第7話東京競馬場を愉しもう
「さぁ! トランポリンの遊具が有る所に行こう!」
「はい」
「いくよぉ~」
「花子もいくよぉ~」
フアフアレインボーランドと言うトランポリンに並ぶつもりだったのだが、朝まだ早かった御蔭か、太郎君と花子ちゃんは並ぶ事無く入る事が出来た。
「太郎君も花子ちゃんも楽しそうですね」
「うん、こんなに楽しそうにしてくれていると、俺もなんだか楽しい気持ちになるよ。もちろん綾香さんと一緒にいられることが、1番幸せなんだけどね」
「私もです! 私も勝也さんと一緒にいれて凄く幸せです!」
俺は時間を忘れて、綾香さんと手を繋いで見つめ合い、人生最高の幸福感に浸っていた。だが流石に50を越えているから、若い子のように衆目の前でキスすることは出来なかった。本当はやりたかったのだが、そこまでの度胸はなかった。
「おじさんしあわせぇ~」
「お姉ちゃんもしあわせぇ~」
「太郎君も花子ちゃんももういいの? 満足したの?」
「おうまさんおしえてあげるぅ~」
「花子もおじさんにげんきなおうまさんおしえてあげるぅ~」
「ありがとう、太郎君、花子ちゃん。じゃあパドックに行こうか?」
「いくよぉ~」
「花子もいくよぉ~」
「綾香さん、行きましょう」
「はい、勝也さん」
俺はまた太郎君と花子ちゃんに、第3競走の元気な馬を教えてもらった。だがもう現金は十分手に入ったから、馬券の購入はガラゲーからのネット投票だけにした。急ぎ足で「新・乗馬センター」に着き、乗馬の順番待ちをしていたら、第2競走のレース実況が入り、瞬く間に結果が放送された。
「第2競走・現金と都銀口座の収支」
単勝 : 3: 190円
複勝 : 3: 110円
: 11: 270円
: 14: 760円
枠連 : 3-7: 470円
馬連 : 3-11: 900円
馬単 : 3-11: 1280円
ワイド: 3-11: 450円
: 3ー4: 1620円
: 4-11: 4200円
3連複:3-4-11:10770円
3連単:3-11-4:32660円
小計:524万8000円
小計:524万8000円
もういい!
もう無理に慌てて馬券を買わなくても大丈夫だ!
「綾香さん、太郎君、花子ちゃん、もう無理にパドックで馬を見なくても大丈夫だからね」
「本当にいいのですか?」
「別に見に行ってもいいよぉ~」
「花子も見に行ってもいいよぉ~」
「ありがとう、でも大丈夫だよ、愉しみを途中で止めてまで見に行かなくても大丈夫になったからね」
「はい、では都合がよい時だねパックに行くのではどうでしょうか?」
「それでいいよぉ~」
「花子もそれでいいよぉ~」
4人全員が馬に乗る順番を取る事は出来たが、30分少々並ぶ事になってしまった。土曜日なら家族連れももう少し少ないだろうから、並ばなくても済むのかもしれない。それにもし第1競走、第2競走と馬券が外れていたら、とてもではないが並ぶ気持ちにはなれなかっただろう。
本当に助かった!
「次は海賊船ダービー号に行こうか?」
「ここに来る途中にあった船ですね」
「のるぅ~」
「花子ものるぅ~」
俺達4人は新乗馬センターから少しだけ戻る形になるが、隣にある日吉ヶ丘公園で遊ぶことにした。公園内に設置されている海賊船ダービー号は、ネットが張ってあってアスレチックスのように遊ぶ事が出来るし、船内に入って車輪のついた大砲を動かすことも出来る。
俺と綾香さんが手を繋ぎ、海賊船ダービー号で遊ぶ太郎君と花子ちゃんを見ていると、第3競走の結果が発表された。
「第3競走・都銀口座の収支」
単勝 : 5: 140円
複勝 : 5: 110円
: 16: 120円
: 12: 240円
枠連 : 3-8: 200円
馬連 : 5-16: 190円
馬単 : 5-16: 250円
ワイド: 5-16: 120円
: 5-12: 410円
: 12-16: 570円
3連複:5-12-16: 870円
3連単:5-16-12:1700円
小計:37万2000
堅いレースだった。
太郎君と花子ちゃんの御蔭で、全く外す事無く買えたから利益が有るけど、買い目を増やしていたら勝てなかったかもしれない。いや、最初からオッズを見ていたら、買っていないかもしれないくらいのレースだ。いやそれも違うな、絶対外れないと分かっていたら、1つの買い目に1万円では無く100万円を突っ込んでいたかもしれない。
若い頃の俺なら絶対にそうしていただろう!
でも今の齢じゃどうでもいい事だ。
もし100歳まで生きるとしても、元気に人生を愉しめるのは80歳まであろう。後長くても30年ほどしかない。これから1年間、毎日1レース必ず勝てるとしたら、その利益だけで十分な老後の生活資金になるだろう。
「これたのしぃ~」
「花子もこれすきぃ~」
「太郎君も花子ちゃんの滑り台は初めてなの?」
「初めてだよぉ~」
「花子も初めてだよぉ~」
「勝也さん、太郎君と花子ちゃんはどんなところで育ったんですか?」
「山奥の旧家の御屋敷で育ったんだ、だから世間の事は何も知らなくてね。社会見学と幼児教育を兼ねて、俺が1年間預かる事になったんだよ」
「そうなんですね、滑り台を知らない事にびっくりしちゃいました」
「だろう、俺も最初はびっくりしたんだよ」
「お姉ちゃんしあわせぇ~」
「おじちゃんもしあわせぇ~」
「そうだよ、おじちゃんは幸せだよ」
「私も幸せです!」
「おじちゃん他にも遊ぶとこあるぅ~?」
「花子も他の遊びしたいぃ~」
「そうだな、今度は内馬場の公園に行こうか?」
「はい」
「いくぅ~」
「花子もいくぅ~」
「だがそうなると、昼の馬車に戻るのが忙しいか?」
「私は何方でも構いません、みんなで一緒にいれるだけで幸せです」
「ばしゃのるぅ~」
「花子もばしゃのるぅ~」
「そうだよな、せっかく東京競馬場に来て馬車に乗らない手はないよな。ただの公園なら入園料を払えば平日でも愉しめるけど、馬車に乗れるのは土日の競馬場だけだもんな。先に行って並ぶにしても少々時間が早いかな?」
「ではまた馬を見に行きませんか?」
「うまみるよぉ~」
「花子もうまみるよぉ~」
「そうだね、無理に見に行く必要はなくなったけど、時間が有るなら馬を見るだけでも楽しいもんな」
「はい、綺麗な馬を見てるだけで楽しいです」
「おうまさんグチグチ言ってて面白いよぉ~」
「花子もおうまさんとはなすの好きだよぉ~」
「おうまさんグチグチ言ってるのか?」
「はしりたくないとか、痛いとか、人間きらいとか言ってるぅ~」
「うん、うん、ムチは痛いからいやだって言ってるぅ~」
「そうか、馬はムチが痛いんだね、痛くないと言う説もあったんだけど」
「痛いって言ってるよぉ~」
「うん、うん、痛いって言ってるぅ~」
4人で手を繋いで日吉ヶ丘公園からパドックまで歩いたけど、それだけでしみじみと幸せを感じることが出来る。大したことは話していないのだが、どうでもいいような会話が幸せを感じさせてくれる。
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