第97話大琉球国侵攻の裏事情

1539年5月『筑前国・大宰府』種子島大弐時堯・11歳


「大弐殿、これは何と言う菓子でおじゃるか?」


「カステラと言う物でございます」


「何とも甘くて美味しい菓子でおじゃる! 御上にも献上したものでおじゃる、京まで日持ちさせる事は出来ないでおじゃるか?」


「それは流石に無理でございますが、禅定太閤殿下が京に戻られ、私がお訪ねする時にお持ちいたしましょう」


「そうでおじゃるか! そうしておじゃるなら御上に献上することが出来るでおじゃる! 御上も喜んで下さるでおじゃろう!」


「いずれは料理人、いえ菓子司を育てて御上に毎日美味しい物を食べて頂けるようにいたします」


「それはとても愉しみでおじゃるな、だがその時は九条家にも専属の料理人や菓子職人が欲しいでおじゃる」


「それはお任せください、九条家に仕える料理人や菓子職人は既に育てております」


「それは愉しみでおじゃる、それはそうと大弐殿、大琉球国の侵攻は瞬く間でおじゃったな」


「はい、お陰様を持ちまして、全く犠牲を出す事無く早期に制圧することが出来ました」


「しかしでおじゃる、大琉球国など大弐殿には敵では無いでおじゃる、それを侵攻を急いだのはなぜでおじゃるか?」


「確かに禅定太閤殿下が申されるように、大琉球国の戦力は大した事はありません、石高も10万石程ですから急いで占領する利はありません」


「ではなぜでおじゃる? 交易を独占したいのなら根来艦隊や村上水軍もじゃまでおじゃろう?」


「1つ目の理由は南蛮交易の拠点を出来るだけ南に持ちたかった事でございます、嵐や不測の事態に備えて、多くの湊を直轄領としたかったのです」


「それは理解出来るでおじゃる」


「2つ目の理由は香料であり医薬でも媚薬でもある龍涎香の独占でございます」


「どう言う事でおじゃるか?」


「大琉球国の海岸には龍涎香が流されてくるのです、これを放置していると、種子島家が独占して龍涎香の価格を操作することが出来なくなってしまいます」


「だが大した量ではなのでおじゃろう?」


「はい、量的には鯨を狩って直接龍涎香を確保出来る種子島家には及ぶ事はありません。ですが稀にとても大きな龍涎香が流れ付く事もございます」


「なるほど、そういうことでおじゃるか」


「それに、大琉球国は鯨狩りの拠点としてとても便利な位置にあるのです」


「そう言ってもらう方が分かりやすいでおじゃる」


「塩田や鯨漁・鮫漁・艦隊追い込み漁の拠点とし、生産部隊を常駐させれば石高以上の利益を種子島家のもたらしてくれます」


「それは愉しみな事でおじゃるな」


「はい、それに小琉球国を侵攻するにあたり、どうしてもその拠点としても確保しておく必要がありました」


「なるほどでおじゃる」

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