第56話1565年2月『近江・観音寺城・本丸』
1565年3月『近江・観音寺城・本丸』
「御隠居様・直虎様、急な訪問にもかかわらず御会い頂き感謝いたします。」
「なに構わんよ長逸殿、幕府に関する重大事と言われれば後回しには出来ん。」
「実は先に義直様と話し合いました国境の件なのでございます、三好家としては何があっても今川家との友諠を保ちたいと思っているのです。」
「それは今川家も同じだ。」
「そこで伊賀の守護を義直様に御願いしたいと思っているのです。」
「ほう、三好家はその見返りに何を望んでおられるのだ?」
「先程も申しましたが、今川家との友諠でございます。」
「ならば今川家の見解を申すが、伊賀1国では何があっても三好家との友諠を優先するとは言えん。」
「駄目でございますか?」
「何があってもと言う条件ならそうだ。」
「天下の静謐の為でもですが?」
「条件次第だな、条件次第で天下の静謐を優先しよう。」
「丹波1国の守護も義直様に御願いすると言う事でどうでしょうか?」
「丹波か、直虎はどう思うか?」
「丹波の守護代は内藤宗勝殿ですよね、宗勝殿は幕府で御供衆を務め大和一国を任されている松永久秀殿の実弟ですよね、宗勝殿を追い出していいのですか。」
「それは大丈夫でございます。」
「長逸殿が久秀殿を追い落として、義好様の後見人になると言う事ですね。」
「・・・・・」
「私は何方でも構わないのですよ、天下の静謐が保たれればね。」
「左様でございますか。」
「ただその為には明確な国割が必要なのではありませんか。」
「ですから伊賀と丹波を義直様に御任せしたいと思っております。」
「そうなると大和の久秀殿と争う事になりますよ。」
「大和の事は我々に御任せして頂きたいのです。」
「そうなると畿内に戦乱が及ぶ事になるのではありませんか? 大和と摂津・河内・和泉の間で合戦が起こることを義直様は望まれません。」
「それは伊賀・丹波にだけでなく、大和の守護も義直様に預けよと言う事でしょうか?」
「紀伊もです。」
「紀伊までですか!」
「そうです、4カ国の守護を任せて頂けるなら、義直様は何があっても三好との友諠を守られるでしょう。」
「何があってもですか!」
「何があってもです! 丹波の禁裏御料を押領している宇津右近大夫頼重などは断じて許せません、それを討伐する軍を進めたいと義直様は常々申しておられました。」
「義直様がですか?」
「そうです、義直様には幼き頃より皇室を敬うように御教えしてきましたから、その成果でございましょう。」
「直虎様の御実家は、南朝を奉じておられた井伊家でございましたな。」
「そうです、三好家も当初は南朝を奉じておられましたね。」
「南朝と縁の深い大和と紀伊も守護を任せろと申されるのですね。」
「内藤宗勝殿に引き続き丹波守護代に任じ、松永久秀殿を大和守護代に任じれば、不要な戦はしなくて済むのではありませんか。少なくとも主戦場は、大和と伊賀・近江、丹波と若狭の間で済むのではありませんか?」
「・・・・・紀伊はどうなのでしょうか?」
「紀伊は元々国衆の力が強く、1国としてまとまっておりません。湯浅党を中心に南朝勢力が強い時代が長く続きましたし、畠山家が守護に任じられた後でも寺社勢力が強力なために、その支配力は限定的なものでした。」
「確かにその通りでございますな。」
「南朝に縁の深い義直様に任されませ、三好家の敵対している畠山高政殿は、今川家が責任を持って畿内を荒らさないように致しましょう。」
「伊賀・丹波・大和・紀伊の守護職を義直様に御任せすれば、何があっても今川家は京に兵を進められませんな!」
「誓紙を書いても宜しいですよ、ねえ御隠居様。」
「そうだな、それくらいしてくれたら、今川家の眼は東に向かうだろうな。」
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