ドワーフの仕事と手伝える事

 ようやく帰ってきてくれたギードだが、獲物はどこにあるんだろう?

 捌く話をタキスにされたので、帰ったら直ぐにするのだと思い、実はちょっと楽しみだったのだ。

「えっと、獲物はどこなの?ベラが運んでるんでしょ?」

 聞いてみると、タキスとニコスが教えてくれた。

「さすがに大物を二頭はベラでも運べませんからね。狩り用の小屋に置いてあるんです」

「我々は、森のあちこちに狩り用の小屋や、薪割り用の小屋を作っているんです。今回は、東の森ですので、行って帰るだけでも1日かかりますよ」

「まあ、血抜きだけはしてきたが、捌くとなるとそれなりに時間のかかる仕事だからのう」

「ここに一人置いて行くのも可哀想だし一緒に行くか?しかしそうなると、ラプトル二頭で行くのはちょっと辛いな」

「それなら、トケラに荷車を引かせて途中の古塚ふるづかまで行こう。あそこまでなら荷車も通れるからな。トケラと荷車にはそこで待たせておけば良かろう。あそこからなら二人づつ乗っても、ラプトルの負担は少なかろう」

 ニコスとギードが相談しているのを見ていると、ニコスが思いついた様に言った。

「あの拾ってきたラプトルは駄目なのか?あれに乗れたら問題無かろうに」

 タキスが首を振りながら言った。

「残念ですが、あの子達はまだ無理ですね。相当痩せているので体力が持ちません。今、無理をさせると足にきますよ。それに、鞍がありません。手綱とはみは予備がありますが、それも一つだけですからね」

「それはいかんな。なら、やはりトケラに出てもらうか」

「そうですね、それが一番良いと思います」

「それなら、先にベラの世話と、荷車の用意をしてくるわい」

 ギードが立ち上がったのを見て

 思わず手を上げて大きな声で言った。

「僕も手伝う」

 狩りの話を聞きたかった。

 ギードは驚いたようだったが、笑って頭を撫でてくれた。

「頼もしいな、ならばお願いしますぞ」



 ニコスが夕食の準備をしている間に、ギードと一緒に厩舎へ行ってベラの世話を手伝った。

 鱗やたてがみが汚れていたので綺麗に体を拭いてやり、絡まった鬣にはブラシをかけてやる。ベラは気持ちよさそうにじっとしている。

「狩りはどんな風にするの? 弓?」

 外したベラの鞍には、弓と斧がかかっていたからだ。

「大物は罠を使い、弓で仕留めますな。弓も普通より強い強弓ですぞ。引いてみますか?」

 鞍にかけてあった弓を見せてくれた。

 手にとってみて引いてみようとしても、レイの力では弦はびくともしなかった。

「本当にすごく強んだね、僕には全然引けないよ」

「まあ、これはドワーフ程の腕力がないと無理でしょうから、残念がることはございませんぞ。さて、後は納屋から荷車を出すのを手伝ってくだされ」

 弓を壁に立て掛けて振り返って言った。



 納屋から出してきた荷車は、思ったよりも幅が狭い。二人並んで座れるかどうか、という幅だ。

「もっと大きな荷車かと思ったのに、案外小さいんだね」

 すると、ギードは笑いながら荷車を見て言った。

「村で使うなら、これは小さいでしょうな。ですが、物を運ぶために森に入るには、これでも大きいぐらいなんですぞ」

「そっか、道があるとは限らないからね」

「そうです。ある程度使う場所は周りの草を刈ったり枝を払ったりもしますが、まあ一時的なものです。森の中では、車輪のあるものは通れる場所が限られますからな」

 荷車の車輪を確認しながらギードがさらに教えてくれた。

「大物を仕留めた時は、大体トケラに出てもらって、皆で古塚で捌くんですよ。あそこには小さいですが良い川が流れておりましてな、捌くには丁度良いんですわい」

「それでトケラの荷車で持って帰るの?」

「そうです。もちろん食べる分は残しますが、大物の場合には街で売る事もありますな」

「街って…………ブレンウッドの事?」

「そうです、あそこにはドワーフの組合ギルドが有りましてな。森でとれた色んなものを買い取ってくれるんですわい。便利ですぞ。街で買い物するには、まず金が入りますからな」

  立ち上がって反対側の車輪も確認してから、一緒に部屋へ戻った。

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