Data.137 弓おじさん、目指すべき頂
「ふー! 一時はどうなることかと思ったけど、無事グロウカードを完成させられたなぁ」
「はい! まったくとんでもない冒険でした! でも楽しかったです!」
あの後は特に敵に襲われることもなく、無事街に戻ってくることが出来た。
すぐさまグロウカードを最初の占い師に見せ、ついに恐怖のスタンプラリー『四印巡り』は完了した。
これでゴーストフロートの街『ホロフロント』にはいつでもファストトラベルすることが出来る!
それにしても、あの占い師はカードを渡す前には意味深なことを言ってたけど、完成させる時には特に何も言わなかったな。
――そう遠くない未来、ここではないどこかで、あなたはこれまでの経験と本当の実力を試されることになります。
――恐れることはありません。あなたは強く、あなたを慕う仲間もいます。恐れるべきはその相手……今のままでは、
あの時の言葉は今でもやけにハッキリと覚えている。
なんとなく当たっていそうな気もする占いだが……。
「……ん? フレンドからメールが来ているな」
俺のフレンドは2人しかいない。
そのどちらからなら、間違いなくネココだろう。
なになに……
出来る限り早く集まりたいから都合の良い時間を送れとのことだ。
俺は全然今からでも行けるので『今行けるよ』と送った。
「何かありましたか?」
そうだ、アンヌがいるんだった。
彼女を
一応少し前にネココにメールで紹介してるが、そのうちチェックするとだけ言われた。
ネココはネココで普段の冒険が忙しいのだろう。
「
「あっ! なら私はここでお
「いや、一応確認してみようと思う。なんとなくだけど」
冷静に考えれば、このタイミングで緊急招集なんておかしな話だ。
もし新メンバー決定とかなら普通に用件をメールに書けばいいし、まだイベントは発表されていないから対策を話し合う必要もない。
なんとなく、なんとなくだが……俺たちの身に起こったことが今回の招集に関係しているような気がする……。
妙な予感を覚えつつ、ネココにアンヌが一緒にいることを伝える。
すると返って来たのは意外な返事だった。
――彼女も
――なら、一緒に来て欲しい。
予感は当たった。
なぜネココがノルドとの戦いを知っているのかはわからないが、今回の緊急招集には
ほどなくしてサトミの方からもすぐに集まれるとの連絡が入ったので、俺とアンヌは初期街へとファストトラベルでワープした。
◆ ◆ ◆
「私のところに来た
「よ、4人も!?」
初期街にある展望台に集まった俺たちは、ネココから驚くべき話を聞いた。
彼女の元にも
しかも、俺たちと同じくプレイヤー同士で戦うことが許された『ヴァーサスフィールド』で……。
「それで……どうなったの?」
人数差を考えれば勝てたかとは聞けない。
かといって負けたのかとも聞きにくいので、言葉を濁して尋ねる。
返ってきた答えはこれまた意外なものだった。
「返り討ちにしたわ」
「えっ!?」
「叔母様とね」
「あー、なるほど! 4人も来たのはそっちを警戒したからか……」
「珍しく叔母様の方から『たまには一緒に遊ぼう』って誘ってくれたから助かったわ。やっぱり熟練のゲーマーは殺気を感じるのよ!」
殺気って……。
面と向かってプレイヤーと対峙してる時には俺も少し感じるが、遠く離れたところにいるプレイヤーが今日は自分に攻撃を仕掛けてきそうだな……って感じたならそれはもはや能力者だ。
まあ、わざわざツッコんだりはしないけど。
「僕の方にも2人来ましたよ。ジーベンとアハトなので7番と8番ですね」
「サトミのところにも2人か……。俺のところには1人だけだったんだけどなぁ……」
「ちなみに番号はどうでしたか?」
「アイン……1番だ。自分が
「1番を名乗るくらいですから、最も強いということでしょう。仲間を連れる必要がないくらいに……。もしくは仲間がどこかに隠れていたのかもしれません。全員の話を聞くと、2番手であるツヴァイだけいないようですし」
「あの場にもう1人いたら逃げられなかったかもなぁ。サトミは2人来たようだけど大丈夫だった?」
「……ええ、なんとかなりました。その証拠に装備が綺麗なままです」
「あ、本当だ」
確かにサトミの装備は綺麗なままだ。
しかも、かつての装備の面影を残しつつ少しゴージャスになっている。
みんなそれぞれの冒険を続けて強くなっているんだろうなぁ。
俺も装備のさらなるアップデートを考えなければ。
風雲装備が他のプレイヤーの装備と比べて特別優れていた時代は終わったのかもしれない。
でも、お気に入りだからまるっと取り替えるのは気が引ける。
やはり『装備進化』だな。まだ素の風雲装備である頭部、両腕、脚部はぜひとも進化させたい。
進化と言えばガー坊もそうだが、こっちは手掛かりがないな……。
後でサトミに聞いてみよう。
『ユニゾントレーナー』の彼なら何か知っているかもしれない。
とりあえず、今は本題の話を進めよう。
「みんな
「それだけじゃないよ。私がみんなを集めた理由は、次のイベントのことを話し合うため」
ネココはチラッと周囲を確認する。
展望台に人は少ないし、俺たちの周りには誰もいない。
みんな噴水広場で観戦できるチャリン戦に夢中だ。
難易度が下がって挑戦者が増えてきたから見れる試合もたくさんある。
「
「なぜ、ただのプレイヤーがまだ発表されていないイベントのことを知っていたんだい?」
「廃人には廃人の情報網があるってさ。エッダが言うには、『黄道十二迷宮』終了後に発表されるイベントは『第1回NSO最強パーティ決定戦』! このイベントには賞金も出るらしいの!」
「賞金かぁ……。大VR時代だから1人100万くらいド派手に出ちゃうとか?」
「1人2500万円、4人パーティで合計1億円よ。もちろんリアルマネーでね」
「へぇ~、2500万円かぁ~……ん? 2500万円? ……2500万円ッ!? 2500万円って、あの2500万円!?」
「そうよ! 優勝すればそれだけの大金が入ってくるの! もちろんお金も嬉しいけれど、私としてはそれだけの大金がかかった大会で1番になることに意義があると感じるわ! プロゲーマーとしてのキャリアに間違いなく箔がつく! だから絶対に勝ちたい! みんなも……一緒に戦ってくれる?」
「もちろんさ! いま無収入だからね。絶対に本気で戦うよ!」
あ、言ってしまった……。
若者が名誉のために戦うと言っているのに、金のためみたいに言ってしまった……。
俺としては手を抜くなんてことはあり得ないと証明したくて言った言葉だが、カッコ悪いな……。
でも、この場合はお金持ちのあしながおじさんよりも無収入のゲーマーおじさんの方が頼りになるはずだ。
賭けるものがまるで違う。
「僕も優勝しか狙いませんよ。プロゲーマーを名乗るなら、お金のためには戦わないなんて綺麗事を言うはずがない。栄誉とお金、両方僕たちが貰っていきましょう……!」
普段は落ち着いているサトミも興奮を隠せないようだ。
俺もいつ開催かもわかっていないのに、体がうずうずしてくる……!
「私たち
「おおーッ!」
「おおーッ!」
「あの……私はそこに入ってもよろしいんでしょうか……」
あ……アンヌのことをほったらかしにしすぎた……!
勝手に俺たちだけで盛り上がって『おおーッ!』とか言ってしまった。
「あなたがおじさんの言ってた有力候補ね。うーん、そうだ! しばらくは私と一緒に冒険できない? あなたの実力を実際に見てみたいの。案外良いプレイヤーが見つからなくて焦ってたから、きっと良い返事が出来ると思うよ!」
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
アンヌはネココが預かることになり、ひとまず緊急会議は終了した。
さて、じゃあ俺はサトミに話を聞こう。
ユニゾンの第3進化について……!
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