第28話輸出用新商品

 さて、屋久杉だけではなく、金銀銅などの資源資材は将来の日本のために国外流出を防がないといけない。だから基本は再生産が可能なものを諸外国に売り、諸外国から原材料を買うことにしている。最初は鯨・サメなどから作り出した商品だけで種子島家を繁栄させていたが、今では各種の製品を売ることが可能になっていた。

 

 まずは1つ目は命に直結する薬を量産させている。消毒用のアルコールはもちろん、各種漢方薬に加えて抗生物質のペニシリンやストレプトマイシンも生産させた。後は手術に必要な麻酔薬の生産も開始したが、手術が出来る医師の育成には時間が掛かる。


 2つ目は習慣性がある飲料用のアルコール・酒類だ。日本で特に人気になっているのは清酒なのだが、この時代はまだ1石甕(180リットル)・2石甕(360リットル)で酒を造っていた。だから品質を保全することが出来たから、新酒よりも古酒の方が高く売買されていた。製造販売する方としても、長期保存に向かない木製仕込み桶で醸造した場合と違い、売れ残って叩き売りする必要が無いので安心して売る事が出来る。


 だが10石(1800リットル)の木製仕込み桶を使用すれば大量生産が可能になる。そこで仕込み桶で醸造し、甕や瓶で長期保存することにした。瓶と書いたようにガラスの商品の生産も始めた。切子細工ではないが、ガラス製の酒瓶や酒器を生産販売し始めた。


 酒は日本酒だけを生産販売している訳では無い。サツマイモ・麦・蕎麦を使った焼酎の生産販売は以前からしていたが、貴醸酒・薬酒・味醂・果実酒・アクアビットなど、商品として高価に売れそうな酒を色々と生産販売している。だが1番大切にしているのは保存期間だ、不作や凶作に備えて食料に余裕のある時に長期保存可能な酒を造らせた。


 3つ目は先に書いたガラス製品だが、特にメガネ・虫メガネは高価に売る事が出来た。この世界この時代でも眼を悪くする人はいる。そんな人たちにとってメガネは何があっても手に入れたい商品だった。


 4つ目は大量生産が軌道に乗ったシイタケ・ナメコ・シメジなどのキノコ類だ。キノコはとても高価に取引されており、保存性がいい干シイタケはもちろん、醤油で佃煮にされたガラス瓶入りのシイタケ・ナメタケ・シメジは超高級品だ。醤油と味醂を同量にしてじゃっかん甘めに作った瓶詰めや、梅肉和えの瓶詰などは仕入れ競争になっている。


「若殿様! どうか我々堺商人に売って頂けないでしょうか?」


「何を言っているのだ! 売って頂くのは我ら博多の商人だ!」


「馬鹿な事を言うな! 売って頂けるのは種子島領に住む我ら坊津商人だ!」


「新参者が何を言っている! 我ら熊野の根来商人は若殿が種子島におられたころから商いをさせてもらっているのだ!」


「黙れ黙れ黙れ! 我ら明国の商人が1番高い値を出す! ですからこの真珠は我ら明国商人に売って頂きたい」


 そして今、各国各地の商人が競って売ってくれと言っているのが真珠だ!


 俺が始めた養殖真珠を求めて、今まで以上の商人が船団を組んでやって来た。俺の独断と偏見で最重要商品と認めたものを持ち込んだ商人に、優先的に真珠を販売しているのだ。まあ公平を期すために、競売で最高値を付けた者にも販売している。


 1つの商団が独占販売するのではなく、2つ以上の商団が寡占販売している。だから大量の資金が必要となり、各地の商人は連合して競売で競い合ってくれている。お陰で真珠を高値で売る事が出来ている。丸い宝飾用・漢方薬用の真珠だけでなく、仏像真珠や真珠貝で象嵌した螺鈿(らでん)細工も高価に売る事が出来ている。


 お陰で種子島家の金蔵は、金銀財宝であふれている。いくつ金蔵を立てても間に合わず、床が抜けるほど利益があるのだ。

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