美奈「ま、そんなとこね! みんな! 分かったかな~!」

誠「それではまた来週~!」

美奈「ばいば~い!」

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