55話目 魔物大量発生再び!
今度の魔物の数は尋常じゃないらしく、ダンビラスさん達、騎士団や騎兵隊、シールス魔道士隊も緊張感でピリピリしていた。
コカトリスやオーガの時だって、200は軽く超えていたよ?それより多いって、通常ならあり得ない。
誰かが魔物のスタンビートを仕掛けていなけりゃ、こんな数はいかないだろうね。
ダンビラスさんが調べた限りでは、大凡3千の魔物が長い隊列を組み、王都を目指しているらしい。
もし、騎士団や騎兵隊、シールス魔道士隊で対応出来なかった場合、やっぱりあたし達が出て行かないといけなくなるかもしれない。
マグノリアさんは自分の大剣の手入れをしている。
オーレンやジョージもいつでも出られるよう、支度はしているらしい。
アミダラさんとアナスタシアは今回、転移魔法で、ウォレット殿下の所へ行っている。もし、3千の魔物の内、例え千でも、逸れて辺境伯城に向かった場合の為、らしい。
もし、千もの魔物が辺境伯城や鉱山村に向かってしまったら、防御魔法があるとはいえ、耐えられるか分からない。その先の町では、防御魔法すらされていない。
そして、何か魔物達に魔術的な防御がかけられているのか、魔物の種類が特定出来ない。ダンビラスさんの所のログナーの話だと、灰色のモヤがかかっているらしい。ゴブリン位なら兎も角、もしオーガクラスの魔物がこの数では、たまったものじゃない。
試しに検索魔法を飛ばしたが、魔物の赤い点は見えるが、種別の所は???となっていた。目を飛ばしたが、やはり灰色のモヤモヤが魔物を隠している。
え〜い。風の精霊の力を借りて、フゥッと息を吹きかけてみた。
しかし何ものかによって、跳ね返された。魔法防御が出来る者が居るって事よね。
やっぱり魔族が動き出したって、事なのかな。
あたしは心の中で、闇の精霊クロを呼んだ。
「……ほう。いよいよ、動き出したようじゃの。」
…はい。
「お前さん達は出来うる事をやってきた。だがのう。あんたが行かなくて、本当に良いのか?命が沢山失われようとしているのに、いざという時まで、待つつもりかの?いざという時は痛手を受けている時じゃろうのに。」
…しかし、まずは国の兵が動く必要があります。それは他国にも我が国が強い国として、見せなくてはならないからです。決して手が出せないと思わせる程に。そして、あたし達は彼らを信じなくてはいけないのです。それが遅れをとると、勝利を分ける事になるとお思いですか?
「いや、そうは思わないがの。じゃが、覚悟してそう決断したのじゃな。ならばこれ以上はいうまい。」
今回の事は魔族が関わっての襲撃でしょうか?
「……うむ。他国の者と魔族が関わっておるな。今回の策略は他国の者が彼方の世界の魔族を呼び出す為に、ブーケットの魔力や技術を乗っ取ろうとしておるようじゃのう。」
彼方の世界の魔族?!
「そうじゃ、お前さんも会った事があるじゃろう?彼方の世界に追放された魔族達じゃ。」
それって、長い黒い髪の女性もいますか?
「そうじゃ、お前さんが会ったのはアルトといって、漆黒の闇の王子の妾じゃ。」
もし、その漆黒の闇の王子が此方の世界に戻って来たら、どうなります?彼は魔力を取り戻しますか?
「…多分な。本来の魔力を取り戻したら、かなり面倒な事になるじゃろうの。」
やはり、それが狙いなのか。だけど、色々疑問が残るな。前回の襲撃で何故殺されずに、追放だけだったのだろう。
「追放された魔族は此方の世界に戻って来られないよう、封印と転移留めの魔法がかけられた上で、追放されたようじゃ。王宮の奥に実は強力な転移魔法陣が刻まれた場所がある。そこを使う為に今回の魔族の襲撃が起こされたのじゃろうの。何故殺さなかったのかは女王にでも、聞いてみたらよかろう?」
……そうですね。
「…不自由はしていないかな?」
ダーラシュフォン王太子は不敵な微笑みを浮かべ、マリーヌに聞いた。
ラビオ産の香り高い紅茶を飲むと、マリーヌは微笑み返した。
「はい。十分なお持て成しを受けておりますわ。ダーラシュフォン王太子殿下。」
鬱陶しい程の地味なドレスばかりで、滅入る事を除けばね。心の中で呟きながら、マリーヌは答えた。
マリーヌはどちらかというと派手な装いが好みであった。質は最高級だとは質感で分かってはいるが、黒か紫、茶、紺、グレー、この組み合わせばかりで、正直好みじゃない。
若いんだから、こんなババ臭い衣装ばかりじゃ老けて見えちゃうわ。王太子の好みなのかしらね。
やはり、王都と違ってなんか垢抜けないっていうか、野暮ったさは
隠しようが無いわね。
しかも何か陰気臭い城よね。もうちょっと何とかならないのかしら。
するとダーラシュフォン王太子は立ち上がり、マリーヌの手を取った。手の甲に口付けると顔を上げた。
「………そなたのお好きなように、幾らでも手を加えると良い。私はそういった事に頭や気を使わないから、これは王太子妃となるそなたの役目だろうな。」
まるで、私の心を読んだかのように、ダーラシュフォン王太子は言った。
まあ、そうなのね。私の好きにして良いのなら、この陰気な城を素敵に蘇らせてあげましょう。
しかも王太子妃と言われた事で、マリーヌの心は飛び上がる程、嬉しかった。
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