17
「……どうしてハルは新世界にやって来られなかったんだろう?」とフユは言った。
「それは、……わかりません。でも、もしかしたら、新世界にやってこられるのは、一人だけ、だと最初から、そういうルールがワールドエンドにはプログラムされていたのかもしれません」コスモスは言う。
「一人だけ……。でも、どうして?」
「それは、私が一人だからです」
コスモスは言う。
「世界の終わりは、新しい世界の始まり。その始まりに立ち会うことができるのは、一人。……そうたった一人。選ばれた人間だけなのです。そして選ばれたのは、フユ。あなただった。そういうことです」
「コスモス。僕には君の言っている言葉の意味がよく理解できないよ」フユは言う。
「君はこの状況が、……つまり僕とハルが離れ離れになってしまうかもしれないってことを、あらかじめ可能性として知っていたの?」
コスモスは答えない。
沈黙は、正解だということだろうか?
「ワールドエンドの選択を実際にしたのはハルだった。それに人間としても、僕とハルではハルのほうが優れているよ。ハルは情報士で、僕はそのサポートをする通信士にすぎない。誰が、なにを基準にして、選んだのかはわからないけれど、もし選ばれるという行為があったのだとしたら、選ばれるべきなのは僕ではなくて、ハルのほうだよ」フユは言う。
「いいえ。違います」コスモスは言う。
「選ばれたのは『フユ』です。それは、間違いでも、勘違いでもありません。絶対の、唯一の答えです。フユは新世界に来るべくして、やってきたのです。それが世界の選択なんです」
フユは真っ暗な天井を見上げる。
……心の中に、大きな空洞ができてしまったような、そんな不思議な感じがする。
ハル。
僕は、ハルを失ったんだね。
フユは思う。
それから、フユの目から涙が溢れる。
それは一粒の透明な涙の流れとなり、フユの白い頬を伝い、コスモスのいるタブレットの上に、落ちて弾けた。
そして、その瞬間、奇跡が起きた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます