第17話帯広競馬場グルメ1 協賛レース
帯広競馬場総合受付
「すみません、お待たせいたしました」
「いえいえ、こちらこそ急に無理を申しまして」
「いえいえ、レースに協賛して頂けると言う事なので、可能な限り対応させていただきます」
「さっきもお話させて頂いたのですが、予算200万円で協賛させていただきたいのです」
「個人で協賛して頂けるのでしょうか、それとも企業として協賛して頂けるのでしょうか?」
「個人で考えているのですが、副賞や記念品に予算を配分した方が喜ばれるのか、それとも全部協賛金にした方が好いんでしょうか?」
「そうですか、色々考えて頂きありがとうございます。真剣にばんえい競馬の事を考えて下さっていますので、私も率直に答えさせて頂きます。副賞や記念品もありがたいのですが、まだまだ騎手や厩務員などの収入が低く、出来ましたら現金で渡せる協賛金に回して頂けるとありがたいのです」
「そうですか、では200レースに分けて協賛させていただくとして」
「お馬さんと話したい~」
「花子もお馬さんと話したい~」
「太郎君、花子ちゃん、勝也さんは今大切な御話をしているの、だから私と一緒にお馬さんを見に行きましょうね」
「いや、それは心配だよ」
「ああ君、私はこの方々を一般見学に御案内するから、そのように伝えて来てくれ」
「分かりました」
責任者の方は臨機応変に対応してくれるようで、俺達を一般見学希望者として、競馬場内を案内しながら協賛レースの話を詰めてくれるようだ。
『協賛レース』
「概要」
対象競走 :一般競走又は特別競走
:(メインレース、最終レースを除く)
個人協賛 :1口1万円とし1口以上の協賛金を提供する
:9割を協賛競走の優勝馬の馬主・調教師・騎手・厩務員
:の全員またはいずれかに副賞として授与する
企業協賛 :1口1万円とし3口以上の協賛金を提供する
:9割を協賛競走の優勝馬の馬主・調教師・騎手・厩務員
:の全員またはいずれかに副賞として授与する
振興運営費:協賛金の1割をばんえい競馬振興運営費に充当する。
協賛品 :協賛金の他に記念品を提供し授与する事も可能。
「協賛の特典」
1:当日の出走表に冠レース名が掲載される。
2:勝馬投票券に冠レース名が掲載される。
3:表彰式へプレゼンターとして参加できる。
4:予想新聞他新聞の掲載面にレース名が掲載される
:(都合により掲載できない場合があります。)
5:優勝馬・協賛金授与者と記念撮影ができる
:(カメラは持参する)
:(レース後、優勝馬が興奮して危険と判断した場合は、受賞者との記念撮影となる。)
6:競馬場・各場外発売所及びCSテレビ・ケーブルテレビなどで競走名が紹介される。
:企業協賛は自社及び自社製品の紹介CMまたはPRを放映することができる。
:ポスター掲示ほか競馬場内での企業広報活動を実施することができる
7:騎手に授与された場合、騎手からサイン入り色紙がプレゼントされる。
8:当日ご来場できない場合には、当日の出走表及び記念撮影写真が送付される。
9:希望者はスタンド3階プレミアムラウンジを優先予約できる。
: (有料1人1日500円)
10:協賛受付後に発行される通知書を提示すると入場料が無料になる。
:(1団体何名様でも可)
「注意点」
1:協賛実施日の変更及び取りやめは10日前までに連絡する。
:(10日前以降のキャンセルは受付けできない)
2:協賛レース実施日は開催するレーススケジュールの都合で
:ご希望された日に実施できない場合がある。
3:協賛レースの名称は、公序良俗に反する名称などは使用できない。
4:実施日・名称について調整を要する場合は申込者への連絡協議がある。
5:競馬場へ来場する駐車場は各自対応。
6:未成年の応募及び勝馬投票券の購入は禁止
「開催中止・順延に伴う注意点」
1:台風又は、悪天候等による開催中止当日の協賛レースは中止。
:(改めて他のレースに申し込むことは可能)
2:開催中止に伴い順延した場合も協賛レースが中止となる場合がある。
「協賛レースが実施手順」
協賛の申込み
申込手続(協賛申込書の提出) 協賛実施日の10日前まで受付
(実施日・名称について調整を要する場合は、連絡の上で協議)
↓
実施日・名称についての協議
↓
実施日等、決定通知書の発送
(実施日及び名称が決定しだい、申込者に通知書をFAX、メールまたは郵送)
↓
決定通知書が届きしだい協賛賞金のお振込
(協賛日の5日前までに振込こと)
↓
協賛レースの実施
レース当日協賛される競走の1時間前までに、競馬場へ行く。
↓
レース終了後、表彰式
↓
代表者が副賞品を授与できる。
↓
優勝馬との記念撮影
(レース後、馬が興奮して危険と判断した場合は 受賞者との記念撮影)
(カメラは各自で持参)
帯広競馬場パドック
「それと協賛レースの選定なのですが、僕達の申し込みが先にあるために、後から申し込まれた人が協賛できない場合が気掛かりなのです」
「そうですね、確かにファンサービスの一環でもありますから、多くの人に参加していただきたいですし、個人の協賛の場合は参加できる日時やレースが限られることが多いですね。お客様の場合は日時にこだわらないのですか?」
「はい、出来る限り来場させていただく心算ですが、来れない場合のプレゼンターは職員の方々がして下さるのですよね?」
「はい、その上で当日の出走表と記念撮影写真をお送りさせていただきます」
「あの、よく分からないのですが、勝也さんは何故200レースに分けて協賛されるのですか? 1レースに200万円を協賛する訳にはいけないのですか?」
「うん、そう言う方法もあるんだけど、そうなると特定のレースに勝った人達だけに渡ってしまうのだよ」
「広く分け与えたいと考えておられるのですか?」
「うんそうだよ、それにね、全てのレースに協賛者がついていたら、それに触発されて参加したいと言う人が出て来る可能性もあると思うんだ。それとね、僅かな金額であっても、表彰されて賞金を授与されると言うのは、関係者の方のモチベーション維持に繋がると思うんだ」
「お客様の申される通りです! ばんえい競馬を応援して協賛金を出してくれる人がいる。その人が態々競馬場に足を運んで表彰してくれる。それが辛い時や苦しい時を乗り越える心の糧になるんです」
「そうなんですね、知りもしないで生意気な事を申しました」
「いやいや、当然の疑問だと思うよ。200万円協賛する気があり、他の人の邪魔になりたくないといい気な事を言うのなら、最初から1レースに200万協賛しろと考えるのが当然だよ」
「あのお姉さん元気ぃ~」
「花子もあのお姉さん元気と思う~」
「ああ、みゆき騎手だね」
「女性騎手なんですか?」
「はい、元気で明るく努力家でしてね、畜産大学の獣医学部を卒業してから、子供の頃から夢だったばんえい競馬の騎手になった変わり種ですよ」
「へえ、だったら獣医の資格も持ってるんですか?」
「ええ、最も本人は自分の事を馬鹿だと言っていますがね」
「馬鹿を自覚していて獣医師を目指したのですか?」
「ええ、高校時代から付き合っている彼氏も努力家で、彼の方は勉強が得意だったようで、彼氏が勉強を教えて、みゆきが乗馬を教えていたそうですよ」
「彼氏って言う事は、まだ結婚はしていないのですか?」
「そろそろ籍を入れると言う話ですが、そうなると出産引退もあり得ますからね、悩んでいるかもしれませんね」
「そうですね、騎手なら金曜日から調整ルームに隔離されますからね。出産後の授乳を考えれば、悩むのは当然でしょうね」
「お恥ずかし話ですが、騎手2人が調整ルームに携帯電話を持ち込んだ件や、騎手を含む厩舎関係者が十数名が、自らが所属する競技の投票券を購入するという、地方競馬始まって以来、前代未聞の大事件を引き起こしてしまいました。みゆきは本当にばんえい競馬愛してくれているし、彼氏も入り婿になって牧場を継いでくれると言う話になってますので、出来ればずっと騎手を続けて欲しいんです」
「そうですか、厳しい事を言わせてもらいますが、そう言う不祥事があったのなら、競馬の仕事以外に収入源のある人が、競馬の仕事を続けて欲しいですね」
「はい、でも言い訳をさせて頂ければ、厩務員や騎手の生活が厳しいと言う前提もあるんです。まあだからと言って、八百長を疑われる行動は絶対許されないのですが」
「そうですね、でも嫌な話はこれで止めておきましょう」
「はい、そうですね。ただ200万円も協賛してくださる勝也さんには、この話題は触れておいた方が好いと思ったものですから」
「知らなかったですが、だからと言って、聞いたから協賛を止めると言ったりはしませんよ」
「ありがとうございます」
「後決めておきたいのですが、協賛金の分配配分です。馬主・調教師・騎手・厩務員に均等分配でいいでしょうか?」
「そうですね、ただ1割をばんえい競馬の運営に回させていただきますから、残り9割を4人で均等では割り切れないです」
「そうなると3人は2割で1人の3割と言う事になりますね?」
「はい、まあ馬主になるような方は、比較的収入のある方ですから、2割でいいのではありませんか」
「そうですか、だとすると預かっている全ての馬から賞金を分配してもらえる調教師も、2割でいいでしょうね?」
「そうですね、厩舎を経営するのは大変ですし、厩務員の給料を遣り繰りするのも大変でしょうが、一応経営者ですからね」
「だとすると、騎手か厩務員に3割ですね」
「ただ騎手は表舞台の人間ですし、毎レース騎乗依頼を受けることが出来ますが、厩務員さんは担当馬が決まっていますから」
「なるほど、厩務員さんが1人でお世話できる馬の数には限界がありますね。職員さんは、厩務員さんの3割が妥当だと思っておられるのですね」
「私個人の考え方ですが」
「ではそうさせて頂きます」
「協賛金分配比率」
馬主 :2割:2000円
調教師:2割:2000円
騎手 :2割:2000円
厩務員:3割:3000円
「それで協賛レースを独自で契約したいとおっしゃて下さっていたのですが、誰かに特別な契約や待遇をすると言う訳にはいかないのです。協賛レースの申込書には、希望日時や希望レース通りに出来ない可能性をお断りさせていただいていますので、勝也様にメインと最終のレースを除く9レースに申し込んで頂きたいのです」
「そうですね、先ほど御聞きしたような不祥事があったのなら、特別な契約は出来ないですね。分かりました、正直メンドクサイですが、200レース分の申し込みをネットでさせて頂きます」
「ありがとうございます」
「お腹空いたぁ~」
「花子もお腹空いたぁ~」
「食堂に御案内いたしましょうか?」
「御願いします」
帯広競馬場スタンド:食堂
「では私はこれで失礼させていただきます」
「ありがとうございました」
「さて、何が食べたい?」
俺達はざっと壁に掲示されているメニュー表を確認した。
昨晩ネットで事前に調べられるだけ調べたものの、どうしても全部は調べ切れていない。実際のメニュー表と照らし合わせてから食券を買わないといけない。
「メニュー表」
うどん・そば
月天 :510円
てんぷら:480円
かしわ :480円
月見 :450円
かけ :420円
カレー :510円
山菜 :480円
とろろ :510円
冷し :500円
鍋焼うどん :600円
カレーライス :500円
大盛り :630円
カツカレー :730円
おにぎり :140円
ライス :150円
塩ラーメン :580円
醤油ラーメン :580円
味噌ラーメン :600円
カレーラーメン:680円
ピリ辛みそラーメン:640円
醤油チャーシューメン :680円
塩チャーシューメン :680円
味噌チャーシューメン :700円
ピリ辛みそチャーシューメン:740円
とろろ丼 :600円
豚丼 :680円
いくら丼 :売りきれ
まんぷくセット:590円
(かけそば・ライス・生卵)
ざんぎ :400円
串ざんぎ :
アメリカンドッグ:180円
フランクフルト :200円
春巻き :300円
あげいも :200円
団子 :250円
(いも・かぼちゃ)
団子セット :
ソフトクリーム :250円
「とろろ丼~」
「花子はカツカレー」
「私はカレーラーメンをお願いします」
「じゃあ僕は鍋焼きうどんを買ってきますから、そこで待っていてください」
「はい、お願いします」
「待ってるぅ~」
「花子も待ってるぅ~」
4つ全部を1度に持っていくことは出来ないから、1食づつ持っていくことにした。太郎君が注文したとろろ丼には、お吸い物や山菜がついているようだ。カツカレーの見た目は値段相応だと思うが、古き良き時代の食堂はこう言うものだ。俺の頼んだ鍋焼きうどんも定番の出来で、600円通りの出来だと思う。オカズ喰いの俺は、具沢山の鍋焼きうどんがあれば必ず頼む事にしている。
とろろ丼 :600円
カツカレー :730円
カレーラーメン:680円
鍋焼うどん :600円
小計:2610円
「綾香さん、カレーラーメンはどうです?」
「美味しいです! 醤油ラーメンの上からカレーライス用のカレーをかけている、このB級感がとてもいいです。厳選した高価な材料をふんだんに使った、1000円を軽く越えるラーメンも美味しいですが、化学調味料を使った安くて食べ応えのあるラーメンも、それはそれで美味しいと思うのです。醤油スープの量が多目なので、たっぷりとカレーを掛けてもスープにあまり粘度はなく、飲むとほんのりスパイシーです。麺は中太の黄色いストレート麺で、歯ごたえもあって、カレースープによく合っています。具材はコロコロっとしたカレーの豚肉が数個、雰囲気にあった美味しいラーメンだと思います」
「綾香さんのラーメン愛は懐が深いですね」
「そうでしょうか? 普通だと思うのですが」
「いえいえ、いい意味で特別ですよ」
「あの、あれは何でしょうか?」
「え?」
俺が綾香さんの視線の先に目を向けると、かけそば・ライス・生卵を別皿に乗せたお客さんがいた。
「あれはまんぷくセットと言うらしいですよ、大坂には普通にあるうどんライスですね。まあ大阪ならライスに乗っているのは沢庵が多いのですが、北海道では福神漬けなんですね。590円は安いと思いますし、買って来ましょうか?」
「いえ、次はピリ辛みそチャーシューメンを食べる心算です」
「ざんぎ食べるぅ~」
「花子はアメリカンドッグ食べるぅ~」
「分かったよ、おじさんはフランクフルトを買うけど、1つづつでいいのか?」
「春巻きも食べるぅ~」
「花子はあげいもも食べるぅ~」
「待ってな、買ってくるよ」
ピリ辛みそチャーシューメン:740円
ざんぎ :400円×4=1600円
アメリカンドッグ:180円×4=720円
フランクフルト :200円×4=800円
春巻き :300円×4=1200円
あげいも :200円×4=800円
団子 :250円×4=1000円
(いも・かぼちゃ)
ソフトクリーム :250円×4=1000円
小計:7860円
俺達は予約したホテルで食べるお土産も考慮して色々買い込んだ。
昨日かネットで色々と調べ、4人で泊まれるホテルや旅館を調べたのだが、基本ビジネスホテルはシングル・ツイン・ダブルしかなかった。高級ホテルの中には、子供との添い寝を前提に、ツインをひっつけたファミリーダブルはあったが、出来れば4つベットが並んだ洋室か、4つ布団が並べられる和室を探し出したかった。
最終的な候補に残ったのは航空会社系のホテルで、ツインルーム2つに内扉を付けて行き来できるようにした部屋と、1泊2食付きの6畳・7畳半・18畳の部屋に和室を用意してくれる旅館に、2DK3DKのマンションを借りる温泉ホテルだった。
正直迷いに迷ったのだが、東京競馬場で泊まったマンションタイプの過ごしやすさが忘れられなかったので、温泉ホテルを名乗る所に予約を入れていた。
温泉ホテル
マンションタイプホテル・2DK/3DK
3426円/人 (消費税込3700円/人)
幼児(布団のみ)は1080円
帯広競馬場の全レースを間近で観戦し、食堂でお腹一杯食事をし、ホテルで食べる甘味も確保し、タクシーを使ってホテルに到着した。部屋に入ると1部屋に2つの布団が敷かれているが、その部屋を繋ぐ襖は開け放たれていて、4人で広々と使う事が出来た。
タクシー:940円
温泉ホテルを名乗っているから、部屋の風呂は使わずに、ネットで確認していた大浴場に行ったが、3426円で泊まれるホテルとは思えないくらい広々としたものだった。
俺が太郎君を連れて男湯に行き、綾香さんが花子ちゃんを連れて女湯に行ってくれた。
今日1日は本当に充実した1日だった。
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